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黒騎士物語  作者: 美幸
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4

 一時間目が終了し、休み時間となると同時に、莉子はまた椅子を後ろに向けて座った。


「昨日も黒騎士さんに会ったよ」


 開口一番、真紀に言う。


「会ったんじゃなくて、どうせ会いに行ったんでしょ」


 真紀はため息をついた。

 すっかり悪いイメージを持っているのか、黒騎士の名前が出ただけで、心配そうに声のトーンをいくらか下げた。


「えへへ、バレたか」


 莉子はそんな真紀の様子にまるで気付かない様子で、軽く舌を出して微笑む。


「で、どんな話したの?」

「えっと、学校とか、服の話とかかな」

「また莉子が一方的に話てたんじゃない?」

「そ……そんなことない、よ?」


 莉子が眼を泳がせて言うと、真紀は「どうだか」とまるで信じていない様子を見せた。


 だって、黒騎士さんが私のこと聞きたいって言ってきたんだもん。しょうがないじゃない。


「じゃあ、黒騎士さんは莉子に何言ってきたの?」

「えーっと」


 そういえば、ひとつだけ()かれたことがあったっけ。

 莉子は昨日のやりとりを思い出した。


「『彼氏とかいる?』って訊かれた。いないって言ったら、驚かれたけど」

「何かそれって、下心丸出しじゃない?」


 非道い! 何でそんなこと言うの!

 莉子はむきになって迫った。


「黒騎士さんのこと悪く言わないで!」

「はいはい、ごめんごめん――これだから男と付き合ったことのない子は」


 後の部分は聞こえないように言った独り言だったらしいが、莉子はしっかりと聞き取ってしまったようで。


「しょうがないじゃん。良い出会いがないんだからさ」

「確かにうちの学年の男って、パッとしないからね」


 真紀は苦々しく笑った。


「あ、でも、黒騎士さんはいい感じかなぁ。何か、格好良い人のような気がする」

「気をつけなよ。男は上半身と下半身が、別々の生き物なんだから」

「もうっ!!」


 莉子は真っ赤になって怒ったが、真紀に対しては柳に風。まるで相手にされず、軽くあしらわれた。

 あ、そうだ。これを聞けば、真紀も思い直すかも……。


「ねえ、聞いてよ真紀。黒騎士さんって、N大学の人なんだって」

「え、N大学?」


 真紀は驚いた表情を見せたが、すぐにそれは猜疑(さいぎ)の色を濃くしていった。


「ね、いい感じでしょ」

「それってさ、何か嘘っぽくない? ゲームばっかしてる、それもレベル611の人が、勉強なんかできるのかって話じゃない?」

「うーん、どうかなぁ」


 頭の良い人って、勉強しなくてもできちゃったり?

 莉子は頭には、そんなことが浮かんだ。


「きっと勉強できる人って、勉強してるからできるんじゃない?」


 莉子の心の声に答えるように、真紀が言った。


「そうだよねぇ。私もそう思う」


 じゃあ、どういうこと……?

 莉子は真面目に考えた結果、一つの結論に行き当たった。

 ゲームもできて、勉強もできる。世の中には、そんなすごい人がいるんだ! 莉子は満面の笑顔で言う。


「きっと黒騎士さんは、現実(リアル)でもレベル611なんだよ!」


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