特別編⑦ ちゃみ子、ブロッコリーが苦手な理由を哲学的に語る
書籍版
『脱力ゆとりギャルちゃんは、全力で僕に寄りかかって生きることに決めた。』
本日、オーバーラップ文庫より発売です!
書籍版
『脱力ゆとりギャルちゃんは、全力で僕に寄りかかって生きることに決めた。』
本日、オーバーラップ文庫より発売です!
――――――――――――――――――――――
「それ、残すなよ」
昼休み、中庭のベンチにて。
僕は隣のちゃみ子の弁当箱をのぞき込んで言った。
端っこには、ブロッコリーが2つ、ひっそりと避難していた。
茹で加減もちょうどいい。ドレッシングもちゃみ子好みのを選んだ。
なのに、ちゃみ子はひたすら視界の外に追いやっている。
「ブロッコリーは……いい」
「よくない」
なぜならちゃみ子は、ブロッコリーが苦手だから。
再三言うが、同じようなフォルムしてるくせに。
「なんで嫌いなんだよ。そんな癖のある味でもないだろ」
「だってさあ、ブロッコリーって……人生っぽくない?」
「……は?」
謎の理論が展開された。
ブロッコリーは人生。何かのゲームの話か?
「なんかこう、丸くて、ぎゅって詰まってて、緑で……人生」
「ごめん、マジで意味が分からない」
「人生の話をするのに、意味なんている?」
「急に鋭そうなことを言うな」
別に鋭くないけど。
ちゃみ子は箸を弁当箱に置いて、顔を完全にこちらに向ける。
よく分からないが、本腰を入れて語る気か。
「ブロッコリーって、ちっちゃい森じゃん」
「まあ、言わんとしてることは分かる」
「森って、いろんな生態系が集まってる場所じゃん」
「そうだな」
「世界じゃん。人生じゃん」
「そうかもしれないけど、だからなんだよ」
だから苦手って、どんな感性?
「そういう意味でブロッコリーって、存在として完成されてる気がする。なのに未完成な私がブロッコリーを食べるのは……」
「食べるのは?」
「息苦しい」
「そ、そうなのか……?」
ここまで熱弁されると、流石に無碍にできなくなってくる。
「さうは、ブロッコリー好き?」
「まあ、普通に好きだよ」
「そういうとこだよね」
「何がだよ」
ちゃみ子は「ふぅー……」とため息をつく。
「勉強も家事もなんでもできる完璧なさうには、ブロッコリーを食べる息苦しさは分からない」
変なマウントを取られている気がする。
「……ちゃみ子、正直に言え」
「うん」
「味が苦手なだけだろ」
「……んふ」
ちゃみ子は悪びれず、ニヤッと笑う。
「よく分かったね、名探偵」
「バレバレだよ」
「ご褒美に、ブロッコリーあげる」
「いらない。食え」
最終的には、2つあったブロッコリーをふたりで分け合うことで、解決したのだった。
この更新にて、一旦完結としますー。
続編も書いていく予定なので、少々お待ちください。
みれいちゃんもいっぱい書きたい!