第三話 小さな精霊
竜一は自分が呼ばれたから振り向いた。そして振り向いた先には竜一の想像を超える存在だった。
少し逆立った銀髪に、鋭く強気な目。そしてその大きさ。頭から足まで20センチぐらいで、常識に考えてありえない存在だった。
(なにこれ……)
(なにこれなにこれなにこれ!?)
いきなり非現実的なものが現れて竜一の頭の中はパニックになっていた。
「驚いてるようだな」
小人は竜一に話しかける。
「ど、どこから入ってきたの!」
「窓から」
竜一は窓を見る。確かに開いている。
(そういえばさっき窓を開けたような……)
「まあ驚くのも仕方ないな。こっちの奴らはあまりこういうのに慣れてないらしいからな」
小人はそんなことを言っている。竜一は聞いてみた。
「き、君は一体何なの!? 何でこんなに小さいの!? こういうのって何の話!?」
竜一は思わずどんどんしゃべってしまった。
「お落ち着けって! 今説明するから!」
とりあえず少し落ち着き、一拍おいてから小人はしゃべった。
「俺の名はオール。こことは別の世界から来た精霊だ」
「は……はい!?」
せっかく落ち着いていたのにまたパニックになる。
(ちょっとまって! 精霊!? 別の世界!!?)
竜一は信じられなかった。しかし目の前の存在というものが、これが本当ということを示してくれた。
「信じられないか?」
「……いきなりそんなこと言われて信じろというほうが無理があるよ……」
「じゃあ証拠を見せてやる。俺がこの世界の奴じゃないって」
「えっ?」
「……あれがいいな」
オールは竜一の部屋を見回して机の上にあったペン立てに目が止まる。それに向かって手を向けるとオールは唱える。
「マジックムーブ!」
するとペン立てはぼんやりとした光に包まれる。オールの手が上に動くとペン立てが浮かぶ。
「ええっ!?」
ペン立ては手の動きにあわせて動く。右なら右、左なら左、早く動かせば早く動く。
「なにこれ! すごいすごい!!」
オールはペン立てを元の場所に置き、改めて竜一の方へ向く。
「どうだ? 信じる気にはなったか?」
「えっ? う、うん……」
「まだ戸惑っているようだな。まあ無理もないよな」
そう言ってから一拍おいてまた言う。
「だけど無理にでも信じてもらわなきゃいけないんだ」
そう言うオールの表情は硬かった。竜一は真面目に聞こうとした。
「俺たちに力を貸してくれ。そして一緒に戦ってほしい」