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私、悪魔になりました  作者: 白子うに
9章 戦友との再会。神との対峙
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第74話

「あいつに出会った時にの対処法は知っとる。話しかけてきよるから無視せんかったらええだけや。ええか?くれぐれも挙動不審にはなったらあかんで」


 そう。落ち着いて対処すりゃあなんてことない問題のはずなんや。つーか今まで出会ってきたやつらもビビらんと、ちゃんと向き合って話し合ったったら良かったんとちゃうんか。

 そりゃ謎の存在を恐ろしく感じてしまうのは無理もない話やとは思うが、向こうはご丁寧に「僕の話を聞いて」と言ってきてるんやから、逃げたやつの方が悪いってことになってまうし、そりゃ殺されても仕方がない、といったらそれは嘘になってまうが、結局はお互いの歩み寄りが大切ということや。

 うちの忠告を聞いたオオカミは素早く二度頷いただけだった。案外こいつも肝っ玉が小さいのかもしれない。一人で遭遇してたら今まで出会ったやつらの二の舞になること必死やな。

 うちといて助かったという貸しを作り、今後もうちが立場が上なんやでということを保ち続けさせれば今後もやりやすくなる。

 うちも悪よのぅ。


「気持ち悪いぐらいニヤけてるわよ」


「あぁ、ちょっとええこと考え付いたもんでな」


 うちにとってええことやけどな。ま、お互い助かるし、WIN-WINでこの場を乗り切れるなら文句はないやろう、なんてのはご都合主義ってことはわかっとるで。

 とにかく今は近づいてくるあいつを処理してちゃっちゃっと先に進まんと。

 フェニックスは相変わらず怯えたままなので、体をさするってやると少し炎の揺れがマシになった。しかしあいつがこっちに近づくにつれて、炎は不規則に揺れ動く。

 待ってろよー。もうすぐうちがお前の不安を取り除いたるからな。

 なんて思ってるうちも、あいつがもうあと少しで目の前に来そうな距離にいる時には心臓がバクバクになってきた。元大魔神としてちょっと恥ずかしいわ。やけどこんなことでビビってたら今後やっていけへん。暴れる心臓を落ち着かせ、いよいよ接触まであと二メートルのところまであいつは来た。よしっ、マニュアル通りマニュアル通り。話を聞いてくれますかって聞いてきよるはずやからな~落ち着け落ち着け~。戦うわけじゃないのに自然と拳に力が入ってしまう。

 あかんあかん。リラックスやリラックス。グーパーグーパーと手の運動をしているのをオオカミにガン見されていたが、ビビってるわけじゃあらへんで!みたいな表情は作れてたはずやから多分バレてないはずや。いい感じに緊張ほぐれてきたし、この調子なら。


「ッ?!」


 この調子ならいけると落ち着いて話せるはず。そう確信したときだった。あと一メートルのところまで迫ってきた時に向こうが止まった。そしてうちらの目の前にレイピアの切っ先を突きつけたそいつは「僕の邪魔をしないで」と言いよった。


 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ聞いてたのと全然ちゃうがな!!!話を聞く準備万端やったのに、向こうは話を聞いてもらう相手に向かって武器を向けてきよったで!なぁ!しかも邪魔をしないでって言いよったで!聞きましたか奥さん!別に邪魔する気なんてこっちは一切あらへんのに、なんなら超絶接待モードに入ってましたけどぉ?!そりゃこんなん出会ったやつらは逃げ出しますわ!

 まぁそっちがその気ならこっちだって考えがないこともないけどぉ?!二対一ならこっちの方が有利なんやからなぁ!覚悟しろ、よくわからんやつぅ!


「はいっ!わかりました!」


 おぉい!なに素直に従ってんねんうち!!先輩にパシリされて嫌とは言えへん気弱な後輩か!!

 しかし体は正直なもんやで・・・・・・考えてる事と行動が一致せぇへんていうのはこういう事を言うんやな。うん、一つ勉強になってよかったよかった。逃げるは恥だが役に立つ、なんて言葉もどっかで聞いたことあるし、うちの判断は間違ってないんや。

 元気よく返事したうちには目もくれずに、そのままそいつはどこかへと向かっていった。もしかして住処とかあるんかな。だとしたら家に変える途中に邪魔はされたくないよなぁ。それか一仕事終えて、仕事なんてあるんか知らんけどやな、疲れてる時はまぁイライラするのもわかる。

 なんか事情があったんやろ。知らんけど。

 とりあえず何事もなく災難が過ぎ去ったのは喜ばしいことだが、おかげでオオカミに貸しを作れへんかった。自分の命と比べるとそんなもんは屁でもないもんやが、せっかくのチャンスを逃したという点では非常に痛い。なぜなら今後貸しを作れる状況というのは皆無に等しいものやとわかっとるからな。終わってしまったことは仕方ないなんて言うけれど、やっぱり後悔はしてまうな。

 それが自分の行動によってやなくて、他者による行動で発生したことでも。

 

「なんかよくわかんないけど助かったわね」

 だらーっと冷や汗をかいて髪がおでこにぺトりと張り付いていたオオカミは、その汗を腕で拭いながらもフェニックスの上にバタンキューと仰向けに倒れこんだ。余程緊張しとったんか。確かに死ぬか生きるかの

どっちかやもんな、そりゃ仕方ないわ。

 

「死ぬかとおもたわ」


 つい本音が口から洩れてしまう。もうビビりでもなんでもいい。うちも疲れた。

 オオカミのよこでうちもバタンキューして倒れた。仰向けじゃなくうつ伏せでな。

 さすがに疲れた。体の疲れというよりは、心の疲れが大きい。

 無意識に全身に力が入っていたのを倒れてから感じ、しばらくはずっとこうしていたいと切実に体が訴えてきた。だからそれに抗うことはしない。


「ねぇ、しばらくここで休憩しない?」


「賛成や」


 トラブルの共有は親密度が上がるという話を聞いたことがある。絶望的な状況なら尚更その効果は絶大だろう。お互い何をしたわけでもなく、ただ立ち尽くしていただけなんとも情けない感じやったけど、なんとなくオオカミに対する意識が変わったような気がする。

 二人でなんか絶対行動したくないと最初は思っとったけど、案外いい経験なのかもしれん。

 篝ちゃんには感謝せなあかんかもな。

 そうしていつのまにか、あんな物騒なやつの通り道ということも忘れて、うちら二人はぐっすりと眠ってしまった。

 

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