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ねこキャン 異世界転生がネコ様達により、いつのまにかキャンセルされていた件

リアル異世界転生キャンセル 2 ――「大事な四桁の記憶&皆様、ありがとうございます!」

※ポイント、評価いただいて誠にありがとうございます!

日間でランクインしていたようで驚きました。

読んでいただいて応援いただいた皆様、本当にありがとうございます。

生きているといいことがあるものですね


皆様も、ご安全に!



「これから、十数分かかりますがまっていられますか?」


人生初の110番。

青空の下、親切な警察官の方の声が聞こえる。

現場に到着するまで、すこし時間が掛かるけれど大丈夫かという問い掛けだった。

――親切だなあ、…。

このくらいで呼んでいいのか、迷ったのだけれど。

何か申し訳ない気がしながら、電話を一度切り、なんとなく渡るはずだった横断歩道の写真をいまさらとって、石垣にもたれる。

 青空に白い雲、緑豊かな樹々。

何故か、右肩にさげていた荷物が重くてもてなくなっていて、地面において空を見あげた。

 街を歩いている人達は、普通にいそいでいたり、車もそれまでとまったくかわらずに走っていて、なんだか不思議だった。

 右足首が痛いが、まてないというほどではない。

 エアポケットに落ちたような気分で、先程までお昼を公園でとんびを何とか回避して食べられないかな、というのが唯一の問題だったときとはえらい違いだとおもいながら。警察の人が来るのを見逃して手間をかけたらいけないな、と多分、あちらが警察署の方、という方角をみる。

 事故の際は、そのときは痛くなくて後から痛みがくる、と。

 よくいわれているけれど、そのときの自分も痛みをあまり感じていなかったのだというのは、後から本当にわかるのだが。

「あ、こんにちわ。お手数をお掛けしまして、…―――」

いつもみる警察官の紺色を着た警官もいるけれど、服装が水色系で身体を護るものを沢山つけている――多分、交通課の制服なのだろう――が複数人やってきて、おどろきながら礼をしてご足労をかけたことを謝る。

 見逃して、すれ違ったりしなくてよかった。

それにしても、随分沢山の人達が来られた気がする。いいのだろうか?

とりあえず生きているし、痛みは徐々に感じてはきているのだが、動けるし話せる。四肢が飛び散っているわけでもないし、ぐちゃぐちゃになってそこら中が掃除しなければならない状態でもない。

