第十話 謎の子供と精霊
投稿が遅れてすみませんでした。期末試験により執筆を休止しておりました。
これからは時間もあるので、少しでも短い間隔で投稿できるよう努力します。
これからもよろしくお願いします。
とある一室に一人の子供。そして鎖につながれた何匹かの獣。しかしただの獣ではない。魔法によって作り出された戦闘用の獣、戦獣である。ライオンに近かったり、馬に近かったり等、その種類は様々だった。
その子供は、一匹の戦獣に触れる。よく懐いており、子供にほお擦りをする。そこに一人の青年が入ってくる。ライジャだった。
「そいつらの様子はどうだ?」
「大丈夫、特に異常はない」
「そうか」
ライジャは戦獣に近づく。戦獣はライジャにも懐いていた。
「……本当にこの子達を使うのか?」
「上からの命令だ。それにこいつらはその為に生まれたんだからな」
子供は戦獣を見る。そこには兵器としてではなく、一匹の動物がいるだけであった。
「……ごめんね」
子供は鎖をはずし、戦獣と共に部屋を出る。その様子を見ていたライジャは思わずつぶやいた。
「何であんな奴が……」
ライジャも外へと歩みを進める。
「……連絡は以上よ。それじゃああいさつ係りさん、お願いします」
「起立! 礼!」
「「さようなら!!」」
今日の授業が終わり、ある生徒はさっさと帰り、ある生徒は友達とおしゃべりしていた。
「竜一! 今日暇か!?」
帰る支度をしていた竜一に啓太が話しかけてきた。
「今日は何もないよ」
「じゃあ俺んち来ねえか? 新しいゲーム買ったんだよ!」
「わかった、いいよ」
「じゃあ家に帰ったらすぐ来いよ」
啓太はさっさと教室から出てった。竜一も教室を出た。
「ただいまー」
竜一は自分の部屋に向かう。部屋に入るとオールが漫画を読んでいた。
「おっかえりー」
「ただいま。またその漫画?」
「おう、これおもしれえなー!」
オールはこっちの漫画を気に入ったらしく、竜一が持っている漫画をほとんど読んでしまった。
「それより僕出かけてくるから」
「えっ? どこに?」
「啓太の家」
「啓太って誰だ?」
オールがきいてくる。竜一は教えてなかったことを思い出した。
「啓太は僕の友達だよ」
「ふーん」
「それじゃあ僕行くね。母さん達に見つからないようにね」
「わかってるって。んじゃ、いってらっさーい」
「いってきます」
漫画に夢中のオールを見て竜一は苦笑する。竜一は鞄を手に取り、出かけていった。
「……さてと」
オールは読んでいた漫画を魔法で戻すと、窓のほうに顔を向ける。
「そこにいるんだろ? 出て来いよ」
オールがそういうと、何かが姿を現す。それはオールと同じ精霊。女の子の精霊だった。
全体を黒でまとめた服装。そして長いツインテールの銀髪が特徴だった。
「わかった? まさかアンタに見つかるなんて」
「なめんな。これでも探索は自信があるんだ」
「そのようね」
オールは精霊の少女に睨みをきかせる。
「それで何のようだ? セレン」
セレンと呼ばれた精霊は意味ありげに、笑いの形に唇をゆがませていた。
「そこ! いけ! あー……」
「僕の勝ちだね」
「くっそー!!」
竜一は啓太の家でテレビゲームをしていた。ニ対ニで戦うロボットゲームだが、竜一達は一対一で対戦をしていた。
「何でお前に勝てないんだ!? このゲーム、お前も初めてだろ!?」
「だって啓太、突っ込んで来るだけなんだもん。それに僕、このタイプのゲーム持ってるし」
これまで五回対戦したが、五戦中四回は竜一が勝っていた。ちなみに残り一回は引き分けだった。
「頭を使わないとね。フフフ……」
「黒い! 笑いが黒いぞお前!!」
そんなやりとりした後、少し休憩をとる。竜一がポテトチップスを食べていると啓太が話しかけてくる。
「そういえば竜一知ってるか」
「何を?」
「最近、真夜中に豹みたいなやつが現れているらしいぜ」
「豹?」
「ああ。まぁ襲われたって言う話は聞かないし、どうせ嘘だろうけど」
「ふーん……」
そんな話をした後、啓太は再びコントローラーを手に取る。
「おーし、次は負けねえぞ!」
「じゃあ僕も本気だそうかな」
「……えっ?」
三回ほど対戦をやり(もちろん全て竜一が勝った)、他のゲームをやっている時だった。
「このゲームじゃあ啓太に勝てないよ」
「まあ格闘ゲームだったら自信あるからな」
「ハハハ」
(――竜一!)
竜一はハッとする。頭に伝わってくる声。オールの声だ。
(オール!? どうしたの!?)
(奴らが現れたんだ!)
(奴らってディープカオス!?)
(早く外に来てくれ!)
オールの声を聞いた竜一は自分の鞄を手に取る。
「ごめん、僕もう帰らなきゃ」
「えっ? もう帰るのかよ」
「ごめんよ、また今度!」
竜一は急いで玄関に向かい、啓太の家を出る。
「なんだぁ、一体……?」
啓太は唖然とした顔になった。
町は沈みかけている太陽によって赤く染まっている。そんな町の中、一人の少年と小さな精霊が走っていた。
「オール! こっちでいいの!?」
「ああ、気配を感じる!」
竜一達は目標まで全力で走る。その時、突然竜一はおかしな雰囲気を感じた。
(なんだこの変な感じ!?)
おかしな感じにオールも何か気付いたらしい。
「たぶん前と同じだ。結界みたいな魔法を使ってるんだろう」
「じゃあこのあたり!?」
竜一は立ち止まって周りを見渡す。
「ここは……」
竜一がいる場所はとある団地だった。数十もの団地があり、かなり大きかった。しかし、現在は老朽化が進み、改修や取り壊し等でほとんど人がいなかった。
「ここなの?」
「ああ、めっちゃ感じるんだ。奴らの気配が」
しかし周りを見渡しても誰もいない。その時だった。目の前に何かが現れたのが。
「えっ……!」
現れた者。それは竜一と同じぐらいの子供だった。
黒を中心にまとめられた、ファンタジーの王子のような服装。腰までありそうな長い黒髪は一つ結びをしており、顔には仮面をしていた。
その子供は竜一に向かって言う。
「……風時竜一だな」
「っ!? 何で僕の名前を!?」
「ライトは何でも知ってるからよ」
新しい声。竜一は声の主を探すが見つからない。
「ここよ、ここ」
ライトの方を見る。ライトの背後から精霊が現れる。
「ちょっと驚いたかしら」
「女の子の精霊……!?」
その精霊は竜一の顔まで近づく。
「あたしの名前はセレンよ。そしてあっちはライト。よろしくね、竜一」
そういうとセレンはライトのそばに戻る。オールはセレンに向かって言う。
「てめぇ、ここで何しようというんだ!」
オールは敵意むき出しで言っている。竜一はこの二人に何があったのかと思った。
竜一とライト。ここでの出会いが、運命を大きく動かす。