第二十一話 現在の状況
「う……ううん……」
少しずつ視界がはっきりしてくる。まず見えてきたのは星がきれいな夜空だった。しばらくそのまま空を見ていると誰かが顔を覗いてきた。
「あ、起きたかな?」
「う、うわぁ!? かすみさん!?」
「おお、竜一」
竜一は驚いて起き上がる。顔を覗いたのはかすみだった。既に私服だった。
周りを見渡すと啓太とかすみ、オールとブレイズもいた。
「大丈夫か竜一」
「オール!? オールこそ大丈夫なの!? さっき苦しそうに……」
「今はもう平気さ。これくらいなんともないぜ」
オールの話を聞いて竜一は少し安心する。そう思っていたときに啓太はかすみに話しかけていた。
「かすみ、これはどういうことだよ? お前が魔法戦士だなんて」
「……それについてはちゃんと話すわ。だから啓太たちに会いに来たの」
「スレイ! 出てきて!」
かすみは何かを呼ぶと肩に小さな女の子が出てきた。半袖の青いワンピースに妖精らしい羽がついていた。
「とりあえず紹介しとくね。この子はあたしのパートナー、スレイよ」
「スレイで~す! よろしくね~!」
「初めまして、スレイ」
竜一は元気な子という印象だった。かすみは紹介を終えて話を始める。
「まずはあたし達のことを言うわ。私は啓太達より前から戦っていたの」
「えっ! そうだったのか!?」
「もう小四の途中から魔法戦士になって戦っていたわ」
「そ、その時からかよ……。まったく知らなかったぞ」
「隠していたっていうのもあるけどね……。まあそういう訳で、あたしはあなた達の先輩ってわけ。だから魔法戦士のことは詳しいわ」
話を聞いていた竜一はとても驚いていた。
(そんな前から戦っていたのか。もしかしてこれはとても大きな戦いなのか?)
そんな事を考えているとかすみは次の話題にうつろうとしていた。
「次に向こうの世界の事を言うね。はっきり言って状況は悪いわ」
「えっ!?」
竜一達は動揺の色を隠せない。
「ディープカオスの奴ら、最近までおとなしかったんだけど、今活動が活発になってきて向こうの世界の殆どがあいつらにやられたわ」
「嘘だろ……!?」
オールは信じられなさそうな表情をしていた。
「何でだよ! あっちには能力の高い戦士や精霊が居るんだぞ!?」
それを聞いたスレイは説明をする。
「実はディープカオスに天才というしかないほど、力を持った戦士が現れたの~。だから向こうの戦士たちも歯が立たなくなって~……」
「ちょっと待てよ! 誰だよそいつ!」
「もう皆あってるよ~」
「えっ……ちょっと待て! まさか……」
かすみは厄介そうな顔で言う。
「そう、そのまさかよ。さっきまで戦っていたライトっていう奴がうわさの天才戦士よ」
「そうだったんだ……」
それを聞いて竜一は体がふるえた。自分と戦った相手がまさかそう呼ばれているほどの存在という事を知らなかったからだ。
かすみは話を続ける。
「まあ今は何とか耐えているみたい。だけどこのままじゃ押し切られるのも時間の問題よ」
「じゃあどうする事もできないの?」
竜一が不安そうに言うとかすみはにやりと笑う。
「だからあなた達に会いに来たの」
「えっ……?」
「言ったでしょ? あたしはあなた達の先輩だって」
かすみは立ち上がって竜一たちに言う。
「まだあなた達は何も知らなくて、百パーセントの力を出していないんだから。ライト達を倒せる可能性を秘めているのよ」