 通報して、申し訳なかったかな、…。

2人位がくるとばかりおもっていたら、画板を持ったひとや、何かを確認している人、その他とおもったより多くの人がきたことに戸惑いながら、聞かれたことに応えていく。

 青信号で横断歩道を公園に向かって渡っていたこと。

 軽く接触して、たたらを踏んで何とか転ばずに堪えたこと。

 それで、右足首が痛くなったが、そのまま車道に残るのは危険だと考えてもといた歩道へと下がったこと。

 そして、左脇に停めていた車両があったので、停めにくいからもう少し先で相手の車が止まるとおもっていたら。

 ―――会釈をして、笑いながら手を振っていってしまったこと。

 うん、茫然とみおくっていたとおもう。

「…それで、ナンバーなんですが」

おもわず、茫然と見送ってしまって。スマホがあるのに撮影もできないまま見送ったのだが。

 良く晴れた良い天気で、視界良好。

 視力はあまりよくないのだが、まるでスローモーションでみるように、真ん中の車線を去って行く車の背を見送ってしまっていた。

 こまかい処はわからないのだが。

「××―××、ではないかと、…」

正直、自信はない。

あの何とかとか、4桁以外の処はまったくみえなかった。

それで大丈夫かどうかはわからないのだが、伝えてみる。

車の色は白で、軽自動車。

運転手の顔は真正面にみえたので、性別と年齢がどのくらいだったかをきかれて答える。年齢は正直全然自信がなかった。

状況説明の後は、繰り返し車種や色などを聞かれる。

「えーと、…色は白で軽自動車、…。小型で、――○○○に似た形でした」

「○○○ですか?」

「はい、えーと、…似てたけど自信はないです、…」

繰り返し、別の角度から聞かれる。質問する人も、画板を背から前にさげて、そこに何か書きながらきくひとだったり、車道に出て何か確認していた人からだったりする。

角度をかえて聞かれていると、自分の記憶が曖昧なことに気付く。

「ええと、…車の上の色ですか?それはおぼえてないです」

車体が白で新しそうな車だったことはわかる。でも、ツートンだったかといわれると、屋根の色をまったくおぼえていないことに気がつく。

それに、ナンバーの数字を覚えているのに(正しいかどうかは別として)、プレートの色を憶えていないのだ。

「…白っぽかった気はしますが、…記憶してませんね」

自分でおどろく。記憶ってこんなに不確かなのか。

 軽自動車はナンバープレートが基本黄色なのだが、白っぽかった気がするのだ。最近は、白地に近い形やご当地ナンバーとかで黄色でない方が選択できるようになっていて、軽自動車でも白地のナンバープレートも多い。

「軽だったのは確か?」

「はい、だと思います。小型で、―――」

何というか、軽は普通車と違って大きさの他にも素材の違いというか、何ともいえない質感の違いがある気がする。ともあれ、小型車で○○○に似ている形で白色。

 後から、○○○ではないが、良く似た形の車種で軽自動車だったことがわかるのだが。

「これとは違う?」

スマホで検索した画面で車種をみせてくれて聞かれるが、首を振る。

「それとは違います」

「そうか、これとかこれは?」

はっきりと違う型だとわかる車種には違うとこたえ、防犯カメラがないか、近くのビルに入っていく警察の方をみながら、大変だな、とおもう。

 通報があったら調べないといけないのだろうし、申し訳なかったな、…。

 段々と痛くなってきて、石垣にもたれて答えていると、一人が――すごくごつい服を着ていた――心配そうに話かけてくれる。

「家まで送りましょうか?」

「あ、ありがとうございます。―――でも、会社に戻らないといけないので、…」

「そうですか、――」

残念そうに警察の方がいって、申し訳ないなと頭をさげる。

 後で考えれば、会社には電話連絡をして送ってもらえば無理をしないですんだのだが。―――そのときは頭がまわらず、後で会社に何とか戻った後、歩くのがしんどくてタクシーを呼ぶという人生初の経験をすることになる。―――それはともかく。

