第六話 魔法戦士の誕生
甘木川広場は名の通りに川のすぐそばにある広場で、子供達の大事な遊び場の一つであった。
竜一は広場に着くと辺りを見回す。しかし誰もいない。
「どこに……?」
「来たか」
竜一は驚いて後ろを振り向く。そこには先ほどの青年ライジャ、そしてその腕には竜二を抱えていた。竜二は気を失っているらしい。
「竜二!」
「こいつを返して欲しければ俺に勝つんだな」
「何で竜二が! 竜二は関係ないだろ!」
「でもこいつのおかげでお前を呼び出すことに成功した。さて、お前の力を見せてもらうぜ」
「ち、力……!?」
ライジャは竜二を空に浮かべ、手を竜一に向けた。そして何かを言った。
「放て! マジックショット!」
するとライジャの手から光が集まって魔法の弾が放たれる。
「うわぁ!」
竜一は何とか横飛びでよける。
「大丈夫か!?」
「な、なにこれ!?」
「これは攻撃魔法さ!」
「攻撃魔法……!」
目の前で見せられたもの。それは魔法。さっきオールが見せた魔法とは違う。人を傷つけるための魔法。
「まだまだいくぜ!」
マジックショットがさらにニ、三発放たれる。竜一は何とかよけたがかなりきつい。その時竜一はとある疑問が浮かぶ。
「何でここに人が来ないんだ!?」
「そりゃそうさ、ここには無意識にこの場所を避ける魔法、そして外からは見えないようにする魔法をかけているから誰も気づかない」
「そんな……!」
ライジャが笑いながら言う。その時オールが竜一に言う。
「竜一! 俺と力をあわせて戦うんだ!」
しかし竜一は後ずさりしながら呟く。
「無理だ……」
「竜一!」
「無理だよ! 僕なんかが、僕なんかがこの人たちに勝てるわけが無いよ!」
竜一はライジャの攻撃を見て弱気になっていた。
「……おいおい、こんなもんで怖気ついたのかよ。なんかつまんねー」
ライジャはその言葉を聞いて失望したように言う。その時だった。
「いい加減にしろ竜一!」
オールが竜一に向かって叫ぶ。近くにいた竜一はもちろん、ライジャも驚いた。
「お前まだ戦ってすらないだろ! 何もしてないだろ! 何もしてないのに逃げるのか!」
「でも、僕は……」
「それにお前はもっと自分を信じろよ! 自信を持てよ! お前は自分を信じてない! だからすぐできないと思い込む!」
「オール……」
「自分を見下すな! 勝負から逃げるな! 弟を助けるんだろ!!」
そう言われた竜一は空に浮かんでいる竜二を見た。自分のせいで捕まってしまった竜二。絶対に助けなくてはいけない。
「竜一」
オールの方に振り向く。覚悟を決める。
「僕、戦う。竜二を救う!」
「そうこなくちゃな!!」
オールは竜一の頭に触れる。すると竜一の頭の中にとある言葉が入る。
(え? これって……?)
「やいやい! 今度はこっちの反撃だぜ!」
「ああ?」
オールはライジャに喧嘩を売ったあと、竜一に向かって言う。
「今の呪文を叫べ。それで力を手に入れる」
竜一はうなずき、呪文を叫ぶ。
「我に力を! ソウルイン!」
竜一が叫んだ瞬間、光に包まれる。
「な、なんだ!?」
竜一を包んでいた光が消える。そして竜一は姿を変えていた。戦うものとしてふさわしい姿に。
竜一は目の前に現れた剣を手にする。そして剣先をライジャに向けた。
「絶対に君を倒す!」
ここに魔法戦士が誕生した。
次話の投稿は中間テストのため、大幅に遅れます。
よろしくお願いします。