変態!
さて、やる事が無くなった。
プレイヤーメイドがどんなもんか見るつもりだったが、なるほど運営が用意した戦闘オンリーというわけでもないという情報が手に入ったのは僥倖。
今後有りうるのは戦闘と謎解きの同時進行や、トラップ多めのダンジョンと言った所だろう。
その上で必要な物を考えると……10フィート棒が適切だろう。
罠に対して長い棒で挑むのは古今東西あらゆるゲームで変わらない。
その延長線上に銃という射撃装備があるだけで、地雷探知機を持たずモップで地雷原を抜けたという実話も残っているくらいだ。
故に長い棒が欲しい、可能ならば物理攻撃ができるぐらい頑丈な物がいい。
そういうものを探すとき、MMOという媒体において使われるのは3種類だ。
一つは生産職のプレイヤーによるオーダーメイド。
VR化した事で装備の自由度が変わり、オンリーワンの武器を持ち歩く人も多くなったため生産職メインのプレイヤーは一番美味しい空気を吸っているともいえる。
次にマーケット、生産職プレイヤーや戦闘職だけどいらない装備を手に入れたから高値で売ろうと考えた奴らによるオークションのようなものだ。
最低額と即決落札価格を記載しておくことでマーケットによる購入が行える。
このゲームではオークション形式ではなく、即決落札価格しか乗っていないので実質早い者勝ちだ。
そして自分で用意する。
これはダンジョンに潜ったり、そこら辺を探索したり、それこそ作ったりと方法は様々だが自前で用意する分費用は掛からない。
代わりに専門じゃないから性能が低かったり、ドロップ狙いで行くとマラソンと呼ばれる周回に引きずり込まれる事になるが。
今回は生産職かマーケットが無難だろう。
「とはいえ……マーケットにはそれらしいもんは無いな」
長物武器や棒と言ったカテゴリ、キーワードで調べても出てくるのは本当にただの木の棒だったり、棍と呼ばれる武器でしかない。
あれだ、孫悟空の如意棒みたいな奴。
突けば槍、引けば薙刀、振れば棒ととにかく手幅の多い武器ではあるのだが今回求めているのはそれじゃない。
いや、如意棒があるなら欲しいけどさ。
「となると生産職か……知り合いでもいればいいんだがブランクあるしなぁ。あいつら偏食家か雑食しかいなかったからどうだろう」
知り合いのVRMMOプレイヤーは偏食か雑食だったので探せば見つかるかもしれない。
けれど私自身が引退して長いので今も遊んでいるかは不明だ。
そもそも生きているのか?
(今からリスト送るからそいつらの中にこのゲームをアクティブプレイしている奴がいるか調べてくれ)
外で待機している連中に知り合いの情報を送る。
ゲーム内の物じゃなく、ちょっとした時に調べたリアル情報だ。
(えーと、この桜庭って人がアクティブですね。毎日ログインしています。今もログイン中みたいです)
(そうか、助かる)
確かな返事にガッツポーズを取りそうになったが、桜庭か……。
チェリーブロッサムのプレイヤーネームを使い倒し、スリングショットや布面積がほとんどないビキニを愛用する変態紳士だ。
そんな公序良俗に反するような装備を公式が出すはずもなく、当然のようにプレイヤーメイドで自作しているド変態だが性能は一級品。
あらゆるゲームで「装備の素材を得るために最前線を突っ走る変態」として名高い男だ。
ちなみにウォータードラゴンの逆鱗ビキニというのを作っていたが、ほぼ全ての魔法攻撃を無効化するという破格の性能に対して「ただし鱗で隠された部位に限る」という……つまりは股間か乳首で魔法を受け止めろという制限を完ぺきにこなしていた。
プレイヤースキルもド変態である。
そんな奴なら間違いなく目立つのだが、公式やら運営的にもその手の格好で街中を歩くのはNG設定としてNPCの警邏によって連行されてしまうので、裏路地などでひっそり露店を開いていることが多い。
探す範囲が狭まって助かるというものだ。
「さて、見つけて殴ってから交渉だな」
(殴るの前提なのはどうなんですか?)
(私本人と証明するためにも必要なことだ。それにあいつ、重度のマゾヒストでもあるから悦ぶと思うぞ。あまりいい気分じゃないけどな)
そう、最強の生産職は最強の変態でもあるのだ。
そんな奴が師匠と慕う上位者がいる事が信じがたいんだがなぁ……。