 何か色々調べたり、何だりしてくだっている警察の方達が申し訳なくて、あやまったり、御礼をいいながら聞かれたことにこたえていく。

 それから、名刺大の紙片に、担当の警察官の名前と、連絡先になる電話番号が印刷されたものをいただいた。

「ありがとうございます」

「何かわかったら連絡をいれますから」

携帯は仕事中は留守電になっているので、お名前を吹き込んでいただければ出られないときは折り返しますので、とお伝えして、あらためて御礼をした。

「ありがとうございます。お手数をお掛けして」

「いえいえ、気をつけて帰ってくださいね」

「…――ありがとうございます」

何だか、本当にありがたいな、とおもった。

お手間をかけてしまって申し訳ないけど、本当にありがたい。

警察の方達がまだすこし残って何かしていかれるようなので、ゆっくりと歩いて立ち去る。

 歩きながら、おもっていた。

 ゆっくり、なんだか右手に荷物が持ちづらいので左に、コートと一緒に抱えながら。

 ――うん、足首、いたいな。

でも、歩けているし、呼吸もできているし。

目も見えていて、耳も聞こえている。少なくとも、急がなければこうして歩ける。

すでに何だか普段と同じようには歩けていないことには気付いていたけれど。

 ――会社に戻って、早退の許可もらわないと。

後から考えれば、そこで無理をせずにすでにタクシー呼んで会社には電話連絡でよかったんじゃないでしょうか?と。

 自分以外にだったら、そんな無理して戻らずに、はやく医者にいって!といっていただろうけど。

 全然、何故かそのときは思いつきもせずに、昼休み時間ぎりぎりには戻れるかも、とかおもいつつ歩いていたのである。




 人生で初めて、これだけタクシーに続けて乗った…。


 タクシーを電話して呼び、こんな近距離で乗るとは、しかも連続。

 人生で、こんな贅沢をすることがあるとは思ってもいなかった。

 本当に、何だかとても贅沢な体験である。


「タクシーお願いします、…」

会社にぎりぎり昼休み終了までに辿り着き、――ゆっくりしか歩けなかったせいでかなりぎりぎりだった、――――無事早退を申請して退社。

小さな会社で路地奥に車が入れない為に、タクシーを呼ぶが近くの公園のベンチで待つことにして。

 青空に白い雲。

 ベンチに座って公園で空を見上げていると日常感がない。

 ―――うーんと、…。

会社には普段歩いて通勤している。近いのだ、が。

すでに何故か普段持ち歩いている荷物が重く、歩ける気がしなかった。坂を登り、自宅から整形外科まで。無理な気がする。

 このとき、まだ痛みをあまり感じてはいなかったのだが、おそらく事故の後、興奮して痛みを感じない状態でいたのだろうとおもう。

「あ、タクシー来た、…。すみません、こんな近いのに来てもらって」

ありがとうございます、と何とか荷物をいれて乗車して。

普段乗り付けないタクシーを、しかも呼び出して来てもらうとか何かすごく悪い気持ちになる。

 ―――こんな贅沢をしていいのだろうか、…。

「今日はありがとうございます。タクシーに乗るなんて、こんな贅沢は久し振りです。…実は、交通事故にあってしまって」

手持ちぶさたというか間がもたないというか。

ついつい、タクシーの運転手さんに御礼をいってからつい直近の話題――つまり、タクシーに乗ることになった原因を持ち出してみる。

「ええっ、そんなことがあったんですか!ひき逃げじゃないですか、それ!」

運転手さんのノリがいい。流石、お客様を乗せて常に働いておられるだけのことはあるとおもう。

 事故の経緯とか、まだ相手がみつかっていないとかいう話をしていると、親切に色々アドバイスをしてくれた。

「交通事故なら、大きな病院行った方がいいですよー、交通事故対応とか、してくれるかどうかとかありますからねー、この辺りですと、○○病院かなー、行く先どうします?」

「あー、…そういうのあるんですか?」

「おれも事故にあったことありましてねー。色々ありましたけど、やっぱり最初きちんと調べた方がいいですよ」

「ありがとうございます」

何だか色々とアドバイスをくれる。

事故になったら、弁護士さんに頼んだ方がいいとか、住んでいる処がその辺りなら、此処の弁護士さんが親切でいいですよ、とまで教えてくれた。

「…本当にありがとうございます」

「じゃ、気をつけてね!」

「あ、ありがとうございます。たすかりました!」

小さなクリニックの駐車場でおろしてもらうと、御礼をいって見送った。

運転手さんが勧めてくれた大きな病院とも迷ったが、一応整形を併設している小さなクリニックだ。

「さてと」

クリニックへゆっくりあるく。

 そして、衝撃を受けることになる。

「…交通事故ですか?うちは対応してないので――」

「え?」

しまった。…

大事にしたくない、というか。

このときはまだ、怪我の程度を軽くみていたかったのだろう。いやほんと、重傷で動けないとかではないから、軽いのには違いないと思っていたのだが。

 後に、検査してびっくりすることになるのを、このときはまだしらない。

「わ、わかりました、…―――」

しまった、タクシーの運転手さんのいわれた通りに勧めてもらった病院にいけばよかった、とか。そして、道路をみるが普段からあまりタクシーなど通らない道。

 ―――ばかすぎる、…自分、…。

後から思えば、要はすでに冷静で普段と同じつもりで全然そうではなかったのだ。

当り前である。事故のショックというのは、そもそも人から冷静さを奪うのだ。

 ―――あるくしかない、…。

自宅は幸いすぐ近くである。普段ならさくさくいけるのが、ゆったりのんびりのろのろ歩行になろうとも、そして荷物がとんでもなく重く感じるとしてもである。

 ―――まだ、なんとか、―――…家で改めて整形外科を検索して、…しかし、この近くに整形外科なんてあったろうか…?

