ゆりちゃんと初めてのお客さん
はじめまして!やめぇです。
初投稿なので、優しい目で見てもらえると助かります。
ここは数多ある食事処の一つ。店員は一人、店長だけ。
店長は、七歳のゆりちゃん。
ただいま開店中!
カララン…
久しく鳴っていなかったドアベルの音が響いた。ゆりちゃんは顔を輝かせて言った。
「いらっしゃいませー!」
ドアを開けて入ってきたのは、一人の女の子だった。
「こんにちは。一人ですわ」
「どーどこちらへ!」
そう言ってゆりちゃんは女の子をカウンター席まで案内する。見たところ、どこかの貴族の子供のようだった。
「メニューです!ゆっくりどうぞ!」
「ありがとうございますわ。どれにしましょうか……」
女の子が悩んでいる間、ゆりちゃんは終始にこにこと満面の笑みだった。
しばらくして、女の子は決まったのか、顔を上げて言った。
「この、『サンドイッチ』というものを一つお願いしますわ」
「はい!わかりました!サンドイッチですね?しょーしょーお待ちを!」
これまた素晴らしいほどの笑顔でゆりちゃんは言う。その後すぐに店の奥の方へ歩いていった。
・・・
ゆりちゃんが歩いて店の奥へ消えていった後、少したつと、また女の子の方へお盆に何かをのせて戻ってきた。慎重に歩く姿は、少し危なっかしい。
お盆ごとテーブルに置く。
「どーど!『サンドイッチ』です!」
「とても美味しそうですわね。…では、いただきます」
ぱくっ
一瞬目を輝かせた後、早口でゆりちゃんに向かって言った。
「なんでしょう、とても美味しいですわ!レタスとトマトと…ハム、チーズですわね、とにかく、とても美味しいですわ!」
早口で言われた言葉は、ゆりちゃんにとって、とても嬉しい言葉だ。
「嬉しいです!ちなみに、他にもいろんな組み合わせがあるんですよ!今度また来たときに食べてみてください!」
「そうなのですね!…はむっ…また来ますわ…もぐもぐ」
「りぴーたー?かくほです!やったあ!」
ゆりちゃんは喜びのあまりその場で軽く跳び跳ねる。ひたすら食べている女の子を横に。本当はあまり良くない行為だが、仕方ない。
何故なら、この女の子が初めてのお客さんだったからだ。
・・・
ゆりちゃんが軽く跳び跳ねる事があった後は、どちらも無言でいた。すると女の子は食べ終わったのか、ゆりちゃんに水を貰い一息ついた。
「とても美味しかったです、ごちそうさまでしたわ」
「それはよかったです!」
「では、お代をメニューに書いていなかったので教えてほしいですわ。いくらですの?」
「あ、えっと…それは…」
代金の話になると、たちまちゆりちゃんの目が泳ぎはじめた。
「あの~、今日はお金、要りません!」
少し考え込んでから、ゆりちゃんはお金は要らないと言い出した。
「なぜですの?」
「だって…初めてのお客さんなんですよ?だからお金はいいです!」
一度決めた事はもう変えたくないのか、頑なに意見を変えようとしなかったゆりちゃんである。そして、また何か思い付いたのか、あっと顔を上げた。
「名前、教えてほしいです!」
なぜ名前を聞かれたのかよくわかっていない女の子だったが、名前を教えてくれた。
「私の名前はまきですわ。またきますわね。代金が要らないというのは、今日だけですわよ」
「はーい、わかってます!また来てくださーい!」
まきは、ゆりちゃんに向かって手を振って出ていった。
カララン…