第78話
「キル姉さん。獲物がトラップに引っかかったみたいだよ」
「そうねユーくん。さすがアスモデウス様、サタンのことをよく知っておられる」
「目的はサタンの生け捕りだったよね」
「ええ。けどもう一匹変なのが混じってるわ」
「だね」
「そうね」
「あなたは七大魔王のオオカミ」
「どうしてここにいるの」
双子はうちらを凝視しながらお互いに単調な会話を繰り広げている。なんの曇りもないその目から感じるものは主に忠誠を誓うそれではなく、ただ命令をされて動いている人形のよう。
悪魔が持っている目とはどこか違うように感じた。
やけど、だからこそ奇妙で恐ろしく思う。
「あなたたちは誰なの?私はそれなりにアスモデウスに仕えてるけど、あなたたちのことは知らない」
「知らなくて当然」
「知らなくていい」
「どうしてここにいるの」
双子はオオカミの質問を無視して再び同じ質問を投げかけた。
「話にならへんがなそいつら。頭悪いんちゃうか」
うちが馬鹿にした言葉を言った途端、そいつらはお互いを見つめ合いながら黙った。よっぽど効いたんかしらんが、なんとなく得策ではない気がしたけどそこはスルーや。
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
数十秒双子は黙っていた。時折首を横に振ったり縦に振ったりして、無表情だったはずの二人が笑みを浮かべていたのが死ぬほどキモイ。
「なーオオカミ。なんか生け捕りって言われてるっぽいし?うちら大丈夫ちゃう?」
「それはあんたのことだけでしょう!私は言わば反乱分子だからきっと酷い目にあわされるわよ」
「そりゃしゃーない。決めたのはあんた自身なんやからな、うちと共に心中する覚悟を決めたのは」
「別にあんたと心中するつもりなんてないわよっ!!私はメサイアに惚れたからあんたと仕方なく行動してるだけっ!」
「まーそうキャンキャン騒ぐなや~。なんだかんだあんた、うちのこと好きってこと知ってるんやから」
「気持ち悪いこと言うな!あーもうこうなったら生け捕りでもなんでも好きにしてもいいからここから解放してーーー」
「確定した」
ギロリ、と双子がこちらを向いてポツンと言った。何が確定したんやろうか。
二人の間で何かしら意思疎通を図っていたらしいが、こっちには何の情報もわからん。まー多分さっき言ってた生け捕りがなんたらかんたらの話でいこうってことやろ。
ひとまずはこの状況から抜け出せるっちゅうんなら大歓迎や。
そんなことを思っていると、うちらの手足を拘束していた鎖がどさっとその場に落ちた。
「えっ」
「おっなんやなんや。拘束が解けたで」
この展開は決まりや。このままうちらはアスモデウスのとこに連れていかれる。そしてその道中でこいつらをぶっ殺してアリエルも連れていく。これが完璧な流れ。
だが気になるのはアリエルの拘束が解かれていないこと。あいつの能力がかなり強いことをアスモデウスは知っている。それが理由というならわかるんやが、今うちらをおびき出したことに成功したならもうこいつらとっては用済みなはずやが。まぁなんにせよ殺されてないのはラッキーや。こいつらもただの操り人形っぽいし大したことないやろ。
「さ、うちらをアスモデウスんところに連れてってくれや。あんまあいつには会いたくはないが、それがあんたらの任務ならしゃーなし行ったるわ。身動きも自由にしてくれたしな」
「違う」
「あ?」
双子が口を揃えて言った。
「違う?何が違うんや」
「わたしたちは新たな可能性を見つけた」
「あなたたちが僕たちを超えるかもしれない」
「これは命令じゃない」
「僕たちの好奇心」
「だからどんな罰も受け入れる覚悟はできた」
「それじゃあ」
「いくよ」
ズン!!と体に衝撃が走った。物凄い痛みが体を襲うと同時に、地に足をつけていたはずが一瞬でバランスを失う。叫ぶ間もなく体は地面に横たわる。そして視界がおかしいことに気付いた。
どすんと倒れたうちの横に数秒後に倒れてきたのは、まぎれもないうちの体。
じわぁとその半身からどす黒い血が流れ出ている。
「あ・・れは・・うちの」
意識が遠のいていく。誰の声も聞こえない。
その半身は地面から出てきたさっきの黒い化け物に取り込まれて、地面へと消えていく。
「真っ二つになったんか」
目線を動かすこともできず、ただ意識だけを保とうと必死に耐える。
オオカミはどうなったんや。あいつは。
消えゆく意識の中、目の前にオオカミの半身だけが倒れてきた。
既に意識を失っているみたいや。大したことない、やつ・・・や。
あかん。もうっ・・・限、界・・・




