第10話
「おーい、そろそろ起きや~」
サタンのモーニングコールで快適な睡眠の邪魔をされて少しうっとうしく思った。
運んでもらった分際で何様のつもりなのかと自分で自分を攻め立てる。
目を開けると、辺りはまだ真っ暗だった。
グレムリンを倒しに行った時も夜だったけど、どれくらいの時間が経ったのだろう。
わたしは再び人間世界に戻ってきていた。そう、あの屋上に。
わたしが自殺しようとした屋上。サタンと出会った屋上。いじめっこを殺した屋上。
そして、人間をやめて悪魔になった屋上。記念すべき場所だ。良い記念とは言ってない。
自殺しようとしたあの時から物凄い早さで色々な事を経験しすぎているせいで、頭の理解が追いついていないのでどっと疲れた。それにいきなり戦闘をさせられて疲労困憊の極みだった。
学校でテスト期間中に毎日徹夜で勉強していた時よりも、体育祭でじゃんけんに負けて、みんなが一番やりたくない競技の1500メートル走で死にかけたあの時の疲れなど比ではないくらいだった。
身体を起こすのもかったるいので、わたしは冷たいアスファルトの上で行儀悪く寝ころびながらキセルを優雅に吹かすサタンに色々と聞くことに決めた。
「ここまで運んできてくれてありがとうサタン。それに関してはお礼を言うよ」
「それに関して、ってどういう事やねん」
何やら不服そうな顔を浮かべているが、気にせず質問をする。
「まず一つ目なんだけど、サタンさ、私が死にそうになった時に助けてくれるって言ったじゃん。でも、グレムリンと戦った時に私が死にそうになった時あったでしょ?」
「んー?あんたが腕で貫かれそうになった時の事か?」
「そうそれ!それだよ!!あの時わたしはどう考えても死にそうになってたでしょ?なのにサタンはずっと傍観していただけだったよね。まぁ結果的に変な能力で助かったわけだけど」
「助かったから別に良かったやん」
「そういう話じゃないでしょ!!助けてくれるって言ったのに助けてくれなかったじゃん!あれは嘘だったの?あっ、でも最後のピンチの時は助けてくれたよね・・・。どういう事なの?」
「そういうことや」
「もーーーちゃんと真面目に答えてよ!!!」
「わかったわかった。わかったから落ち着いてーや篝ちゃん。疲れた身体に障るで」
だったら最初から話せよと口に出そうになったが、言葉を飲み込んだ。
「ほなまぁご期待に添えて答えさせていただきますわ。まずは助けるって言った件やねんけどあれは嘘や。グレムリンの言ってたのはほんまのことやわ」
「ちょっええっ嘘だったの!?でも、最後は助けてくれたよね?」
「いや?助けたつもりなんかあらへん。これっぽっちもないで」
「いやいやいや、サタンさん?どういうことかよくわからないんですが??」
「端的に言うとやな」
急にサタンは真剣な表情に変わる。
「あんたが死んだら別にそれはそれでかまわへんかった。これでわかったか?」
これっぽっちもわからなかった。




