第55話
まんまとサタンの挑発に乗ってしまっている将門は考えなしに踏みつけにかかる。
またも姿を変えたサタンはまるで繭のようで、さっきの学生服の黒がそのまま繭の色に反映されていてちょっとキモかった。
その繭のようなものを将門は強度を試すようにゆっくりと踏みつけた、
だが将門が思っていたよりもしっかりとした強度だったらしく、その繭は形を変えることなく禍々しさを保っていた。
それに腹を立てたのか、今度は打って変わって凄まじい勢いで連続で踏みつけ始めた。
だがそれでも繭は依然そのままの状態。
全く手ごたえがないのが嫌だったらしく、踏みつけるのをやめて殴り始める。
無言無表情で殴り続けるその様子に背筋に寒気が走る。
「オオカミさん、あれ大丈夫なんですかね」
「さぁ。防御しているだけにしか見えないんだけど、何か策があるはずよねぇ。あなたはどう思う?えーっと、名前は」
『ガーディアンっす。俺はさっき言ったようにやっぱり攻撃を受けにいってる気がするので、オオカミ先輩と一緒の考えです。でもなんかヤバくないですか、あれ。繭の耐久性はわからないですけど、殴られ続けられてちょっとずつ形が変わってますよ』
確かに徐々にだけどさっきの綺麗な形をしていた繭が少しずつへこんでいっている。
手ごたえを感じた将門の顔は無表情ではなくなっていて、少し口角が上がって不敵な笑みを浮かべてさらに殴りを加速し始めた。
突破口を切り開かれたのか急激に繭は潰れていき、ダメ押しの一打で完全にその形は壊れてしまった。しゅるしゅると繭だったものは倒れているサタンの体に再び纏わりついたが、学生服はボロボロの状態となっていた。あれはリリスが擬態しているから、相当ダメージを受けているんじゃないのかな。もう鎧としての機能を果たしそうにないそれをサタンは優しく撫でた。
そしてようやくご対面したサタンを火のついたタバコをグリグリと消すように踏む。
「何がしたかったか理解不能ですが、悪あがきならもう少し頑張ってみてはどうです?」
「ははっ!理解不能ってか。その悪い頭で考えてもそりゃ答えはわからんやろうからなぁ。あっ残念やけどもうあんたはうちに負けとるし、そこんとこだけ理解よろしく」
「悪あがきが口答えとは残念です。もうあなたと話すのも疲れたので終わりにしましょう」
倒れていた将門をギュッと掌で握り上げ、その体を握りつぶそうとしはじめた。
ちょっと!なんか策があるんじゃなかったの?
あのままじゃさすがのサタンも耐えられないでしょ。
いや、絶対考えはあるはずなんだ。けどもう見てられないっ!
『あー!篝様篝様、力を込めていた右腕がヤバイことになってますよ!なんか青白く光ってますけどこれ大丈夫なんでしょうか!!ちなみに力を込め始めて五分ぐらいでした!!』とガーディアンがやかましく騒ぎ立てていたが、自分で腕を見てみるとその異様さに「うわっ!」と少し大きな声を出してしまった。
その声に反応して、こっちに意識を向けていなかった将門がわたしの方を見た。同時にこの青白く光を放つ
腕に興味を示したのか、握りつぶそうとしていたサタンを地面にポイッと放りこっちにゆっくりと歩き始めてきた。
「ヤバイって!あいつこっちきたよどうしよ!」
『何ビビってるんすか!今こそその力を試す時ですって!ぶちかましてやりましょう!!』
「でも避けられるでしょこんなの。不意打ちならともかく、警戒してるだろうしさっきみたいに拳と拳でバチコーン!!ってわけにはいかないでしょ・・・」
こんな時に限っていっつもやらかしてしまう。
グレムリンの時だってチャンスを生かせず結局サタンに助けてもらったし、今度こそは私だって役に立ってみせるって決意したのに。
ほんと成長できてないな、わたし。
「少しでも足止めできたらいいのね」
「えっ?そうですけど」
「倒せはしないけど、あなたの役になら立つ。私もあなたのガーディアンなんだから」
オオカミさんは静かに銃を出す儀式をしてハンドガンを取り出した。




