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第三十話 仮の終結

 竜一は目の前の男が雰囲気が誰かに似ていると思っていた。もちろん外見は精霊と人間だからかなり違う。しかし雰囲気がオールと目の前の男で似ているのだ。

 男は光に対して話し始める。

「ヒカリ、彼らを憎む気持ちはわかるが、まだ彼らを無力にするのは早い。ここはおとなしくひいて欲しい」

「……」

 光はしばらくたった後、剣を消した。それを見た男は満足そうにうなずく。

「そういうところで、私は君を優秀な戦士だと思うよ」

「……」

「おや、この言い方は気に入らなかったかな」

 そんな二人のやり取りを見ていた竜一。目の前の男がどんな人物かはわからない。だがわかっている事は、向こうの世界の人間という事、そして自分らを助けに来たわけではないという事だ。

 竜一は頭の中のオールにこの男の事を聞こうとした。その時だった。

 なんと竜一のソウルインが解けてしまったのだ。やはりダメージが溜まっていたらしく、限界が来ていたらしい。

 そうしてオールが姿を現して、男の姿をとらえる。すると男は明らかにさっきまでの態度が変わっていく。


「エドじゃないか。久しぶりだな。いや、今はオールか」

「くっ……その名をお前が口に出すな!」

 オールは男に対して嫌悪感をだし、声を荒げる。その横で聞いていた竜一は男が言った言葉を逃さなかった。

(エド……? オールの事をエドって言った?)

 自分が知っているオールという名ではなく、エドという知らない名前を出した男。そして今のオールの態度。オールと男には何かの関係があるのかもしれない。そんな考えがでる。

 男は竜一達を見まわした後、丁寧に喋りだす。

「さて、君達とは今回で初めて顔を合わしたが、君達は私自身の事はご存じかと思う」

「えっ……それって……?」

「……そのままの意味だ」

 オールがつぶやいた言葉の意味。それはまさにとてつもない事実だという事を教えてくれた。

「じゃああなたは……!」

「いかにも、私の名前はヴァーテイス。皆からはキングと呼ばれている。君達の察しの通り、ディープカオスの頂点に立つ者、つまりリーダーだ」

「……っ!」

 今自分の目の前にいる男こそが、竜一たちが戦っているディープカオスのリーダーという事実。それを竜一は理解しつつも、ある疑問が浮かび上がる。

(この人がディープカオスのリーダー……。でもなんで僕たちの前に?)

 そう考えているのを見透かされているのか、ヴァーテイスはわざとらしく両手を大きく広げながら語り始める。

「なぜ私が君たちの前に現れたのか、おそらくそう思っているだろう。なら今からそれを説明しよう」

 そういった後、ヴァーテイスは指を鳴らした。そして次の出来事は竜一達を驚愕させていった。

 自分達の周りに次々と現れる人影。それをよく見ると、なんと竜一達とほぼ同じぐらいの年である少年少女達で、全員ソウルインをして魔法戦士になっていた。

 竜一達を囲むように現れた魔法戦士たち。その数はざっと三十人程だろう。

「紹介しよう、彼らは私の計画に賛同及び協力してくれる子たちだ」

 竜一は彼らを見る。彼らの内、ある者は傷ついた竜一達を見て笑みを浮かべ、ある者は興味なさそうに冷たく見ていた。共通して言える事は、けっして良い気分にはなれない事だ。

 そんな状況でヴァーテイスは手を上に伸ばし、次の言葉を言った。

「さて、君達の力を彼らに見せてあげなさい」

 そして再び指を鳴らした後、彼らは力を溜め始める。竜一達はその力圧倒される。

(なんだ、これ。皆、こんな、こんな強い魔力を持っているの?)

 しばらくした後ヴァーテイスは手を挙げ、皆を制して魔力を溜めるのを止めさせた。

「いかがだったかな、彼らの力は」

 そう言ってきたが、竜一達は反応できずにただ茫然とするしかなかった。ヴァーテイスは彼らの一人に合図を送る。そして彼らは一斉にテレポートをして、姿を消した。

「何を……?」

「ただ単に、私の本拠地へと向かわせただけさ」

 そう言うと改めて竜一達に話し始める。

「さて、わかっていただけたと思うが、これが一つ目の理由。君達に私が集めた戦士を見せようと思ってね。そもそも私は、ある事を達成するために、この世界で必要な戦力を集めていたのだよ。魔法戦士は今までの戦士よりもはるかに大きな力を持っているからね。だからこの世界に戦獣を送り、魔法戦士をさがしていた」

「そんな理由があったのか……!」

 オールは戦獣をこの世界に送っていた目的を、易々と達成させられていた事に悔しさを感じていた。

 一方で竜一達は、さっきの光景を見て絶望しか感じなかった。彼らと戦う事になれば、勝つ確率はとてつもなく低いだろう。絶望感にある竜一達に気付いたのか、次のように付け加える。