実をいうと、これまで整形外科というものにあまりお近づきになったことがない。

 親の介護をしていたときには、一日複数回、整形もある総合病院につきそっていたこともあるのだが。

 ――あの病院は、…受付時間おわってるなあ、…。

自分が診て貰ったことは殆どない。しかし、なじみといえばなじみの行きなれた総合病院は、午前中で受付終了である。

 つんだ。

 ―――病院に心当たりなんてない、…。

 花粉症で毎年お世話になっている病院ではだめだろうか。…

 花粉症と交通事故。

 いくら、日本の医師制度が標榜すれば何科でも診療行為を行えるとはいえ、花粉症で診て貰っている先生に事故で行っても受付けてはもらえないだろう。

「あ、そうだ。…交通事故対応とかが出来るか電話で確認してからいかないと、…」

タクシーの運転手さんのマメ知識。

 ――もっと尊重して、大事にしたくないとか思わずにいけばよかったな。

何とか家に辿り着いてから、重い荷物をおいて検索した整形外科に電話する。

「…交通事故対応というのは、できますか?」

 知識、これ大事。

 二件ほどかけて断られ、――勧めてもらった大きな病院は既に受付時間外で、そこを押してまでいくほどではない、とこのときは思っていた―――何とか、一軒受付けて貰える整形外科をみつける。

 ―――無駄にタクシーに乗ってしまってる、…。

最初から、こうして調べていれば一度で済んでいたのである。

 だがしかし。

 知識がないというのは、対応も思いつかないということなんだな、としみじみしつつ。

 荷物を最低限にして――というか、何も手に持たずに済むように身につけて。

「タクシーお願いします」

 何と、人生初。

 タクシーを自宅前まで呼んで来て貰うという大変贅沢な体験をすることになるのだった。

 そして、またタクシーの運転手さんから、交通事故に関するマメ知識を得たりすることになるのである。

 タクシーの運転手さん達、本当にありがとうございました。



 そして。


 い、痛いっ、…?!

 何故、どうしてっ?……!?


 いま思えばまぬけな話である。

 交通事故の後は、すぐに痛みを感じずにしばらく経ってから――下手をすると一両日後、つまり、例えば一晩寝た後に首が回らなくなっていた、とかいうことが起きたりするのだ。

 他人には何度もいったような気がする。

 注意したりしたこともあるのだ。

 受傷直後は興奮状態で一見どこも怪我しているようにみえなくて、何なら普通に歩いて受け答えもしていたとしても。

 翌日、話したことを憶えていなかったり、実は骨折していました、なんてことはよくあることなのだ。

 いまも憶えているのは、昔、ある交差点でのことだ。

 交差点を滑ってきたバイク――単体で一人乗り――が自損事故を起こした現場に居合わせたことがある。見事に滑って、単独事故で。

 それはともかくとして、身体の片側――地面に接地した側だ――と、頭を思い切りぶつけて滑っていくのを驚いてみていたが。

 普段、かなり交通量があるスクランブル交差点で、他に巻き込まれた車も人もいなかったのは幸いだったろう。それはともかく。

 歩道側に何とか退避してきた――自力で――バイカーの青年が、そのままバイクに乗って去ろうとしたのだ。二、三人が青年の回りに集って、必死で説得していたのを憶えている。

