第二話 想いの記憶
第一話の改定のため、第二話も改定しました。
通学路を通って帰る竜一。竜一は今日の事を思い出していた。
(如月さんと一緒のクラスになるなんて……)
竜一は如月のことが好きだ。好きになったきっかけは小学四年生の秋の事だった。
冬にむかっていると思わせる寒さ。その寒さの中、竜一は走る。手には少しのパンと水を持っている。
「早く猫ちゃんにご飯を……」
通学路の途中で見つけた捨て猫。しかし竜一は気の弱さで親に飼いたいといえず、せめてご飯をあげていたのだ。
竜一は曲がり角を曲がる。するとそこには捨て猫の他に女の子が一人、そこにいた。
(あの人は……)
二学期途中で別のクラスに転校してきた子だった。その子は手に持っていたパンをあげると猫の頭をなでてやる。猫がうれしそうに鳴くとその子は笑顔になる。
その笑顔に竜一は見とれてしまい、胸の鼓動が早くなる。
後にその子の名は如月 光と知る竜一だった。
(でも僕なんかがなぁ……)
竜一は自分の思いを伝える勇気がなかった。それにあれ以来の如月は笑うことがめったになく、怖い印象があった。
(告白してもっと悪い雰囲気になったら嫌だもんなぁ……)
とりあえず竜一は早く家に帰ることにした。
「ただいまー」
「おかえりなさい、竜一」
竜一が家に帰ると竜一の母、香苗が出てきた。香苗は穏やかな性格で、竜一の自慢の母だった。
「どうだった、新しいクラスは」
「啓太と一緒になったよ。それとね、転校生が僕のクラスに入ってきたんだよ」
「あら、いいわね転校生。男の子? 女の子? お友達になれた?」
「あ、女の子だよ。それに友達にはなれないかも……」
「あら、どうしたの? 何かあったの?」
「い、いや何でもないよ……。それより母さん、検査の方はどうだったの?」
香苗は昔から体が弱く、風邪程度の病気でも重くなりやすかった。そのため、毎週病院へ通っているのだ。
「大丈夫、検査の結果は何もなかったよ」
「よかったー……」
「ふふ、じゃあこの後お昼ご飯にするからね」
「はーい」
そう返事しながら竜一は二階に上がる。自分の部屋に行こうとすると別の部屋から弟の竜二が出てきた。もう先に帰っていたらしい。
「お帰り兄ちゃん」
「ただいま」
軽く返事をして自分の部屋に入る。ランドセルを置き、窓を開ける。そしてのどが渇いたので、何か飲もうと一階に向かおうとした時だった。
「おい、そこのお前」
声がした。見覚えの無い声だった。竜一は声のしたほうに振り向く。
そこにいたのは竜一の頭を真っ白にさせるのに十分な存在だった。
「よう」
それは小さな小人で、浮いていた。