第57話
そんな馬鹿なっ。
確か悪魔を殺すには心臓を破壊するのが有効なはず。
確かに左胸にわたしの一撃が直撃した。
なのにあいつの体は元通りになっていく。
どうして・・・どうして!
「いやぁ自分でも驚きましたよ。心臓をやられた時は死を覚悟していましたが、まさかこんなにも再生能力が上がっていたなんてね。いや、これはあなたのおかげでもありますかねぇメサイアさん。今までにない程の異常な負荷がわたしの体をより無敵にしてくれた」
どうやら将門自身もこの現象に理解が追いついてないみたいだ。
当たり前だ。普通なら死んでいたはずなのに、さらに強靭な肉体を手に入れて生きているのだから。ダメだ。こんな化物倒せない。
やれることはやった。成長もしていた。
相手が悪かっただけだ。
そう、わたしは頑張ったんだ。
諦めよう。
こんな相手、サタンだってきっと倒せない。
『俺の力不足のせいでこんな目に・・・申し訳ないです』
「君は悪くないよ。君の力を使いこなせなかったわたしのせいだから」
そう。誰も悪くない。
力を手に入れたのに使いこなせないわたしが悪いんだ。
さっきのをもう一回やってみる時間なんて将門が与えてくれるわけない。
ステルスを発動させるか?いや、それこそ使いこなせてないのに発動できるのか?
発動したところでそこからどうする?
こいつからは逃げられない、どこまでも追ってくるに違いない。
考えはまとまらない。
「厄介なあなたを先に始末しておくべきでしたか。今日の反省をいかしましょう。アスモデウス様。自分はさらに強くなりました。これからもあなた様の邪魔をするものは排除していく七大魔王として努めてまいります」
またこの感覚だ。
深い絶望を味わうのはこれで何度目だろうか。
悪魔になってもうまくいかないなんて、神は本当に意地悪だな。
クソがァッ!!
そんな怒りとは逆に、わたしは気付けば膝から崩れ落ちていた。
戦意喪失。
潔く死んでやる。
サタン、オオカミさん。わたしがいなくても世界を変えてね。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
サタン?!!??!
空気が振動するほどの叫び声が響きわたった。サタンが倒れていた場所から赤と黒、ソフトクリームのバニラとチョコのミックスよりも綺麗に!半分ずつ色が違う炎の渦が周囲に激しく燃え盛り、この空間は熱波のせいで息をするのも辛いほど暑くなる。サタンの言っていた作戦ってこれだったのか!?
「なんですか全く。くたばり損ないがうるさいですねぇ。いいでしょう、もはや最強と言っても過言ではない自分の力試しも兼ねて付き合ってあげましょう」
「いーや、んな時間あらへんわ。さっさと終わらせたるわ」
炎の渦から現れたサタンの姿はわたしの知っている姿とは違った。
服装はそのままだったが、頭からは二本の捻じ曲がった歪な角が生え、翼は見とれてしまうほどの赤、真紅の色になっていた。
「真紅の女王」
「えっ」
「姿は少し違うけど、あれは確かに真紅の女王。力を失ったはずじゃなかったの」
オオカミさんはそう静かにつぶやいて、サタンの方を凝視している。
わたしはかつてサタンが大魔神だったころの姿は知らないけど、今の姿を見てもその全盛期だった大魔神時代を彷彿とさせるであろうものを感じさせた。
だが相手はありえない再生能力と肉体を持つ将門。
明らかに強いのはわかるが、サタンはあいつに勝てるのか?
やれるのか?
その答えをがわかるのに時間はかからないだろう。




