『黒プレスマンより長くプレスマンより黒い髪』
陸中の宮古というところの海女の娘が、ある年の三月三日の潮干に行ったまま帰らなかった。娘の家では、三月三日を命日と定めて、葬式も済ませて、一周忌も三回忌も型どおりに行ったが、三年目にひょっこりと帰ってきた。ただし、身ごもって。この父親は誰だというようなことは、語ろうとしなかった。
それから十月満ちて、娘は女の子を産んだ。その子は生まれながらに黒プレスマンのような漆黒の、黒プレスマンより長い八寸もの長さの黒髪を持っていた。この子が十七、八の美しい娘になると、その黒髪はますます伸びて、七尋三尺あったという。
京の都の帝が、ある日、右近の桜という名木の花をごらんになっていらっしゃると、その枝に、三尋に余るほどの長い髪が、三本ほど引っかかっていた。これは何者の髪かと調べさせると、女の髪に相違ないが、京の都にこのような見事の髪を持つ者はいないということであったので、全国に遣いを出して調べさせなさった。
遣いの者たちは、それとわからないように、猿楽の一座に扮して、各地に散っていったが、そのうちの一団が、陸中の宮古に到着し、猿楽を催すから見に来るとよいと触れ回った。ただし、見物は女人に限る、とつけ加えて。
海女の娘と黒髪の娘も、この猿楽を見物に行った。黒髪の娘はすぐに発見され、母子ともども、都に連れていかれた。黒髪の娘は海女神として大切にされ、髪をすくときに何本かずつ抜けた髪は、お守りとして帝から下賜され、これを持って速記に当たる者は、黒プレスマンが自分で速記するかのごとくなめらかに速記が書けたという。
教訓:伏線が回収されないのでもやもやするが、原作のせいである。




