男体のひみつ
「あの……誠さんにとって、赤間さんとつき合うことは恥ずかしいこと、なんですか?」
「──当然だろ?」
「でも、赤間さんはそこらの美人よりよっぽど希少価値ですよ。手に入れて、恥ずかしがる理由がわかりません。おおっぴらにすることではないでしょうし、誠さんがそうしないのはわかりますけど」
内心、誇るというのなら逢坂にもわかる。
きっと江野は、他の誰も知らないような赤間の顔をたくさんしっているはずだ。
それは、他人が心底うらやむもののはずなのに。
「…………褒めてくれたお礼に、正直に答えてあげる」
そう言った赤間の顔が、接近してくる。
耳元に、吐息が触れた。
ふたりきりでいるのに、こんなに顔を寄せて話をする必要があるのだろうか。
「あのさ。おまえは俺がマコに抱かれてるっておもってるんだろうけど。抱かれてるのは、マコなんだよ」
おもわず振り向けば、くちびるが赤間の頬に触れた。
いや、くちびるの端に、だったかもしれない。
「あ……すみません」
「意外だった?」
「そりゃ──だって……」
「いくら鋼鉄製の神経でも、自分が男に抱かれてるとしたら、他人に知られるのは恥ずかしい?」
「……俺もこの際、正直に答えますけど」
「ふうん?」
「相手に合わせてるだけなら、ぜんぜん恥ずかしくありません。体投げ出して人助け、みたいなものでしょう? でも、自分がやりたくてやってるんだとしたら、それを知られるっていうのは、恥ずかしいです。抱かれたい、っていうのはふつうに備わってる衝動じゃないとおもうので」
「──備わってるよ。自覚してないか、認めようとしないだけ」
「えっ…………」
「おまえ、知ってる? 男にどうして乳首があるか」
「ハ……イ?」
「必要ないだろ。必要ないものなんておよそ人間の体にはないんだけど、男の乳首はどう考えたって必要ない」
「……ですね」
「つまり、男の体は、女の体の変形ってこと。ベースは女体の方。女体にはぜったい欠かせないものが、男の体にも消えずに残ってるんだ。抱かれたい、も男の中に残ってる。射精の衝動は男にとって強烈なものだけど、それで覆い隠した奥には、消えない女体と共通のプログラムが入ってるんだよ。消せないから、かんたんに手に入る爆発的なものでめくらましをするしかない」
気づけば、逢坂はぽかんと口を開けていた。
赤間の表情は、そのことばを真剣に言っているのかどうか、つかませない。
逢坂にわかる真偽は、射精の快感についてと、それを得れば大抵の男は満足するということくらいだ。