「ああ、言っておくが今すぐ戦うという訳ではない。まだそのときではないからな」

「……その時ではない? どういう事?」

 竜一が言うと、ヴァーテイスは次のように答えた。

「私がここに来たもう一つの理由、それは君達に宣戦布告しに来たからだ!」

「なっ……!」

「詳しく言えば、我々は明日から二週間後、アークロンワールドに存在する精霊の国、エレメントツリーズに侵攻する」

 その宣言にオールは我慢できずに声を上げる。

「エレメントツリーズに侵攻するだと!? そんなふざけた事が許されるとでも思っているのか!!!」

「そんな訳ないだろう。私自身、精霊や神、いや全ての存在に抗う行為だと考えている。そんなのは承知の上だ」

 竜一は横で聞いていて、聞きなれない言葉があったのでオールにきいてみる。

「オール、エレメントツリーズって……?」

「俺たちの生まれ育った場所、そして精霊たちの国だ」

 オールはそういった後、ヴァーテイスに対して再び言う

「……お前は、お前は何のためにこんな事をする!?」

「私の最大の野望を達するためだ」

「野望!?」

 するとヴァーテイスは静かに微笑み、間をあけてつぶやいた。

「世界の破滅」

『……っ!!!!!』

 その一言は竜一達の胸にあまりにも重く、そして深く突き刺さった。

「ちなみにこの世界には危害は加えないつもりだ。安心してくれ」

「何が安心してくれだ! そんなふざけた野望を、黙って見過ごせって言うのか!?」

「ほう、ではこの私を止めるのか。先ほどの圧倒的な戦力の前で、そんな事を言えるのか?」

「くっ……!」

 オールは言い返せない。ヴァーテイスの野望を阻止するには彼だけでなく、この魔法戦士達と戦わなくてはいけない。当然勝機もなく、安易にうなずける訳がなかった。オールだけでなく、啓太やかすみ、当事者でもあるブレイズやスレイですら、あきらめの様子が見えていた。


 ただ一人を除いて。


「……せる」

「えっ?」

 オールが思わず声をだす。彼の近く、竜一に対してだ。

 竜一は、決めていた。今までよりも、大きな、大きな覚悟を。

「むっ、何か言ったかね?」

 ヴァーテイスは竜一に問いかける。それに竜一は強い意志でヴァーテイスを見る。

「……止めてみせる。あなたの、あなたの野望を!」

 竜一は体を無理やり起こし、そして立ち上がった。足もおぼつかないが、それでも倒れず、ヴァーテイスと対峙する。

「ヴァーテイス。あなたの、あなたのやろうとしている事は、絶対にやらしてはいけないことだ! だから、だから僕が止める!」

「なぜ? 君には関係ないことだ。この世界にいれば何も起こらず、平穏に過ごせるのに?」

「……関係なくない! だって、オール達は友達だから!!!!!」

「……っ!?」

 強く、自分の答えを言う。目の前の男に対して。

 ヴァーテイスは理解できないと言いたそうな表情をする。

「友達? そんな理由で我々と戦うとでも言うのか?」

「そんな理由!? 違う! 僕にとって、友達という存在はとても大事なんだ!!!」

「……竜一」

「圧倒的な戦力とか関係ない! 僕はただあなたの野望を止めて、オール達の国を、エレメントツリーズを救って見せる!!!」

 オールは、竜一の放つ言葉にただ驚かされていた。まだ2か月程しかたってないが、それでも竜一の事は殆ど知っていると思っていた。だが、オールは竜一の勇気を、竜一の本気を知らなかった。

 この時、初めてオールは思った。竜一と出会えて良かったと。


「馬鹿らしい」

 竜一はヴァーテイスに自身の考えを言うと、別の声が響いた。それは光だった。

「如月さん……」

「笑わせるな。ただお前は現実を見ていないだけだろう? そもそもたった2週間で、どうするつもりなんだ? さっきまで私にやられていたくせに」

「それは……」

「それに友達だからその国を救う? 友達なんて口先だけだ。都合の良い時だけ利用して、自分が危なくなったら手のひら返して見捨てる。それがお前達の言う友達だろ?」

「違う! 友達はそんなものじゃない!」

「違くないさ。お前だって、やばくなったら精霊を見捨てるさ」

「そんな事、絶対にしない!!」

「ふん、どうだが」

「どうして君はそんな事を言うんだ! そもそも君たちが狙っている国はセレンの故郷でもあるんだよ! 君はそれでいいの!?」

「勘違いしてもらいたくないのだが、セレンはエレメントツリーズに対して何も思っていない」

「なっ……!?」

「当然でしょう? あんな馬鹿げたところ、私から抜けたんだから。むしろ今回の事はうれしく思っているわ」

 光とセレンの言葉に信じられないと思った竜一。それでも竜一は続けて聞いてみた。

「君達は、本当にそれでいいの!?」

「……」

 その問いかけに、光は竜一に答える。

「お前は、私の苦しみを知らないからそんな事を言えるんだ」

「えっ……?」

 竜一はさらに聞こうとしたが、その時ヴァーテイスが間に入った。

「すまないが、話はそれくらいにしてもらう。我々にはやることがあるからな。」

 そう言うと、二人は空に浮かび、魔法の輝きに包まれる。

「さらばだ、カゼトキリュウイチ! そしてオール!! 次に会う時はアークロンワールドだ!!!」

 輝きがより強くなる時に、竜一は光に対して最後の疑問を言う。

「如月さん!!! 君に、君に何があったんだー!!!!!」

 その問いに光は答えることはなく、二人の姿は消えた。


 ここでの戦いは終わった。だが本当の戦いはこれからだった。

とりあえずの区切りがつきました。次は本編ではなく、作者から伝えたいことを掲載します。

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