「事故の後は、興奮して痛くなかったりするんだって!」

「頭思い切り打ってたから、医者いかないとダメだよ!」

「いま救急車呼ぶから、ね?」

青年を説得していたのは赤の他人ばかり、その場に居合わせた人達で。その中に自分もいたのだけれども。

 そういえば、こういうときは何もせずにみているだけという人の方がやはり多いんだな、とか。

 周囲で唯こちらをみているだけの沢山の人達を背に、そのまま立ち去ろうとしていた青年を何故か必死で留めていた気がする。

 実際、どう考えたたって頭を打った事故は怖い。その場ではなんともなくみえても、数時間後とか下手すると数週間後とかに致命的な結果になることもあるのだから。

「いま痛くないかもしれないけど、後から痛くなってきたりするから!病院で診て貰わないとだめだよ!」

「そうそう!」

お節介なだけかもしれないが、そのときは本当にいまにも立ち去ろうとする青年を押し留めるのに必死だった。

 それから何とかなって、青年は病院へ。壊れたバイクも――よく考えればあれに乗って去ろうとしていたわけだから冷静ではなかったんだろうな――その場から回収されて。それを確認して、そのとき居合わせた人達とは、そのまま赤の他人として解散。それぞれの用事に立ち去ったのを覚えている。


 そんなこともあったな、――――。

 そうつまり、他人にはいっているのである。だというのに。

 自身のときはというと、―――。




「痛っ、―――い、…どうして?」

 処はタクシーで連れて来て頂いた整形外科。

 タクシーの運転手さんがいっていた通り、人気で、流行っている整形外科だった。

 もう人が一杯だったのだ。

 その待合で、交通事故で連絡した、と――先に電話で連絡して交通事故対応というのが可能かどうか確認していた――名前を告げると、受付の人が事故の状況について聞き取りをしてくれた。

 そして、事故から約二時間。

「…―――!?…いっ、…」

レントゲンを撮る為に待っていたのだが。

 随分と時間が経っているのは、人気で流行っていて先に待っておられる患者さん達が沢山いらしたから仕方ないのである。

 それほど痛くなかったし。

 ―――と、なんだかぼんやりしながら思っていたのだが。

 ―――あれ、…?どうして?急に腰が痛い、…―――。

 レントゲンで追加で腰も頼む。

 というか、受付の方に聞いていただいた時には、それほど痛みを感じていなかったのだ。

 しかも、どう考えても腰を直接打ってはいないし。

「…―――――?!」

そう、そして。

 ――――――っ、…(泣きたい…っ!)

 思わず痛すぎてわらってしまう。

 レントゲンを撮る為に横になるのだが。

 どうも、まっすぐ仰向けに寝るのが痛いのだ。

 ―――何故?

その謎は、紹介状をもらった先の総合病院で解明されることになるのだが。

 つまり。

 

  ――ちなみに、このときの痛みは。帯状疱疹の痛みを100とすると、20~30位。

 いかに、帯状疱疹が痛いか、ということだが。


 ともあれ、打撲はしていて、レントゲンでみえる骨折はない、ということで。

 もう日も暮れて、紹介状を書いてくれるというのを待っていたとき。

 

 ―――警察から、連絡があったのだった。





 警察の方から連絡があり、ご迷惑になるといけないので折り返すことにして待合室を出る。

 外に座れる処があってたすかった。

「はい、―――」

警察にかけ直すと、最初は番号を入力する録音音声につながる。直通の番号を案内してもらっているのだが、一律その案内につながることになっているようだ。

 ――ええと、交通課、と、…。

番号案内の通り、二度ほど数字をいれて、係の人につないでもらう。

「え、――見つかったんですか?」

「はい、このまま話していて大丈夫ですかね?」

「あ、…まだ病院なので、――帰ってからでも大丈夫ですか?」

「何時くらいになりそうですか?」

「ええと、――もう会計なので、…」

家に帰るのに必要だろう時間をつげると、それからでも大丈夫だといってくださる。

「ありがとうございます、お手数をおかけして、――戻ったら連絡しますので」

「わかりました。気をつけて帰ってくださいね」

「ありがとうございます」

いそがしいだろうに頭が下がる。

 何と、昼にいなくなってしまった相手の車――あやしい記憶で見つかるか不明だったのだが――をもう見つけてくださったということだった。

「そうなんだ、…―――」

警察ってすごいな、…と感謝する。何だか気が抜けたが、会計もしないと。

 相手がわかっても、いまは自分で支払いをする必要がある。

 交通事故対応が可能、というのは、つまりは、保険では本来交通事故なら全額自己負担で一旦支払いをする必要があるところを、自己負担を通常の健康保険と同じ割合の対応として支払うことができる、というようなことらしい。

