第二十四話 新たな力
「準備は良いか竜一?」
「うん、大丈夫だよ」
竜一とオールは真夜中の山奥でとある準備をしていた。これはこれからする事を、周りの一般人にバレてしまわない様にする準備だった。
「もう一度言うけど、一度変えたら元に戻すのは大変だからな」
「大丈夫、それも含めて考えてきたから」
竜一は前々から考えていた武器変更を行おうとしていた。
しかし、これにはデメリットがある。自分が使う武器を変えると、しばらくの間武器を変える事はできずに、自身の魔力が減ってしまうのだ。
変えた武器が自分と合っていれば良いのだが、合わなかった場合はしばらくの間、それを使っていかなくてはいけない。それは今戦っている竜一達には致命的なデメリットだった。
竜一はそれを考えていたが、結論として使う武器を変える事にした。
「まずはソウルインをしてくれ」
「うん、ソウルイン!」
竜一が光に包まれて姿が変わる。竜一はオールに武器を変える方法を聞く。
「これからどうすれば良いの?」
(まず今から教える呪文を唱えろ)
「うん」
頭の中にその呪文が入ってくる。竜一は自分の剣を取り出して構える。
(短い間だったけど、ありがとう)
「源へと戻れ! コア・リターン!!」
呪文を唱えた瞬間、剣が輝き始める。しばらくすると丸い形になっていき、虹色に輝く玉となった。
「これは……」
(これが武器の源だ。ここから自分が使いたい武器に変えていくんだ)
「じゃあどうすれば……」
(頭の中にイメージをするんだ。強く、具体的に念じればそれだけ強い武器になる)
「なるほどね」
竜一は玉を両手で触れて、目を閉じる。そして頭の中で武器をイメージしていく。
しばらくすると玉が輝き始める。それは徐々に強く光っていく。
(いいぞ! その調子だ!)
「く……くく……」
イメージするだけだから楽だと思っていたが、実はかなりつらい。集中力が切れてくるのだ。
(竜一! 武器だけじゃなく、自分がどうなりたいかもイメージするんだ! 玉に自分の考えを封じ込めろ!)
「う……うん……」
竜一は必死でイメージしていく。
(もう少し、もう少しだ……!)
「……っ!」
玉が激しく輝く。目を開けようとしても眩しくて開けられないだろう。
その時だった。頭の中を貫くような音がしたかと思えば、玉の輝きが収まり始めていた。
竜一は恐る恐る目を開けて、目の前のものを見る。
「わぁ……」
目の前に浮かんでいたもの。それは片手で持てる銃だった。
銃といっても、本物の様なリアルな物ではなく、とてもシンプルかつ幻想的なデザインだった。
(成功だ……)
「これが……僕の新しい武器……」
竜一は目の前にある銃に手を伸ばした。そして手が銃に触れた瞬間、竜一の体を何かが駆け巡り、光の粒子が竜一の姿を変えていく。
前の服装や防具はいかにも剣士の格好で、鎧などが着せられていた。
今回の服装や防具は明らかに薄く、よりシンプルになっていた。半袖になったインナーと、より動きやすくなったズボン。防具の面積は小さく、必要最低限にとどめており、その結果とても動きやすかった。頭にはバイザー、左腕には小さな盾がついており、一見すれば籠手の一部にしか見えない。
竜一は銃を右手でしっかりと握り締め、構えてみる。狙いをつけるためのサイトはしっかりとついている。
(竜一、ちょっと待ってろ)
オールは的を適当な位置に出現させる。
(これで試し撃ちしてみろよ)
竜一は的に向かって構える。トリガーに指をかけ、ゆっくりと引いた。
パシュ! という音と共に魔法の弾が撃ちだされる。高速で飛んでいく弾は的に当たり、的が砕ける。
竜一は他の的を狙って撃つ。何回もトリガーが引かれ、次々と的が砕けていく。
(す、すげえや! 全部当たってるぞ!)
オールが驚いていると竜一は銃を構えるのをやめて、腰のホルダーにしまう。
(ん? どうしたんだ?)
オールがそうつぶやいた瞬間、竜一は思いっきり走っていた。
(うお!?)
「……っ!?」
竜一は自分のことなのに驚いてしまった。なぜなら今までにないスピードが出たからだった。
なれないスピードに驚いて、急いでブレーキをかける。何とか止まったが、竜一は動揺が止まらなかった。
(これが……新しい僕の力……?)
今回、服装や防具が軽くなった。それが理由なのかはわからないが、竜一はとてつもない速さで走ることができるようになったのだ。
竜一はもう一度銃を取り出して眺める。今手にしているのはこれからの新しい相棒だった。
(どうだ竜一?)
オールが問いかけてくる。
「うん……すごく良い……この武器なら……これだったらいけそうな気がする」
(そうか)
竜一はソウルアウトを行い、家に向かおうとする。
ふと夜空を見上げる。街灯などで星はよく見えないが、一番星が輝いているのが見えた。
(ここで満足しちゃいけない。これから頑張るんだ。ライトに勝つために。オール達の世界を救うために)
立ち止まった竜一が気になり、オールが声をかける。
「どうした?」
「ううん、何でもないよ。いこう」
竜一達は自分達の家に向かった。