第二十話 三人目の魔法戦士
ドサ、という倒れる音がする。啓太は気を失って地面に倒れる。竜一も地面にひざをついており、限界に近かった。反対にライトはまだまだ余裕らしい。
(どうしよう、なにやっても通じない……!)
ライトは手を突き出す。竜一はそれを見て横に飛ぼうとする。
「レイレイン!」
多数の光の弾が放射状に飛んでくる。竜一は避けようとするが、あまりの攻撃の広さに何発か当たってしまう。
「くっ……」
地面に倒れる竜一。もう起き上がる力もなかった。
(竜一! しっかりしろ竜一!)
オールの声が頭の中に響く。それで意識を失うことはなかったが、体が動かない。
竜一は自分に近づく足音を聞いていた。ライトがトドメをさそうとしていた。
(あきらめる訳には……負けるわけには……)
「終わりだ」
(負けるわけには……イカナイ!!!)
次の瞬間、竜一の体が光り輝く。ライトは後ろに飛んで様子を見る。
「これは……」
「ウウウ……アアアアア!」
竜一の輝きは全身から右手の剣へと集まる。剣が長く、幅は広くなる。
「これが話のやつか……」
「マケナイ……マケタクナイ! ウワアアアア!!!」
竜一は剣を握りなおし、ライトに向かって走る。そして剣を大きく振りかぶり、叩きつけるように振る。さっきの攻撃より早い攻撃だった。
「フッ……」
その攻撃はライトに避けられ、当たらなかった。竜一は更に攻撃を繰り返すが、当たらない。
「ナンデ……ナンデ!」
(落ち着け竜一! ……暴走してるのか!?)
ライトは余裕の表情で避け続ける。しかし、ある一撃でそれはなくなる。
竜一は水平になぎ払う。すると魔法の刃が放たれる。ライトはそれを避けるが、予想していなかった攻撃に体制を崩す。竜一はそれを見逃さず、上段から振り下ろす。
「コレデ……オワリダーーー!!!!!」
ザンッと剣を地面に叩きつける。その瞬間、土煙が巻き上がる。
竜一は力を使い果たしたのか、通常の戦士の姿になり、膝をつく。
(竜一! 大丈夫か!?)
「なんとか……でもこれで……」
視界が晴れる。そして竜一は驚愕する。
ライトは手に防御魔法を展開し、竜一の攻撃を防いでいたのだ。
魔法を消し、ライトは口端を上へゆがめる。それを見た竜一は絶望の表情に染まる。
(そんな……これでも通用しないなんて……。もう勝てないよ……)
その様子を見たライトは見せしめにと、魔法弾で竜一を吹き飛ばす。
「がは……!」
竜一は地面に倒れ伏せ、ソウルインも解かれてしまう。
「竜一!」
「くっ……、駄目だ……動けない……!」
「まってろ! 今回復魔法を……ぐわっ!?」
竜一は首を動かして上を見る。ライトは手でオールを捕まえていた。
「放せ! 放せこの野郎!!」
「悪いが、お前を捕まえて連れて来いと言われているからな。一緒に来てもらうぞ」
「誰がお前に……ガァ!!?」
「アハハ! ちょっとでも逆らったら苦しい思いをするわよ?」
セレンがオールに魔法で苦しませていた。
「オ、オール……」
もう駄目だ。どうやっても今の竜一の力では勝てない。そしてオールも連れて行かれる。もうどうしようもなかった。
そう、そう思っていた。
「アイススパイク!」
「……!?」
氷のトゲがライトに襲い掛かる。ライトはいち早く反応し、来た攻撃を避ける。竜一は何が起こったのかわからなかった。
「……誰だ?」
「こんなものを使うのは、魔法戦士に決まっているでしょ?」
竜一は声が聞こえた方向を見る。そこには一つの人影があった。
袖なしの服にスパッツのような物。防具はすばやく動くために覆うところは少なくて軽い物。全体的に青を基準とした姿だった。
竜一はその人物の顔を見る。そして驚く。なぜなら、竜一が見た事のある人物だったからだ。
「かすみ……さん……?」
少女が竜一のほうへ向く。そこに居たのは間違いなく氷室かすみだった。
「ごめんね。もっと早く来れれば良かったんだけど、ちょっと事情があって遅れちゃった」
そう言ったかすみは剣を出す。竜一の使っている剣より短く、振りやすそうな剣だった。
「もう大丈夫だから」
かすみはライトと向き合う。かすみと向き合うライトもさっきまでの雰囲気とは違った。
「どうするライト?」
「アレになるにはまだ早い。隙を見て、オールを連れて逃げ出そう」
ライトはオールを左手に持ち、右手で光の刃を出す。そしてしばらく二人とも動かない。
しばらく木の葉のせせらぎしか聞こえない。そのまま時が過ぎる。
「「……!」」
二人とも同時に動き出す。そして二人の武器がぶつかり合う音がした。その動きはあまりにも早く、竜一は認識に時間がかかった。
(は、速い!)
何回も剣と剣がぶつかり合う。かと思いきや、二人の距離は離れて魔法を繰り出す。
「アイスレイ!」
「レイレイン!」
二人は互いの攻撃に当たらないようにしつつ、攻撃する。そしてまた距離を詰め、接近戦になる。
竜一は二人の戦いを唖然とした状態で見ていた。自分達が苦戦したライトと互角に戦っている事を見てそうなってしまう。
かすみは素早い剣の攻撃でできた隙を逃さす、無言で魔法弾を放つ。
「くっ!」
それはライトの左腕を狙ったものだった。ライトはつかんでいたオールを思わず放してしまう。かすみは素早い動きでオールを助ける。
「しまった!」
「この子は返してもらうわね!」
かすみはオールに様子を聞く。
「大丈夫?」
「すまねぇ……ありがとうな……」
それを見たライトは歯軋りをしてセレンに言う。
「セレン、ここは退くぞ」
「わかったわ。……運が良かったわね」
ライトとセレンは魔法で姿を消した。かすみはそれを見て安堵する。
竜一は今見た事を理解するのと、現在の体の状態に耐えるのが精一杯だった。
(なんで……かすみさんが……? それに……なんでオールを……)
竜一はだんだんと視界が霞んでくるのを感じて、意識がなくなる事に気が付いた瞬間、目の前が真っ暗になる。