 交通事故で健康保険は使えないから、本来は10割の処を3割の支払いで可能になるということのようだ。尤も、本当は相手の保険会社が先に判明していれば、その保険会社から支払いの対応があり、支払いは必要なくなるものらしい。

 ともあれ、いまは三割を自分の保険から支払う。

 紹介状ももらって、――――どうしようか、とおもった。

「…―――――」

タクシーを呼ぶには、家が近すぎる。

結局、やすみやすみ歩いて家に帰った。

普段の何倍も時間がかかったが、やっぱりこの近距離でタクシーを呼ぶのは申し訳ない気がしたのだ。

 電話を掛けるのがもうだるすぎてできなかったというのもあるのだけれど。



 そして、家に帰って。

 何とか帰ってこれて。

「ごめん、ごはん―――」

 玄関まで迎えにきてくれたねこ様に。

 しっぽを立てて玄関に来てくれたねこ王子のしまに何だかほっとしつつ、ごめんね、とおもって。

 それから、ごはんとお水をかえて。

 ねこ達が平常運転なのに、妙にほっとする。

 相変わらず、ミケさまは迎えに来ないし、ふく姫は自分の部屋でまったりしてて。

「…帰って、これてよかったな、…」

 それから、あ、とおもう。

 そうだ、連絡、――――。

「電話しないと、―――」

 疲れて倒れそうだったが、警察の人に連絡しないと。

 ―――約束したしな、…。

「ええと、…」

先にもらった番号と着信を見比べて、同じ番号なのを確認して折り返す。

 また、番号案内になったので憶えた順番に番号を押してまつ。

「おそくなりました、―――」

「大丈夫でしたか?随分遅いので、どこかで倒れていたりしないか心配しました」

「…すみません、ご心配をお掛けして、――この度はお手数をお掛けして、本当にありがとうございます。お時間をすみません」

「いえいえ、――では、いま大丈夫ですか?」

「はい」

相手の人の名前と電話番号を伝えられてメモする。

「相手の人は、直接あやまりたいといってるんですが、どうしますか?」

「あー、いえ、…直接というのはちょっと、…。保険会社の人とかいらっしゃったら、そちらをはさんでもらえませんか?」

相手の人は、事故に関して認めて、謝りたいといっているらしい。それはいいのだが。どうにも、直接会うというのは、よくない気がする。

 どんな感情があるにしろ、謝ってとか、直接会うとこじれる気がする。

 他人を間に挟む方がいい。

「そうですか、こちらも、保険会社を挟むようには勧めています」

「ありがとうございます。では、相手の方から直接連絡はしないように伝えてください。連絡は保険会社の人を通して、でお願いします」

「そう伝えます。では、相手の人に名前と電話番号を伝えるのは構いませんか?」

「はい」

そうしないと進まない。できれば、保険会社の人に直接伝えたいとはおもうが、順番として当事者から保険会社の方に伝える必要があるだろう。

 メモした相手の名前と電話番号をみる。

 これは、できれば記憶したくない。

 相手が個人として形がみえてしまえば、色々な感情も湧いてくるだろう。 

 感情的にならずに、淡々と対応していく為には、保険会社の向こうに今回立ち去ってしまった相手のことは見えない方がいい。

 くれぐれも、相手から直接連絡がないように頼んで、保険会社に対応してもらうように頼む。

 それから、気になっていたことを訊ねた。

「ナンバーがあってたんですか?」

「そうですよ、四桁全部あっていましたよ」

「そうですか、…―――。車の色は白で?」

「白で、型も似ていましたよ」

「やっぱり、○○○ではなかったんですか、――ちなみに車種は何でした?」

「×××でした。形は似てましたよ。色が白の軽自動車で」

「そうですか、―――。本当にありがとうございました。お手数をお掛けして」

気になっていたのは、記憶がどこまで正しかったかについてだった。

 どうやら、ナンバーはあっていたらしい。よかった。

 しかし、車種は違っていた。

