第十一話 戦獣との戦い
前回と同じように遅くなってすみません。
「セレン! てめぇはここで何しようとしてるんだ!」
オールがセレンに向かって叫ぶ。その様子はいつものオールじゃなかった。
「オール、あの子と知り合いなの?」
「仲間だったんだよ! でもあいつは……俺達を裏切った!」
竜一はセレンを見る。セレンは竜一の考えていたことを読み取り、深い笑みを浮かべる。
「そいつの言う通りよ竜一。私は裏切った。でもそいつらはそれくらいの罪を犯したの」
「訳のわからないことを言うな!」
オールとセレンが話し合っているところを竜一は見ていた。そのとき、ふとライトのほうを見る。仮面をしているため素顔は見えない。しかし何か冷たいものが突き刺さるのを竜一は感じていた。
(この感じ……あの子は何なんだ!?)
そんな事を考えているとライトは口を開く。
「……セレン、話はそこまでにしておくんだ」
「わかったわ、ふふ」
ライトがそういうとセレンはおとなしく下がる。それを見たライトは何かを取り出す。それは少し変わった横笛だった。
ライトはそれを構えて吹き始める。その笛から出る音はなぜか竜一を不快にさせる。
「なんだ……これ……」
竜一は思わず耳をふさぎ、膝をつく。かなりつらいようだ。
「竜一! 大丈夫か!?」
「こっちの世界の人にはちょっと合わないかもね~」
しばらくすると場の雰囲気が変わったような気がした。そして竜一にかかる殺気。
(これは一体……!?)
次の瞬間、耳から入る情報が竜一を固まらせる。
「ガァォォォォォォォォォォオオオオ!!!!」
そして目に入ってくる、声の正体の情報。
「こ、これって……」
獲物を切り裂く鋭い爪、骨すら噛み砕く牙。竜一の目の前にいるのは獲物を前にした肉食動物だった。
「な、何なんだこれ!?」
「……戦獣だ」
「戦獣!?」
「戦うためだけに作られたものだ。最初に言っておくが強いぞ」
(そんなこと言われなくてもわかるよ!)
獲物を前にした戦獣の目はとても鋭く、それだけで竜一を震えさせた。
「いけ! フェンサー!!」
「ガァァァァァァアア!!」
フェンサーは飛び、竜一に襲い掛かる。
「うわああ!!」
「シールド!」
フェンサーの爪は弾かれる。オールがとっさにシールドを出したため助かった。
「竜一! ソウルインだ!」
「う、うん!」
体勢を立て直し、竜一は叫ぶ。
「我に力を! ソウルイン!」
竜一の体が光に包まれる。光が消えると竜一は姿を変えていた。
「ほう……」
「それがあなたのソウルインね」
ライトはフェンサーに攻撃の命令をする。
「いけ、フェンサー! 奴を徹底的に倒せ!」
フェンサーは再び雄たけびを上げ、竜一に襲い掛かる。
(落ち着くんだ僕、よく見ていれば避けられるはず!)
竜一はソウルインをしたことによりいくらか冷静になっていた。フェンサーの攻撃を冷静にかわし、チャンスをうかがう。しかしフェンサーは隙を見せない。
「くっ……、だったら!」
竜一はバックステップをし、距離を取るのと同時に魔法を放つ。
「エナジーレイ!」
竜一の手から魔法の弾が放たれる。フェンサーはそれを避けるが、その時隙が生まれる。
「今だ!」
竜一は一気に距離を詰めて、フェンサーを切る。攻撃を受けたフェンサーはいったん下がり、体勢を整える。
「よし、このまま行けば……」
「それはどうかな?」
ライトがそう言うとまた横笛を取り出して吹く。その音を聞いたフェンサーは雰囲気が変わる。
「な、なんだ!?」
(竜一、気を付けろ!)
フェンサーは竜一に目を向ける。そのいっそう恐ろしくなった目に竜一は思わず身構えてしまう。それが失敗だった。身構えたため隙ができてしまい、フェンサーの攻撃を受けてしまう。
「が、はぁ……!」
攻撃を受けた竜一は壁に叩きつけられる。ソウルインしているため大した怪我ではないが、それでも少しふらつく。
(大丈夫か竜一!?)
「な、なんとか……」
フェンサーの速さがさっきとは断然違った。竜一は勝てるかどうかという不安を持つ。
(ど、どうすればいいんだ!?)
そんな様子の竜一を見たライトは口の端を笑いの形に歪めていた。