第九話 フルートを吹く少女
タイトルがいつもひねりが無いです……
ライジャと戦ってから数日後、竜一の周りで変わったことは特に無かった。
今竜一は学校に向かっていた。しかし今は午後三時ごろ。なぜ今頃に学校に向かっているのかというと、何のことは無い。宿題に使う教科書を忘れただけだった。
(ついてないなぁ……)
早く取りに行こうと、竜一は足を速める。
学校に着いた竜一は自分の教室に行き、机の中を調べる。
「えーと……、あったあった」
教科書は机の中にあった。竜一は見つけたことに安堵しながら鞄の中に入れる。その時だった。
(……んっ? 何か感じる……)
それは途切れつつだが、心に響くような音だった。
竜一はとりあえず教室に出てみる。ほんの少しだか、さっきよりは感じることができた。
「こっちから?」
とりあえず竜一は向かってみることにした。
学校の端っこから端っこまで(竜一の教室はかなり端っこのほうにある)行き、階段を降りる。そして竜一はたどり着く。
「ここ……音楽室?」
竜一は感じたものの源の前にいた。ここまで来ると感じるというより聞こえるというほうが正しかった。
四階音楽室から音が漏れている。それは竜一も聞いたことがあった。
(フルートの音だ……)
かつてフルートを吹いていた人物を思い出しそうになるが、竜一はそれを抑えた。思い出せばつらい気持ちになるからだ。
(……それより誰が吹いているんだろう)
扉を少しだけ開けてみる。音がはっきりと聞こえる。そして竜一は思わず固まってしまった。
そこにいたのは竜一が思いを寄せている少女、如月だった。彼女がフルートを吹いていたのだ。
彼女が吹くフルートから出る音はとても綺麗で心に伝わってくる。さらにフルートを吹いている彼女もまた綺麗だった。
「綺麗だ……」
竜一は思わずつぶやく。それを聞いてしまった如月は吹くのをやめ、驚きながら竜一のほうに振り向く。
「あ……」
「……なんだお前」
「いや、その……フルートの音が聞こえたから……なんだろうと……」
その綺麗な外見に対して似合わない、強気の口調。如月は明らかに不機嫌な顔で竜一をにらんでいた。
「悪いけど出てってくれるか。練習に集中したい」
「あ、うん、ごめん……。でもうまいね。いい音色だ」
「当たり前だ。もう五年ぐらいやっているからな」
「五年!? それはすごいね!」
「……大きな声を出すな。うるさい」
「ごめんなさい……」
竜一は頭を落とし、落ち込む。竜一はふとした疑問が浮かぶ。
「ここでいつも練習してるの?」
「……まあそうだな。先生に言って使わせてもらってる」
「へぇ……」
先生に言って場所を借りるなど、竜一には考えられないことだった。
(如月さんはすごいなぁ)
如月は答えたあともう一度竜一をにらんで言う。
「もういいだろ? 早く出てってくれ」
「うん……」
(でも少し怖いな……)
竜一が出ようとする。その時如月がハッとして竜一に聞く。
「ちょっと待て、どうしてここに来た?」
「えっ? いやたまたま教室に忘れ物をしたから取りに来たんだ。そしたらなんとなくここに……」
「……」
「あれ? 僕なに言って……?」
「……わかった、悪かった呼び止めて」
「いやそんな。それじゃあね」
「……」
如月の顔を見ると何かを考えているような顔だった。竜一は少し気にしたがそのまま帰ることにした。
如月は扉を見る。竜一がさっきまでいたところを見る。
竜一が言ったことは普通はおかしいことだった。音楽室と五年二組の教室はかなり離れていた。さらに音楽室は防音対策がしてある。つまり、窓など開けない限り、普通は音には気付かないはずなのだ。
「あいつは……一体……?」
如月は自分以外、誰もいない音楽室でつぶやいた。