七夕
夏の七夜の天の川が見える夜空に、私は願い事はスマホに短冊の代わりに願い事を書いた。
「いつか、大切な人と恋人になれますように」……と。
織姫と彦星のように、私には結ばれたいけど結ばれない好きな人が居る。
「ものすごく近いようで、ものすごく遠い距離」……まさに、織姫と彦星を隔てる天の川のようなモノが私と「その人」の間にある。
長いこと……同じ家、同じ環境で暮らしていて、周りからも理解されることのない恋心なのは分かっている。
本人にも絶対に伝えることも出来ないような、私の心の中にある気持ち。
初恋は、「その人」が生まれた時から……だったのかもしれない。"母親"の胸の中で抱かれている「その人」に、幼い私は恋をしたのかもしれない。
3歳下の私の好きな人。
母親から「貴女は今日からお姉ちゃんだから」って言われた時、その時は何とも思わなかったけど……今の年齢、17歳になった私の感情は、とても複雑だった。
「姉」……そう。私の好きな人は「実の弟」。
同じ両親から、同じ母親のお腹の中から生まれた、初恋の人。
物凄く近い距離に居るように見えて、実は物凄く遠い距離に居る……その存在は私の好きな人。
ずっと一途に思っていても叶うことはない。私と「その人」は、「血」という赤い星の天の川によって隔てられている。
……そんな私が生まれた日が、「七夕」というのも、神様のイタズラなのかと思いたくなる。「血」が繋がっていなければ、ちゃんと恋愛が出来たかもしれない。でも、「血」が繋がっているからこそ、「その人」と知ることが出来た、「その人」に恋をすることが出来た。
そんな弟の誕生日はバレンタイン。
甘いチョコレートを渡すことには慣れているけど、私の甘酸っぱい「気持ち」を渡すことは未だに出来ていない。
「ありがとう!"姉ちゃん"」……「姉ちゃん」という呼び方が、私の気持ちを惑わせる。その度に、私が何度も何度も「誰かに伝えてはいけない気持ち」ということを認識させられる。
家に飾られた竹の短冊には、別の願い事を書いた。
「弟が幸せになれますように」……と。その幸せになれる理由は、「姉」である「私」ではないんだろうなということは理解している。
遠く離れた一等星よりも、私にとっては液晶画面の光の方が眩しかった。ただ、その光こそが、私の心の影を星の光よりも暗くしていく。
私は今……ベランダに出て、竹に飾られた短冊を脇目に、天の川を横切るようにして通り過ぎた流れる光を見た。
何故だろう、私の頬にも、悲しみに満ちた流れる光がゆっくりと伝う。
願い事は、した。
それは勿論……短冊に飾られた「願い」の方だった。
私が生まれた日の七夜の願い星。
「姉」という織姫と、「弟」という彦星を隔てる、「血」という名の天の川。
その現実が、私の頬にも、今日も変わらず、光る川を作る。