 良く似た形の車で、○○○の形も参考になったそうだ。よかった。

 ×××という車種は知らなかったので、似た型でいえたのはよかったのだろう。

 それにしても、―――。

 なんだか疲れた。

 御礼をいって通話を終わる。

 警察の方達は皆さん親切で、対応もとても丁寧でありがたかった。

 タクシーの運転手さん達も、受付の人も親切でなんだかとても救われた。

 ―――ありがたいな、…。

 ひどくつかれてねむい。


 ちょっとまとう。

 つかれてねる前に、ねこ達のトイレをきれいにしないと、…。

 何とか根性でトイレをきれいにして、何だかほっとする。

 お水、三カ所OK。

 ごはん、各自とおまけ分を新規配置OK。

 トイレ、OK。


 よし、これでねれる、…――――。

 



 ねむい、…―――。

「あ、いて、…」

 横になろうとして、あきらめた。

 まっすぐ、ねれない。

 横になるのに、普通に仰向けになろうとして、痛みに背を丸めてじっとしていた。

 ――やばい、…横になれない。…

 いや、ここは仰向けをあきらめればいいんじゃないのか?

 クッションを抱き込み、左を下にして何とか横になってみる。

 下手に動くと、右側に鋭い痛みが走る。

 それでも、何とか横になることができた。

「まあ、いいか、…いきてるし、…」

 青信号の横断歩道。

 晴天で、視界良好。

 真っ昼間。

 それでも、ほんの一瞬で。

 ―――もう少し、前を歩いてたら。

 多分、車ともう少し強く接触していただろう。

 あの距離で、あと十数cm近かったら。

 どうなっていたかわからない。

 ――生きて帰れて、よかった、…。


 しま王子が背中かお腹に乗ろうとして、横に寝ているから乗れなくて困っているのをみながら、ぼーっと考える。

 コタツの中にはミケさまがいて。

 ――…ありがたいな、…帰ってこれて。

 あんなに気をつけていても事故に遭うなんて思ってもいなかった。

 帰ってこれて、ねこ達にごはんをあげられて、本当によかった。


 ねこ様達の下僕として、生き延びてお世話ができることに感謝して。

 眠りについていたり。


 この後、翌日、歩けなくて呼んだタクシーで行った先の病院で。

 骨にヒビが入っているのがわかったり何だのするんですが。

 ついでに、右手の握力が半分になっていて、ちゃんと動かなかったり。

 そして、仕事がなくなったり。

 リハビリを始めたら、帯状疱疹に襲われて今度は左手がまともに動かせなくなったりと。

 人生色々劇場なのですが。


 ともあれ、生きててよかった!

 ねこ様の下僕として、お世話ができるしあわせをかみしめつつ何とか生きております。本当に、皆様のおかげです。


 皆様、ありがとうございます!

 それから、警察の皆様、本当にありがとうございました。

 そして、マメ知識?なのですが。

 ナンバーは地名+○○○とか、四桁の前にあるひらがなとかがわからなくても、メインの四桁がわかれば、何とかなることが多いようです。

 全部憶えられなくても、四桁大事。

 交通事故に遭った後、相手が去ってしまったときに大事なのはナンバー四桁の記憶!全部おぼえなくていいんです、という。

 それはマメ知識になるのか、とか。

 そんなマメ知識は必要がない方がいいんじゃないのかとか。

 はい、必要にならない方が絶対にいいと思います。


 ですので、皆様。

 何よりもまず、ご安全に!

 皆様のご健勝とご安全をお祈りいたしております。


 応援してくださった皆様、ありがとうございます!




 

 



先のエッセイに応援を頂けるとは思っていなかったので

御礼代わりに体験談の続きを少しあげてみました。

ナンバー四桁記憶、大事です。

それでは、これで御礼になるかわかりませんが、よろしければご笑覧ください。




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