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私、悪魔になりました  作者: 白子うに
4章 幻影との遭遇
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第11話

「死んでもかまわなかったって、助けるってのは本当に嘘だったの?」


「せや。やっとわかってくれてよかったわ」


「よ、よかったじゃあないよ!!わたしに嘘を付いてたなんて、そんなこと・・・そんなのいいわけないでしょ!!!わたしは信じてたのに・・・」


「でも結果的に助けたんやし許してくれや」


「それでわたしが許すと本当に思ってるの??それにサタンは最後の攻撃を防いだのも助けたわけじゃないって言ってたじゃない。それについて話してよ」


サタンは顔を軽く歪めた。言いたくなさそうだったがサタンは話し出した。


「最初にあんたが攻撃された時に、あの時点でうちはあんたを見限った。あんたは確かに悪魔になりたてほやほや。戦い方も全くわからんかったとはいえ、グレムリンみたいな強くもない悪魔相手に二度もとどめを刺されそうになるようではこれからの戦いは正直厳しいと思ったわ。だから何もせぇへんかった。あそこであんたは死ぬ。そう確信してたが予想は裏切られた。あの謎の能力であんたは一命をとりとめた。能力の詳しい事は後でオーディンの爺さんに聞くからよしとして、うちもよく知らん珍しい能力や。磨けば光るダイヤの原石のあんたを失うのはもったいないと思ってな」


ふぅーーーっと息を吐いてから胸の谷間からキセルを取り出し吹かしだした。あれだけ言いにくそうにしていたのに、いざ口を開いたと思ったらとんでもないことをペラペラペラペラ話し出した。それにオーディンの爺さんて誰なんだよ。いきなり知らない名前出すなよ。イライラがとまらない。


「オーディンの爺さんっていうのはうちの友達で、悪魔の能力について詳しい悪魔や。爺さんのことを友達っていうのも変な気がせんでもないけど気にせんでええ」


急に説明しだしたので何故わかったのかと少し焦ったがわたしは忘れていた。サタンはわたしの心が読めるんだった。ほんとこの機能いらないでしょ・・・


「ほんでや、あんたがずっと気になってることについてなんやけど。二回目のグレムリンの攻撃を防いだやつな。何でうちが戦闘に参加したかっていうかとやな、クッッッソおもんなかったからや」


「はぁ??おもんなかったってのはわたしとグレムリンの戦いのこと?」


「そうや。見てて死ぬほどおもんなかったで」


「面白くないからってサタンがわたしを助けた理由にならないでしょ」


「なるわ。まぁ何度も言うけど、結果的に助けただけやしな。結果的に。勘違いせんといてなっ!」


ふいっと顔を背けてサタンは一昔前のツンデレ娘みたいな反応をした。何で急にデレだすんだよ。


「じゃあ何でそうしたか教えてよ」


「篝ちゃんさ、テレビでスポーツの試合とか見るか?」


「スポーツの試合?まぁそんなに見ないけど、プロ野球の試合とかは割と見るほうかなぁ。後はオリンピックとかは必ず見てるよ」


突然何を言い出したのかと思ったがとりあえず素直に答える。


「一流のプロスポーツ選手が必死に競い合ってるのは見てて面白いよな?つまりそういうことや」


「つまり?」


「んぁぁぁもーほんまに感が鈍いやっちゃな!!あんたらの戦いはつまんなかったってことやろがいアホンダラぁ!!!プロ野球の試合はおもろいやろ??けどあんたらの戦いは社会人のおっさんの寄せ集め草野球チームの試合にすら及ばないほどつまらなかったわ!下手くそ同士の試合とか片方が強い試合は見てて時間の無駄やろ?な?そうやろ?だからわざわざうちがこの無駄な時間を終わらせるために割って入ったんや!!そういうことや!!わかったかいボケが!!」


「そういうことね。うん、わかった。よーくわかったよ」


「そうかそうか。熱弁して良かったわ」


理解能力が低いわたしにも問題があるとは思うが、なんでこんなに責めたてられなければいけないのだろうか。それに暴言がすごい。アホンダラぁて。ボケがて。ヒートアップするとこんなにも人は変わるのか。教訓にするとしよう。というかいつのまにか立場が逆転しているではないか。切り返さなければ。


「わかったからさ、一回謝ってよ」


「わかった」


即座に返答したと思ったら、申し訳なかったとサタンは潔く頭を下げた。

本当はグレムリンにさせていたように土下座をしてもらいたかったのだが、わたしもそこまで鬼ではない。潔い人は好きだ。一応許す事にはしたが、最後にお灸を据えておく。


「言っておくけど、一度失った信頼を取り戻すのは信頼を得るより大変なんだからね。別に嘘を付くのは悪い事じゃないとわたしは思ってる。だってわたしも嘘はいっぱい付いてきたから。だけど、相手を傷つけない嘘しか付いてない。傷つくのはわたしだけでいい。大切だと思う人にはいつもそうしてきた。本音で話し合うのが大事なのは変わらないけど、知らなくて幸せなこともあるんだよ。嘘で相手を救えたりもする。理解できないかもしれないけど、頭の片隅にでも入れといて」


「承知いたしました」


「やめてよ気持ち悪い」


「わかった」


「よし」


テンポのいい会話が最高に気持ちよくて気分が高揚している。

やれやれ。憎めないやつめ。


「それじゃ話も終わったことだし、これからどうしよっか?」


「まずは七大魔王を倒していくっていうのは変わらんけど、ハイペースで進めんくてもええで。というか今のままじゃこれからの戦いは恐らく厳しいやろうし、トレーニングもしていかなあかん。辛いやろうけど耐えるんやで」


「辛いの・・・?」


「そんな心配せんでええって」

サタンはくすくす笑ってわたしの頭をポンポンしてきた。


「とりあえずお疲れさん。今日一日は好きに過ごしてええよ。人間界でもぶらぶら散歩してきたらどうや?いつでもここには戻ってこれるけど気分転換にはなるんちゃうか?」


「まぁ気分転換ぐらいはなるかもねー。サタンも一緒にどう?」


「うちは今からオーディンの爺さんとこに行ってくるから遠慮しとくわ」


「了解。それじゃあ今から出かけてくるよ」


「おっけー。ほな今から二十四時間後、この屋上でな~」

手を振りながら行こうとすると、サタンが呼び止めた。


「あー悪魔の基本的な力はここの人間世界でも使えるしな。翼も出せるから空中移動も可能や。ただしくれぐれも見つからんようにな」


「はいはーい」


軽快に二つ返事をし、翼を広げてわたしは夜の街へと繰り出した。




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