第十二話 謎の力
フェンサーの動きは早く、また攻撃した時の破壊力がすごいため、竜一は回避一線だった。
「くっ、エナジーレイ!!」
エナジーレイを放つが、フェンサーはそれを避ける。竜一の攻撃は最初の一撃以降、当たらなくなっていた。逆にフェンサーの攻撃をもう何回か受けていた。
「だめだ、当たらない……」
疲れがたまっているのか、竜一の動きが少し鈍くなる。その瞬間にフェンサーの爪が襲い掛かる。
「やばい!!」
横飛びをし、直撃は避ける。しかしそれでもダメージはある。少しのダメージでも、積もりに積もればかなりのものだ。そのため竜一の状態はかなり悪かった。
「ガルルルル……」
(負けちゃうの? 僕……)
竜一は目の前の現実にあきらめていた。しかしそれとは別にこれを否定する思いもあった。
(いやだ、いやだよ……!)
ライトはそれを見てフェンサーに命令を下す。そしてフェンサーは止めを刺そうと牙をむき出しで竜一に飛び掛る。
(竜一!)
(いやだー!!!!)
その瞬間だった。フェンサーに思いもよらない衝撃を受ける。ライトも状況がわからない。しかし、それはすぐに解決する。フェンサーを攻撃したのは竜一だった。しかしそれは普通の竜一ではなかった。
「な、なんだこれは!?」
「この子の力……すごいことになってる!」
(竜一!? しっかりしろ!)
「うう……うあああ……!!」
竜一の雰囲気は異常だった。竜一の剣があふれるように光り、竜一はうめき声を上げていた。
「ガアァァァ!!」
フェンサーは再び攻撃を仕掛ける。しかし、フェンサーの爪は空を切る。次々と攻撃を出すが、竜一は全て避ける。
「この動き……さっきの奴の動きじゃないぞ!?」
(竜一! どうしたんだ!? 竜一!)
「……ナイ……マケタクナイ……!」
竜一はフェンサ-の攻撃を避けた瞬間に切りつける。その威力もかなりのものだった。その威力にフェンサーはよろける。
「トドメダ!!」
竜一は剣を上に向けるように構える。その輝きはいっそう強くなる。
(ま、まさか……あの技を!?)
「スマッシュブレイカー!!」
上段の構えから一気に振り下ろす剣は、とても早く、莫大な威力を誇った。
その一撃を受けたフェンサーはついに崩れ落ちる。竜一の剣の光は消え、元の状態に戻る。
「はぁ……はぁ……」
(竜一、大丈夫か?)
「えっ……僕は何をやったの?」
(竜一覚えてないのか!?)
竜一はどうやらさっきのことを覚えていなかった。竜一は横たわるフェンサーを見て呆然とした。
「これを……僕が……!?」
「……まさかこれ程とはな。キャリー!」
フェンサーは光に包まれると消えてしまった。ライトは竜一に向かって言う。
「次はこうはいかないぞ。テレポート!」
「バイバーイ」
続いてライト達の姿も消えてしまう。竜一は元の姿に戻り、その場に座り込む。
「つ、疲れた……なんだったんだこれは……」
「戦獣か……、やばいのが出てきたな」
オールはチラリと竜一のほうを見る。
(それよりやばいのは、さっきの竜一だな)
オールはあの状態の竜一について驚いていた。
(前回の戦いといい……こいつ、実はものすごい力でも秘めてるのか?)
竜一は足を投げ出すように座っている。そうとう疲れたらしい。
「家まで帰れるのか?」
「無理かも……ちょっとまって」
そんな様子の竜一を見たオールは考えるしかなかった。
(こいつは……一体……)