第30話
「呪いって・・・一体何なんですか、それ」
「大魔神になった暁には悪魔界を統べる権利を得れる。それにプラス特別な力を得ると言われているわ。その力も悪魔によって様々らしいけど、特にサタンの力は戦闘に特化していた。けどね、大魔神にはリスクも伴うのよ。本来悪魔の長である大魔神はずっと同じ者でいなければならない規約があるの。長は頻繁に変わるのは良しとしない昔からの決まりらしいわ。悪魔に寿命はないから交代することは基本的にはない。別に歳老いたからといって見た目に変化があるわけでもない、身体が衰えていく人間や生物とは違うからね。悪魔が死ぬときは、殺されるか自害するか、そのどっちかよ」
「不老不死って感じでしょうか」
「まぁそんなところね。何歳か把握してる悪魔なんてほぼいないんじゃないかしら。まぁこんな話は置いといて。呪いのことなんだけど、大魔神の座から降りた悪魔は全ての能力を無くし、悪魔を殺せなくなる。厳密に言うと、殺すことはできるけど、その代わりに自分も死ぬこれが大魔神の呪い。規約に違反した罰ってことね。長は、悪魔の王は、常に威厳を保ち続けて統率しなければならない、悪魔の象徴であり続けなければいけない。どんな理由があってもその座から落ちることは許されないの。つまり、現時点で大魔神に返り咲くためにはサタンだけでは不可能。自分では殺せない、だからあなたを生み出し、あなたを利用しようとしている。そうよね、サタン」
「利用っちゅう言い方は気に入らんなぁ。別にメサイアのやろうとしてることにはどっちみち大魔神になることが必要不可欠なんやから、その言い方だけは訂正してもらわな困るわ。後はだいたい合っとるが、お前は一つだけ間違っとる。うちがお前を殺せへんってことや」
「はぁ?あなた、この期に及んでまだそんな戯言を言える元気があるわね」
「最後にもう一回だけ忠告しといたる。うちはお前を殺せる。後ろに気ぃ付けるこったな」
この状況でそんなことを言える度胸は元大魔神だっただけあるけど、完全に負け犬の遠吠えみたいになってるような気がするのはわたしの気のせいだろうか。いや、何か忘れている気がしている。サタンは嘘はつくがこんな状況で嘘を言うようなやつじゃない。
挑発を続けるサタンに向かって、オオカミさんは銃に弾を込めて再度オオカミに撃ち込んだ。
苦しむサタンに近づいていき、悶え苦しむサタンの胸倉を掴み「そんなに死に急ぎたいのか」と怒りを抑えきれずにいた。ニヤリと笑ったサタンに苛ついたのか、胸倉から頭へと掴み変え、サタンの顔を地面に叩きつけ、屈辱を味わわせるように何度も土に顔を擦り付けるオオカミさんはさっき見たサタンの片鱗とはまた違う恐怖を感じた。
「残念だわサタン。真紅の女王と呼ばれたあの頃はすごかっただろうけど、今は私にさえこの有り様。自分でも悲しくならない?」
「懐かしい名前をっ、出しやがって。だが、今のうちには失うものはない。ただ突き進むだけや。せっかくやから世話焼きの元大魔神サタン様から大事なことを教えたるわ。最後に勝ち残ればええねん、くだらん意地とプライドでは結果はついてこおへんのや。特にオオカミ、お前みたいなのは油断して最後には負けるねん。このうちみたいなやつにな!」
「忠告ありがとうございますサタン様ぁっ!!」
言葉を聞き終えたオオカミさんは最後、さっきよりも強い力で思いっきり顔を地面に叩きつけ「やっぱりあなたは後でじっくりいたぶってあげるわ。その前にメサイアと話をしてくるから待ってなさい」と告げ、わたしの場所に歩みを進めた。
「だから後ろに気ぃ付けや~って言うたったのに」
「えっ」
「お前の負けや」
オオカミさんの背中にショットガンがつきつけられたと同時に、一発の鈍い銃声が響き渡った。
しかしショットガンを握っていたそれは、サタンの手ではない。
サタンの髪、もとい悪魔、リリスだった。




