第十八話 学校の出来事
学校の昼休み。竜一と啓太は廊下を歩きながらゲームの話をしていた。
「やっぱさー、アレは反則だよなー」
「確かにね。使っただけで勝てるんだもん」
そんな話をしながら竜一は教室に入ろうとする。すると何かとぶつかった。
「わっ!?」
「きゃ!!」
竜一は何とかこらえたが相手は倒れてしまい、持っていたものを落としてしまう。
「だ、大丈夫? ……あっ」
「痛っ……気をつけろ!」
相手は如月だった。相変わらずの綺麗さにまた見とれてしまう。
如月は落とした本を拾う。竜一も拾おうとするが如月に睨みつけられる。
「拾うな! 自分で拾う!」
「あ、ごめん……」
「ふん!」
如月は本を拾うとそのまま教室から出てってしまう。
「あいつはホント、気難しいな」
「うん……あれ?」
竜一はさっき如月が倒れていたところに、本が落ちているのを見つける。
「拾い損ねたのかな?」
「机の上にでも置いていけば?」
「いや、僕届けてくる」
「えっ? ちょっとおい!」
竜一は如月を追いかけていく。それを見た啓太は思わず頭をかく。
「まったく……」
「待って如月さん!」
竜一は階段を上がる如月に追いつく。如月はいかにも不機嫌な態度になる。
「なんだ、何のようだ?」
「これ、拾い忘れてたよ」
竜一が持っていた本を見た如月は、目を開いて本を奪うようにとる。竜一もさすがにこんな態度に出られると良い気分ではない。
「用はこれだけか?」
「えっと……如月さん」
「まだあるのか?」
「どうして皆にそんな態度をとるの?」
竜一は思わず聞いてしまった。如月はいっそう不機嫌になる。
「なんでそんな事を聞くんだ!?」
「えっと、だって……」
あの時の笑顔を見たから、というのは言えなかった。
「……お前にはわからない……」
「えっ?」
「……なんでもない!」
何か言ったような気がするが、否定されてしまう。
「とにかく私は行くからな!」
「あっ……」
如月は階段を上がって行ってしまう。竜一は思わず肩を落とす。
「またやっちゃったよ……」
とりあえず教室に戻る事にした。
今日の授業が終わり、啓太と帰ろうとしたときだった。
「待ちなさい啓太!!」
「げっ! なんだよかすみ!」
「なんだよじゃないわよ! アンタ今日の宿題忘れたでしょ!」
「ちょっ! 黙っててくれよ!」
「そんな訳にはいかないわ! しっかり残ってやっていきなさい!」
「じゃあ竜一、手伝って……」
「一人でやりなさい! あっ、風時君は帰って大丈夫だよ」
「わ、わかった。じゃあ啓太、頑張って」
「待ってくれー! 竜一ー!」
「逃げるな! じゃあね風時君」
「うん、じゃあね」
喚く啓太を背中に竜一は教室を出る。
啓太と氷室は幼馴染らしく、このやりとりはいつもの事だった。
(幸運を祈るよ啓太……)
そんな事を思いながら帰路に着く竜一だった。