二人きりで
「赤間さん──」
呼べば、窓の外の夜景を眺めていた赤間が、無言で振り向く。
「ずっと、あなたに訊きたかったんですけど」
今日初めて、遠征先のホテルで同室になった。
視線に、逢坂は微笑を返す。
「毎日、恋人のヌードを他の男の目にさらしておくのって、どんな気分ですか?」
「──ストリッパーの恋人なんか持ったおぼえはないけど?」
眉ひとつ動かさず、赤間はそう答えた。
はぐらかされる可能性も考えていた逢坂は、ひとつうなずく。
「やっぱり赤間さんじゃ答えてくれませんか。誠さんに訊けば、答えてくれるかな……」
答えてくれるかもしれないが、きっと困った顔をさせてしまうだろう。
赤間ならそんなことはない、とおもったのに。
「なあ、逢坂」
「はい?」
「……おまえ、もう少し賢いやつかとおもってたけど。もしかして、直くん以上にバカなの?」
「な、んで基準が直さんなのかわからないですけど──俺の方が、バカなのはたしかだとおもいます。何も、考えてませんから」
「──だよな? 考えても仕方ないことをごちゃごちゃ考えないやつは利口なんだとおもってたよ、俺」
一歩、二歩、と赤間がベッドに腰かけた逢坂に寄ってくる。
見とれるほど、優雅な足取り。
すっ、と逢坂の頬に赤間の手が触れた。
叩かれる、という心配はつゆほども湧かなかったのに、その手には獣のような爪があるような気がして、息を呑む。
「あのさあ。俺にケンカ売って、おまえに何か得があるの?」
「──ないです」
「ふうん? わかってて、訊けば困るとわかってる問いで、マコをいたぶろうって言うんだね?」
「い! いたぶるつもりなんてないですよ」
「ああ。なるほど。おまえは、誰もがおまえのように図太い鋼鉄製の神経を持ってるとおもってるんだ?」
「鋼鉄……?」
「じゃあ、おしえてあげる。おまえにはないんだろうけど、マコにはね、恥ずかしいってきもちがあるんだよ。なければずっと楽に生きられるものだけど、マコにはあるし、それがあるからマコはああなんだ。わかる?」
する、と首にすべり下りてきた手のせいで、逢坂はうなずくことも首を振ることもできなかった。
「おまえの前で服を脱いでる以上、それを見るのはおまえの勝手だし、恥ずかしいおもいをするのもマコの勝手だ。──だけど、もし、本人が秘めてるものまで暴いてよけいな羞恥を味わわせようとするなら、俺はおまえを許さないよ?」
「…………誠さんに訊くのは、やめておきます」
声をしぼりだせば、赤間がふわりとほほえんだ。
「そう? それがいいね。俺も、直くんが大切にしてるものを、二度と福岡の地を踏めないように潰して捨てたいわけじゃないからさ」




