まきの家1-1
いつもとタイトルの感じが違うのは気にしないでください。
それでは本編へどうぞー
カララン…
「あ、まくさん!おはようございます!」
「まきですわ」
もう定着しているのではないかというほどの早さで答えたまき。
ゆりちゃんの方も、段々まきに対する接客の仕方がわかってきたのかいつもの席に案内しようとする。
カーテンが揺れて、一枚葉っぱが落ちてくる。青々としたきれいな葉っぱだ。まだ落ちるはずのないほど綺麗なその葉をまきは拾い上げた。そして何か思いついたのか、案内しようとしたゆりちゃんを止めにかかった。
「今日は私の家に行きません?」
「はあ…?」
頭がついていっていないらしい。ゆりちゃんはフリーズしていた。数十秒固まった後、ようやく言葉を噛み砕いて消化できたようで、目をきらきらさせながら言った。
「まきさんの家…行きたいです!いいんですか?」
「大丈夫ですわ。最近、朝いつも家に居ないのでお母様が心配していますの。その説明も兼ねて、来ません?」
「行きます!絶対行きます!お店休みにして行きます!…ちなみにどのくらいの道のりで?」
「歩いて一時間、飛んで三十分くらいだったと思いますわ」
「まきさん、飛べるんですか!?」
「いいえ。飛べませんわ」
ゆりちゃんは店を閉めてまきの家に行くことにした。まきがそういえば、と言い出したのはあの綺麗な葉っぱからで、もしも窓が閉まっていたらゆりちゃんはまきの家に行かなかったかもしれない。
そうと決まれば、とゆりちゃんが店の奥へ入っていって数分。ゆりちゃんは上着を羽織って戻ってきた。
「おまたせしましたー!出発です!」
「よろしくお願いしますわ。歩いて行くので一時間ほどですわね」
そんなゆりちゃんを横にまきはドアを開けて歩き出した。ドアベルの音は聞こえないに等しいくらいで、自然とドアは閉まっていった。
・・・
「着きましたわ。ここが私の家ですわよ」
「思ってたより大きいです…」
ゆりちゃんはあまりの大きさに驚いて、本日二度目のフリーズを起こしている。とりあえず何か言わなきゃ、というゆりちゃんの正義感によって感想を一つ、絞り出した。
ゆりちゃんがそうなるのも仕方ない、大きいのだ。とてつもなく。シミの見えない綺麗な白い壁に、ステンドグラスの窓。広く手入れの行き届いた庭に、どこからともなく飛んでくる蝶や鳥。まあ、いわゆる豪邸というものだ。
「まりさんのお家、ほんとに凄いですね…」
「まきですわ。では、朝居ないことについての説明に、付き合ってもらいますわよ?」
「はーい!」
まきからどこにも行くなよオーラが滲み出ているが、ゆりちゃんは全然わかっていない様子。のんきに、そして大きな声で返事をした。
と、その大きな声に気がついて何事かと見にきたのだろう。一人、近づいてきた。
「あらあら、可愛らしい子。それにまきもいるじゃない。どうしたのかしら?」
「あ、お母様!」
「お母さんでしたかー。まきさん、ゆりちゃん可愛いって言われました!」
「ゆりちゃんって言うのねー。よろしくね、私はクリスよ。…」
クリスは名乗った後、急に黙り込んだ。ゆりちゃんはどうしたのかとテンパっているが、まきは冷静だった。
「最近はこの、ゆりちゃんが出している店のご飯を朝ごはんにしているのですわ。お母様にもぜひ食べてほしいくらいですわ。とても美味しいのです」
「…そうだったのね…そんなに美味しいのね、私も食べてみたいわ。」
テンパっていたゆりちゃんだが、解決したようでよかった、と二人に声をかけた。クリスがゆりちゃんの料理を食べてみたい、と言ったのだ。これを言わないゆりちゃんではない。
「よかったら、今度来ませんか?お客さんが増えるのは大歓迎です!」
「まあ!良いわね、いつ行こうかしら…」
「それも良いですけど、そろそろゆりちゃんを家の中に入れてあげてほしいですわ。段々暑くなってきましたわ」
「あっ!そうね。ゆりちゃん、私たちの家にようこそ!ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます!」
途中から噴水の縁に腰かけていたゆりちゃんは、立ち上がって二人の後を追った。
もう一話分話が続きます。
更新予定日は未定です。でも、できるだけ早くできるように頑張ります。