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どうしたものか…。
雷鳴が響く古城。
密室で不可解な死を遂げた城主。
二十年間誰一人として解くことが出来ず迷宮入りとなったその謎を、一人の男が答へと導く―――。
「っていう話を書きたいんだけどな…。」
独りで勝手に騒いでいた男がペンを放り投げた。
「ワガママ言わないで早く原稿仕上げてください、赤月先生。」
赤月先生と呼ばれた男は黙って俯いた。
この男――赤月銀太は一介の高校生である。
今は自らが所属する文芸部の原稿を書いているのだが…。
「ネタが浮かばねーんだよ。」
赤月の返答を受けて呆れた表情を浮かべているのは日田明である。
彼は赤月の同級生で、同じく文芸部である。
「締め切りは待ってくれない…。適当なネタを見つけてさっさと書けって。」
「いや…まだ締め切りまで時間あるし――。」
「そんなこと言ってるうちに、締め切りはじわじわと迫ってきて――。」
「やめろおぉおぉおおぉお!」
頭を抱えてのたうち回る赤月を他所に、日田は持ってきたお茶をのんびりと啜った。