キャラクリ
「ようこそ、グレイヴクリエイトオンラインへ。新規ユーザー様ですね」
ゲーム起動と同時に一人の女性が眼前に現れる。
……こいつはAI積んだNPCだな?
見た目は普通のワンピース姿だが、まるで複数の人間の中央値みたいな印象に残らない顔をしている。
「そうだ」
「ではまずコースを選択してください」
そういわれて出てきたコースとやらを確認する。
終末医療コース、つまりはもう残りの寿命が短く苦痛緩和のためのもの。
続けて遺族コース、終末医療患者との面会や死後患者たちが残した物のためにログインするもの。
最後に一般コース、文字通り部外者や見物人、普通にゲームを遊ぶための物と書かれている。
「遺族コース、№582989号」
三佐は一般コースを選択するという事になっていたので私は遺族コースだ。
ちなみに終末医療コースは外部協力者がやるという話になっているが……自力で心臓を止めたり再起動させたり、脳波までも止めたりできるという輩がいるというのは眉唾だな。
今回はその外部協力者の遺族として参加する事になっている。
「確認しました。ではプランの選択をお願いします」
「プラン?」
「はい、このゲームは遺産相続などもオンライン上でできるようになっております。また一般プレイヤーの方はゲーム内で手に入れた通貨を0.01%換算で、遺族コースの方はご遺族の方からの遺産を100%の形で現金化する事が出来ます。その際に月額制、無料制、初期投資永年無料の三つがあります」
「違いは?」
「無料会員様は基本的に通貨の現金化ができません。ただし課金という形で現実の通貨をゲーム内通貨に変換する事は可能です。月額制、ならびに初期投資プランからは換金が可能となります」
「基本的にはってことは、例えば遺族コースの私は無料プランでも遺産を現金化する事ができると」
「その通りです。ただしそれ以外は適用されず、普通のゲームとしてお楽しみいただくことしかできません」
「初期投資はいくらからだ」
「10万円からです。月額制、無料制から切り替える事も可能となっています。中にはゲーム内で手に入れた通貨を利用して支払いをする方もいますのでお気軽にプランの変更は行えますが、投資という形で行っていただいた以上返金は不可能です」
「そうか……その投資額による違いは?」
「ゲーム開始時の所持金の違いだけです」
「少し考えさせてくれ」
通信を繋いだままにして正解だった。
今回の任務にどれくらいの予算が割り当てられているかは知らないが、金の話を上にしないわけにはいかない。
特に今回は調査目的だ。
「課長はなんと言っている」
「5000万までなら一佐の裁量に任せると。それ以上は課長が判断するそうです」
「そうか……三佐、そちらは月額制でやってみてくれ。それともう一人、尉官でいいから無料制のチェック、私は最低額の10万で進めてみる」
「了解しました。ただこちらでモニターできる人数にも限界がありますので……」
「それを考えるのは課長の仕事だ。現場判断で増員の必要性が出てきたから急遽引っ張り出す。そいつは遅れての参加でもいいから三人目を頼む」
「わかりました。この通信は課長も聞いていますので数日以内には手配されると思います」
「という事で予算が決まった。投資プランで10万円払おう」
「ありがとうございます。支払方法は一括でよろしいですか」
「構わない」
どうせ国家の金が民間に流れるだけだ。
税金で巻き上げた分を国営企業に適切な形で支払って、血液のように循環させるだけのこと。
どうせ10万程度なら次の納税で数百数千倍で帰ってくるだろう。
……まぁそれまで企業運営が続いていた羅の話だが。
「それではキャラメイクに入ります」
「既存のデータは使えるかな。外観データだけで構わない」
「もちろんです。外観データをインストール中……はい、確認が取れました。キャラクターネームはクレナイ様でよろしいですか」
「あぁ、後は何か設定とかあるか」
「種族設定とパートナー設定があります」
「パートナー?」
種族はよくあるが、そんな設定は聞いたことがない。
このゲーム特有の物か?
「グレイヴクリエイトオンラインは終末医療のために造られたゲームです。その際孤独感を和らげるため様々なパートナーを用意し、相棒として共に冒険をしたり、自らの墓をダンジョンとして作る事が可能です」
「なるほど、だからグレイヴクリエイトってことか」
「はい、今人気なパートナーはペット型の犬や猫、少し大型で馬。一部農産業経験者は牛を選ぶこともあります。また人間を選びご家族の情報をインストールされる方もいます。それ以外ですとドラゴンなどは人気ですが、設定上好感度が上がりにくいものとなっています」
「なら……そうだな、不人気なパートナーはなんだ?」
逆張りというのもあるけど、そういうメジャーなところは三佐か三人目、後は外部協力者にでも任せればいい。
それに不人気というのは時に思わぬものを掘り起こしてくれる。
未知の鉱脈といってもいいからな。
「アンデッド系は不人気が多いですが吸血鬼は比較的人気です。スケルトンやゾンビは不人気筆頭ですね」
「……だろうなぁ」
「ですが一部の方々は墓所に配置するならばと好んで選択しています」
……まぁ、それはそれで気持ちはわからんでもない。
ピラミッドみたいな墓を作れるとなれば私だって似たような事は考えると思う。
ただ……うん、腐乱死体や白骨死体を連れ歩く趣味は無いし、吸血鬼にはいい思い出がない。
「他には」
「スライムが不人気ですね。戦闘能力が低く知性も同様、また好感度という概念こそありますが知性が低いので仲良くなるのは難しいでしょう」
「じゃあそれで頼む」
「かしこまりました。貴女の種族はどうなさいますか」
「人間でいい。プレーンな方がやりやすいからな。それとRFBをオンにしてくれ」
「警告、RFBを起動すると痛覚も現実のものと同期されます。またステータスは数値化されず、HPの概念も消え死亡相当のダメージを受けたと判断された場合のみリスポーンが発生します。本当によろしいですか」
「構わない」
RFB、リアルフィードバックシステム。
もともとは格闘家とかスポーツ選手のためのシステムで、VRでも現実と同じ能力しか発揮できないようにするための物だ。
最初に実装されたゲームでは糞仕様として悪名高いものだったが、後々ほとんどのゲームで使えるようになったことから一部愛好家からは好まれている。
私自身似たような物だが……まぁこの場合は信条というべきか?
手の届かない物には手を出さない、無い袖は振らないと公安に捕まってから決めた物だ。
苦労はあるけれど、それはそれで面白いし痛みには慣れているからな。
「では、よい探索をお祈りしております」
女性が一歩横に逸れて、そしてその背後に扉が現れる。
ドアノブに手をかけて、ゲームの世界へと舞い降りる準備ができた。
……本当に何故かわからないが、嫌な予感がずっと付きまとうんだよな。
後でバイタルサイン見せてもらおう。




