第21話
なんとも拍子抜けというか、鍵があるんだから閉めておけばいいのにと思った。
せっかく七大魔王に与えられた特別な待遇を何にも活用していないじゃないか。
確かにわたしたちみたいに襲ってくる悪魔はいないかもしれないけど、使えるものは使っておこうよとオオカミに敵ながら言いたくなる。
目の前に広がっている世界はグレムリンのいた場所と少し似ていたが、違う点といえば緑の多さだろうか。短めの草が生えてところどころに木が生えていたぐらいのグレムリンの場所とは違い、うっそうと生い茂る森のような感じでまるで自然界そのもの。遠くにはそびえ立つ山も見える。下には清らかに流れる川もありまさに生き物たちの楽園と言ってもいいんじゃないだろうか。
ゲームでしか見た事のない景色を目の前に気を取られていると、少し遠くの方で木の葉が揺れた。
「サタン見た?今あそこの木が揺れたの」
「いや見てへんかったわ。なんか生き物ちゃうかー。よう見たらいっぱいおるおる」
「悪魔以外の生き物もこの世界にいるんだ」
「まぁここほどじゃないけどな。オオカミはもともと動物やったしほんでと違うか」
なるほど。動物同士仲良くやろうという感じか。
なんとも微笑ましい悪魔じゃん。
でもそんなに生き物がいるなら少しぐらい賑わいを見せてほしいんだけど。
その思いが通じたのか、再びさっきの木の葉が揺れた。
よーく目を凝らすがいまいち何がいるのかわからなかった。
だがさっきと違って、長く揺れている。
ん?何であそこだけ揺れているんだ。
「ほらサタン。あそこ動いてるでしょ。あそこに何がいるか見える?」
「うーん、いや見えんな。葉っぱが多すぎてよくわからん」
知りたい正解が得られずガッカリしたが、すぐに答えは明かされる。
がさがさと揺れていた葉から出てきたのは翼を大きく広げた鳥だった。
ええっとあれは、鷹、いや鷲・・・?
猛禽類には詳しくないのでハッキリとわわからないがそのどちらかだ。
鳥の中では群を抜いて体も大きく、めちゃくちゃカッコいいということだけ知ってるぞ。
けど鳥が木に止まってあんなにがさがさと動くものなのだろうか。
何か違う気がする。
「ねぇサタン。あれは」
鷹か鷲どっちなの。
そう聞こうと思ったとき、静かな森に「パンッ!」と何かの音が響いた。
その音が何かを理解するのは簡単だった。
考えるより感じろ。まさにその言葉通り。
右肩には小さい穴が開き、血がどくどくと綺麗な森へと滴り落ちている。
銃声。
オオカミによる獲物狩りは既に始まっていた。




