宿屋攻防戦
「おばさん!
2人で1部屋で!」
「あいよっ。
どの部屋にするんだい?」
「んー……黄金の間で!」
「ストォォップ!」
「どうしたのよセナ。」
「その部屋絶対高いですよ!
一番安い部屋にしましょう?」
「えー?
んじゃーこの銀箔の間で!」
「ちょぉぉぉい!」
「どうしたのよセナ。」
「それ2番目に高いですよ!
大人しく一番安い部屋にしましょう!」
「えー……。
それじゃこの青銅の……」
「この白の間で!!」
俺はノアの言葉を遮っておばさんに部屋を頼む。
「あいよー。
白の間ね。
これが鍵になるから無くさないでね。」
おばさんはそう言って指輪を渡してくる。
「一番グレードの低い部屋なんて
人が泊まれる様な場所じゃ……。」
「あははは。
ありがとうございます!」
俺は無理矢理ノアの口を塞いで階段を上がる。
俺達の部屋は2階だ。
そして部屋の前で手を離す。
「どうしたのよセナ。」
「店主の前で悪口は良くないですよ!」
「むー。」
「取り敢えず入りますよ!」
俺は指輪をはめて扉を開ける。
指輪に彫られている数字が8から➡︎7に変わる。
きっと残り使用回数を表す数字だろう。
中に入るとそれは普通の部屋。
左手にバスルームとトイレ、奥にはベッドが1つ置かれているだけだった。
「ふーん。
割と普通ね。」
「やっぱり白で十分でしたね。」
「それにしても疲れたぁ。」
「僕もです。」
2人とも口には出さないがクタクタだったのだ。
すぐにベッドに寝転がる。
「ねぇセナ?」
「どうしました?」
「明日の予定は?」
「僕はダンジョンに行く予定ですけど…。」
「あら奇遇、私も御一緒していいかしら?」
多分何言ってもノアは付いてくるだろう。
それに今は疲れで頭が回らない、
適当に返事しても良いだろう。
「良いですよ。」
安直にそう答える。
「じゃあ明日に備えて早く寝ないとね?」
「そうですね。」
「早めにお風呂入りましょうか?」
「そうしましょうか。」
「じゃあ行くわよ。」
「分かりました。」
…行くわよ?
「まさか一緒に入る気ですか?」
「……?
当たり前じゃない。」
「ダメダメダメ!」
俺はブンブンと頭を振る。
「1人1人、入りましょうよ!」
「なんで?」
俺の言葉にノアは身体をグイッと寄せてくる。
ち、近い!
「古来よりお風呂はスキンシップの場なのよ?
折角仲良くなったのに
一緒に入らない選択肢は無いわ。」
「ぼ、僕胸小さいですし!」
「恥ずかしがらなくても良いじゃない。
私も小さいから大丈夫よ。」
「で、でも!」
不意に寒気を感じる。
このタイミングで来やがった!
身体が光を帯びて、
徐々にその光が増していく。
「女同士なんだから大丈夫よ。」
「お、お風呂大嫌いなんです!!」
「なら尚更入らなきゃ。
私が身体を洗ってあげるから。」
……くっ!
「そ、そんな事より夜景が綺麗ですねー!」
俺は窓を指差してそう言う。
ノアの視線が窓に向いた隙にベッドの下へと滑り込む。
「ん?
急にどうしたのよ。
カーテンで外なんか見えないじゃない。
……あれ?」
セーフ!
ギリだよ今の!
猫の姿になった俺はガッツポーズをしていた。
よーし、このままここでセナに戻るまで待機すれば……。
「あれ?この服セナのじゃない。」
まずーい!
バレるバレる!
俺は咄嗟の判断でベッドの下から出て行く。
「に、ニャー!!」
「ん?」
よし視線が逸れた。
これでもう一度視線が逸れた時にベッドの下に戻る。
そしたら完璧だ。
「ぎこちなく鳴く猫ね。」
そ、そんな事ないよ!
何故か意固地になってもう一度鳴いてみる。
因みに猫の姿でも普通に話せますよ。
「ニャーー!!」
「迷いこんじゃったのかな?
ほらおいで。」
ノアは俺を抱き抱えて頭を撫でる。
ピ、ピーンチ!!!
この状態で変身でもしたら完全にバレるー!!
「あら貴方可愛いわね。」
「ニャー!」
「……。
にゃん♪にゃん♪
肉球ぷにぷにぃー。」
こんなに顔が緩んだノアを見たのは初めてだ。
なんか乙女の見てはいけない所を見てしまった罪悪感に駆られるなぁ。
「……貴方優しい眼をしてるのね。」
「ニャー。」
「そう言えば今日の昼に会った人も
似たような優しい瞳をしていたわ。」
ギクッ
「ニ、ニャー?」
「確か名前は《セドナ・ブルドッグ》だったと思うけれど…。」
惜しいっ!
ブルドッグって犬じゃん!
むしろ俺は猫だよっ!?
「彼の名前から取って、
君は今日から《ブルドッグ》よ。」
「ニャー (だからそれは犬ー!!)」
「ふぅ。
あの人が王子様みたいに助けてくれたの。
それはもうかっこ良かったぁ。
もう1度会えたら良いのに…。」
……。
そんな風に思ってくれてたのか。
あの時の俺はTシャツで頭が一杯だったけど…。
「でもセナが言うには、
彼はダンジョンに向かったらしいの!
もしかしたら明日出会えるかも!
そしたらこ、告白なんて……。
んふっ…んふふふふ。
いゃーーん。」
ノアは俺を思いっきり抱きしめる。
ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!
死ぬぅ!!
内臓とかそこらへん全部出ちゃう!
「でも明日までダンジョンに居るとは限らないよね…。」
不意に力が弱まる。
助かった。
「もう1度会えないかなぁ。」
「ニャー。」
目の前に居るからさ、元気出せよ。
「にしてもセナのやつ何処に
逃げたのかしら。
そんなにお風呂が嫌いだったのね。」
!!
背中にゾワッと寒気。
突然の変身Timeだ。
俺は手を振りほどいてベッドから飛び降りる。
「あ!猫ちゃん待って!」
ノアの声を無視してベッド下へ。
光が身体に帯びていき、次第に強くなっていく。
そして猫の姿からセナへと変身した。
「あれ?セナ!
そんな所に隠れてたの?」
ノアがベッドの下を覗き込んでそう言う。
ギリギリセナの姿に戻ったので都合が良かった。
「ここに猫ちゃんが……ってなんで裸なのよ?」
「あはは…。」
「そうか!
観念しました、お風呂に入ります。
って事ね!」
「え!?」
「口で言えば良いのに!
セナは可愛いわねぇ。」
「ち、ちがっ……。」
「今さら後戻りは出来ないわよ。
ほらっ。」
ノアは俺を引きずり出してお風呂へ向かう。
……これは最悪の事態じゃニャイ?
師匠「感想、指摘等お待ちしておるのじゃ。」
セドナ「ブックマークもお願いしますね。」




