第52話
「いよっしゃ。やっぱこの高さならさっきのやつは発動せぇへんっぽいな」
「そうですね。では私たちも一旦戻りましょう」
「おっけぃ。んじゃさっそく~っと」
「少しお待ちくださいサタン様。何かが物凄い速さでこちらに向かってきています」
「ん?メサイアやろ。あいつもなんかパワーアップしたみたいやし、移動速度も速くなっとるやろし。第一ここの高さ知っとるか?うちの感覚でおよそ百七十キロメートルや。何でこんな高いところにさっきの爆発のやつを仕掛けとるんかわからんけ・・・どぅお?!?!」
「どうも愚か者。下まで戻ってきてもらいましょうか」
「サタン様、両腕の合体を解きます。変態状態で下まで急いで降りて行ってください。背中はこのリリスにお任せください。ふんっ!」
「腕が四本に?ひとまず手を出さないであげましょう。どうせもう飛びはしないでしょう」
「おーーーーーいメサイアーーー!空はあかんかったでーーー!」
大声で警告してくれたのはありがたいんだけど、下にいるわたしの方が先に気づいてるってのことに気付いてないあたり、やはり賢いとは言えないことが証明されて悲しい。
着地したと同時にぶわぁと将門がジャンプした時と同じくらいの風が巻き起こる。
「あかんかったで!」
「知ってるよ!ってか腕が四本に増えてるしぃ!なにこれ」
「なにこれって、あんたと戦った時に見せたやん」
「そうだった」
あの時わたしを苦しめたやつだ。
リリスが髪に擬態していて自由自在にその形状を変えるんだったな。見ると両腕だけが元のサタンの状態になっているのは、この部分だけ髪で出来た鎧を解いて変形しているからか。なんとも器用で、なんとも不可思議で仕方がない。どういう構造をしてるんだよ。
「てかさぁあいつめっちゃヤバないか?ジャンプであの高さまで飛んだんやろ?バリ怖い」
「急に現代JK口調で話し出すあんたも怖いよ」
「流行はすぐに取り入れなあかんからな」
相当長い期間日本にいたなこいつ。んだか吸収してほしくない知識ばかりを選り好みしてるのがなぁ。まっ、日本らしいっちゃらしいんだけど。
『しかしどうしますか篝様。上がダメとなると下で戦うしかないですよ!』
「そんなことはわかっておりますので、体も名前もないお方は黙っていただけますか」
『なんだとぉ!お前だって声しか聞こえないじゃんか!それに俺にはガーディアンって言う立派な名前をさっきもらったんだぞぉ。だからお前も同類!同類!』
「同類じゃありません。あなたみたいな下品な喋り方はしませんし、それにお前じゃないです。わたしはリリスです」
「子供か」
言葉が綺麗にわたしとサタンで重なった。
普段はわたしたちもこんな感じになるはずなんだけど、あら不思議。自分のことじゃないと結構冷静にいられるんだな。
ガーディアンとリリスの不仲のおかげでわたしたちは仲良くできる。
Win Winではないが。
「とりあえずどうするかパートナーのあんたらで話あったらどうや。うちとリリスはもう決まっとる」
『えぇもう決まってんすか!はやく俺達も作戦を決めましょう篝様。あの生意気なやつに負けてられません』
「時間もないしなぁ。共闘モードをフルに活用できたらいいんだけど」
『身体能力は格段に上がっているので、やはり拳で抵抗したらどうでしょうか!もちろん俺らは抵抗するで。拳で!!』
お前もほんっっとにしょーもない変な知識だけ取り込んじゃって・・・
なんでわたしがTwitterで見てたちょっと前に話題になってた動画のセリフを知ってるんだよ。お前はわたしで構成されてるのかよ。
いや、構成されてるのか。死んだあの頃の妃熊篝はガーディアンの一部となり復活。主にいらない要素を取り入れて。
「いや拳でってそういうけど、さっき力負けしたし。いや、ちょっと待って。その案で行こう」
『マジっすか!?やったぜ』
「具体的な作戦を聞かせてもらえるとありがたいのですが」
「えっと、とりあえずサタンとリリスさんはわたしをひたすら守っていただけるとありがたいです。無理そうならまた考えます」
「つまり、うちらがあんたのガーディアンになれと」
「うん」
無茶なお願いなのは承知の上でお願いだけしよう。
誰かを護りながら戦うというのはゲームでもっとも嫌いなミッションでよくあった。無防備な要人を救出して自分たちを殺そうとしてくるやつらの恐怖と、殺されないように慎重に気を遣いながら移動するのは死ぬほど苦痛だった。
わたしが行おうとしていることは、別に動きながらでもできるかもしれないが、多分精神を集中した方がはやく行えると思うからだ。
やはりこのお願いは難しいか。
「ええで。むしろその方がうちらにも好都合で手っ取り早く決着つけれるかもしれん」
「いいの?」
思わぬ二つ返事に驚いたが、気になるのはサタン達の作戦の方だ。
護りながら戦うのが好都合で、わたしの作戦と相性がいい?
よくわかんないけど好都合なら良かった。
「あえてどういう作戦かは言わんぞ。お楽しみは最後の最後で発表や。あんたらを護ってればいいんやろ?作戦やったら支障はでない。決まりや。いくぞリリス、あいつが降りてきよった」
上から巨体が地上へと戻ってきた。
地響きが起こるほどの着地の衝撃でまたもふらついてしまった。
静かに移動できないのか将門よ。
「しつこいようで申し訳ないですが、もう一度回答の確認です。正解は、あの高さまで自分が飛べるというものでした。これも日々の修行により着々と成果を上げてきて今に至るのです。爆発の罠に触れれば、高さを更新できたと同時に、爆発のダメージによって体も成長するので一石二鳥というわけです。そしてまた新たな高さに罠を設置する。そもそもこんなことはするつもりはなかったんですがね。自分を飛べないと馬鹿にした悪魔たちへの報復と対策です。トラップに触れないばしょで安心してると、そこの愚か者のようなことになるのです。逃げ場などない。覚悟しておくように」
「それはこっちのセリフや。お前の対策はもう練ったんねん」
「ほぅ。では、愚か者の愚策とやらを拝見しましょうか」
何としても成功させてみせる。
わたしは、更に進化する。




