「はじめまして?」
「赤間さん、はじめまして……」
視線に見つめられ、薄氷を踏む心地で名乗ろうとしたら、ふっ、と目がそれてしまう。
次の瞬間、逢坂はあぜんとした。
赤間が、ふわりとほほえんだのだ。
「ひどいね。遠巻きに見てたでしょ?」
「いやぁ。江野がそばにいないとやっぱり、神前が言ってたように、まわりに興味ゼロなとっつきにくいイケメンなんだなーとおもって」
「イケメンっていうのはこういうのを言うんじゃないの?」
紀藤と話す赤間の手が、逢坂を指さす。
つづけて、視線が流れてきた。
「逢坂大和──いくつになった?」
名指しに、ギョッとする。
逢坂は、ひと呼吸おこうとして失敗した。
「こ、とし、二二です」
「ふうん? 育った温室で先輩に守られてんのは居心地いいだろ? 直くんはさ、風に当てずに育てたら、いざ風が当たるところに出て行ったときぺしゃっと潰れて困るのはおまえ、とかまで考えてないんだからな。自分のために手を振り払うくらいのことはおぼえろよ?」
逢坂は目を見開いた。
口調はまったく、やさしさのかけらもない。
逢坂をバカにしているとも、神前をバカにしているとも、どちらとも取れる冷やかな物言いだった。
事前に江野から話を聞いていなければ、ひどい先輩だ、とおびえるしかなかったくらいに。
「はい……ご忠告、ありがとうございます」
頭を下げれば、ふしぎと、自然に微笑も浮かんだ。
意地悪だけど、そんなに悪いやつではない、と江野は言った。
なるほど、とおもう。
あいさつだけ聞いて、よろしく、などと応じるだけよりもはるかに心ある対応だった。
しかし、1ミリたりとも親身さを感じさせないひとなのだ。
相手にとって必要だとおもうことを口にしながらも、彼自身は、そんなことを言ってやる義理はない、とおもっているのだろう。
おもしろそうな赤間の目が逢坂を捉えた。
「へー。直くんにかわいがられるだけは、あるね」
「そうだろ? こいつがイケメンなのは、外見だけじゃねーんだよ」
「で……そっちのかわいこちゃんは、誰?」
紀藤が引っ張って来た羽角に、赤間が視線を向ける。
うっすらと微笑を浮かべている赤間を見て、逢坂は背筋がひやりとした。
紀藤も変な顔をしている。
が、逃げ腰だった羽角は、つられたように、小さくほほえんだ。
「は……羽角、蓮です。あの──はじめまして?」
逢坂はひたいを覆いたくなった。
いくら、まわりに興味ゼロで、チームメイトはすべてどうでもいい、という人間だったにしても、元チームメイトくらいはおぼえているに決まっている。
忘れていて欲しい、と羽角は心の底からおもっているのだろうが。




