道連れ
「けど、これはちょっと予想外。赤間ってここじゃこんなに人気があったんだな。ツイぽ炎上したとかいうし、ファンにどんだけ恨まれてるもんかと心配してたのに、損した」
「というか。グラニに移籍後、代表入り、海外移籍と人気や知名度も全国区になったせいで、ファルケンのファンじゃない層にも赤間さんのファンはたくさんいるってことなんじゃないですか?」
「そうか、そうだな。そういや、女子ファンの間では、赤様降臨、とか言われてるらしいぞ」
「赤様──?」
「赤間様じゃ、ゴロが悪いからな。せっかく量産したおまえのファンも、あいつにごっそり奪われちゃいそうじゃないか?」
「そうですね……まあ、実際に見ると、そもそも格がちがうなって気がします」
「おーい。おまえだって五輪代表だろ。ゆくゆくは代表入りだってしてくれるはずだって、神前もファンも期待してるとおもうぞ」
「そういう次元の話じゃない、って蓮が言ってたのが、わかってきました」
これだけ、自分を見ているファンがいる、と明らかな状況で一切の関心を示さない、というのは強心臓どころの話ではない。
見られることに慣れきっているひとだと、よくわかる。
しかも、ファンだけでなくチームメイトもいるとわかりきっているのに、気にするそぶりさえ微塵も無かった。
ひとが見ていようが、どう見られていようが、どうでもいい、という無関心が伝わってくるのだ。
無関心を装っている、ではない。
彼は、心の底からどうでもいいとおもっているのだろう。
なぜなら、赤間の様子には、珍獣扱いに対する嫌悪感やイラつきも一切窺えないからだ。
同じグラウンドにいるのに、彼だけ、音も何も届かない別次元にいるようだ。
「ところで、紀藤さん」
「うん?」
「俺、あいさつしたいんですけど。いっしょに来てくれませんか?」
「あれに寄ってく気か? 勇気あるな、おまえ」
「直さんも誠さんもいないし。俺、いちおうあのひとの後輩なので。みんなといっしょに知らんふりもしてられません」
「ふうん…………あ。ちょうどいいのが来た。あれもいっしょに連れて行こう」
と、紀藤が歩いて行く先には、羽角がいる。
赤間のすがたを見てひるんだ羽角は、寄ってくる紀藤を見て、さらにひるんだ。
逢坂は、紀藤が羽角を連行してきてくれることを期待しつつ、単独で赤間に足を向けた。
と、それまでじっと座っていた赤間が、前触れなく立ち上がる。
ドキッ、と心臓が縮まった。
すらりとした、うつくしくも優雅な立ち姿に、内心、圧倒される。
半径二メートルを切ったところで、ふっと赤間が振り返った。
間合い──
そんなことばが頭を過る。
まるで、自分のテリトリーに踏み込んできたものを威嚇するようなタイミングだ、と逢坂はおもった。




