第十九話 ライトとの戦い
夕食が終わり、自分の部屋で好きな事をしていた時だった。漫画を読んでいたオールが何かに気付いたかのように飛び上がる。
「どうしたの?」
「奴らが来た!」
「奴らって……ディープカオス!?」
「準備してくれ竜一!」
竜一は外に出る準備をする。オールの魔法で靴を持ってこさせ、ベランダに出る。
「ソウルイン!」
ソウルインをした竜一はベランダから飛び降りる。ソウルインをすると身体能力が上がるため、二階程度の高さなら平気で飛び降りる事ができる。
「いこう!」
(ああ!)
竜一はオールの指す方へ急いで向かう。
竜一達はある高台にいた。ここは竜一達が通う学校の生徒なら誰でも知っている場所だった。眺めも良いので人気があった。
「竜一!」
振り向くと啓太が走ってくるのが見えた。
「やっぱりそっちも感じたのか?」
「うん、そうらしいよ」
「でもよ、着いてみたのは良いけど誰もいねぇな」
「確かに……オール、ここで良いの?」
(おかしいな……さっきまではわかったんだけどな……)
その時だった。一閃の光が竜一達をめがけて飛んでくる。
「危ない!!!」
それぞれ別の場所に飛んで避ける。幸い、怪我はなかった。
(竜一上だ!!)
竜一が上を向くとそこには一人の少年ライトとセレンがいた。やはり仮面をしており、その顔をうかがう事はできない。
「よく来たな風時竜一、火口啓太」
「久しぶりね」
「なっ!? あいつ俺達の事を知っているのか!?」
「そうらしいんだ……」
以前出会った時を思い出す。前にもライトは何故か竜一の名を知っていた。
そうしているとライトは竜一たちに言う。
「今回は私が相手だ」
「えっ……!?」
竜一は驚く。今まで戦う相手は戦獣だった。それが今度は人相手と戦うのだ。
隣で聞いていた啓太はライトに向かって叫んでいた。
「まさかお前一人で戦おうって言うんじゃねえだろうな!?」
「その通りだが、何か問題か?」
「こっちは二人だぞ! 二対一で戦うなんて、ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ハンデよハンデ。あなた達がライトに勝てるわけないじゃない」
「っ!!! てめぇ! 今すぐ降りて……」
竜一はわからなかった。今起きた事を。
ヒュッと音がしたかと思うと続いて物にぶつかる音が聞こえた。振り向くと啓太は柵にぶつかっていた。
「がっ……」
「啓太!!」
竜一はライトの方へ見る。ライトは腕を前に突き出していた。それを見た瞬間、竜一は理解する。
ライトは啓太が反応できないほどの攻撃をしたのだ。しかもソウルインの状態でも反応が不可能の攻撃を。
啓太は何とか立ち上がり、ライトと向き合う。
「啓太! 大丈夫!?」
「くそ……何なんだ今の……」
するといきなりセレンが高らかに笑い出す。
「アハハ! いきなりぶっ飛ばされたの!? 笑えるわー!」
「てめぇ……」
「でもわかったでしょ? ライトはあんた達二人より、数倍強いのよ」
「くっ……」
しかしここで退くわけにはいけなかった。竜一と啓太は構えなおす。
「それでも、君に勝たなくちゃいけないんだ!」
「戦う前から負けを認めちゃ、男が廃るんだよ!」
「ふふ、馬鹿な奴ら……」
竜一はオールに呼びかける。
「いくよオール!」
(ああ! やってやろうぜ!)
二人はライトに駆けていく。
「エナジーレイ!」
「ファイアボール!」
竜一達は牽制としての攻撃をする。ライトがそれを避け、そこに竜一の剣が振るわれる。
「やぁぁぁぁぁ!!!」
「ふっ……」
しかしライトはそれを余裕でかわす。そこに今度は啓太が攻撃する。
「そこだ!」
キィン! っと、金属がぶつかるような音がする。ライトはいつの間にか手にしていた黒い剣で受け止めていた。啓太は力を入れるがまったく動かない。
「くそ!」
「どうした、その程度か?」
ライトは啓太の剣を弾く。それと同時に手に光が集まる。
「ソニックレイ!」
至近距離から放たれる攻撃を当然避ける事はできず、啓太は当たってしまう。
「ぐほ!!!」
「啓太! くっ……」
竜一はもう一度攻撃を仕掛ける。しかし竜一の攻撃は全て受け止められてしまう。
「あきらめろ。この程度じゃあ私を倒すなんて不可能だ」
「まだあきらめる訳には……!」
竜一は絶え間なく攻撃する。しかしライトがある一撃を避けた時、竜一の体制が崩れる。
「しまっ……!」
「もらった!」
ライトは隙を逃さず、剣を竜一に叩きつける。
「うわぁ!!!」
竜一は耐え切れず、地面に倒れる。竜一は以前オールが言っていた事を思い出す。
――剣に振り回されてるように見えるんだよな
(僕は、この剣を使いこなせないのか?)
「く、くそ……」
「無駄だと言っているだろう?」
ライトは倒れた竜一に追い討ちをかける為に背中を踏みつける。
「が、あぁぁぁぁぁ!!!!!」
「やめろぉぉぉ!!!」
啓太が竜一を助けようとする。しかし啓太の剣は空を切り、そのまま反撃を受ける。竜一は何とか立つがもうフラフラだった。
それからは同じ展開だった。ライトに攻撃しても避けられたり、防がれてしまう。そして竜一と啓太は徐々に戦う気力を失っていった。