特別編⑤ ちゃみ子、サブスク解約に苦心する
書籍版
『脱力ゆとりギャルちゃんは、全力で僕に寄りかかって生きることに決めた。』
本日、オーバーラップ文庫より発売です!
夜11時半。
僕は布団に入り、スマホの画面を閉じたばかりだった。
LINEの通知が鳴る。しかも着信。
画面に表示された名前は、想像どおりだ。
《ちゃみ子》
拒否してもいい時間だ。
が、明日スネられたら後が面倒くさそうなので、渋々出た。
「……なに?」
『さう、助けて……』
「え、命の危機?」
『似たようなもの……』
「……具体的には?」
『サブスクの解約、できない……』
思ってたものの2000倍くらいどうでもよかった。
「また明日な」
『切らないで。捨てないで』
「なんで今なんだよ……」
『今ふと思い出した。アニメ観たくて登録たけど、あんま使ってない。でも手続きがめんどくさい』
「あとでやれ」
『私の中の誰かが言う。今解約しないと死ぬって』
誰だよそいつ。出てこい。
『でも解約しようとすると、ほんとにいいの?ってすごい聞かれる。悲しくなる』
「知らんがな」
ちゃみ子は、脱力しつつも意味不明な情緒で生きている。
寝不足になられても困る。世話をするのは僕なのだから。
そうして結局、通話にて解約をサポートしてやることになった。
***
『できた〜。これで、未来が救われる』
「壮大だな」
無事に解約を終え、僕はほっと一息。
時刻は0時にさしかかるところだ。
『さう、天才』
「この程度で天才なら、日本は天才だらけだよ。それじゃ、早く寝ろよ」
そうして通話を切ろうとしたが、ちゃみ子はまだボソボソ言う。
『やっぱさうしか勝たん。さうサブスクはやめられない』
「課金された覚えはないが」
『じゃあ月イチで、ブラジャーあげる』
「いるかっ!!!」
『んふ……おやすみさう』
そう言って通話は切られた。
最後の最後で弄ばれた、夏の夜のことだった。