#3
次の日は久しぶりの学校で少し悲しい思いをしながら向かった。
「瑠衣!おはよ!」
電車を待っている間に少し明るい、聞き馴染みのある声が聞こえた。後ろを振り返ると予想していた通りの人が立っていた。鈴木寧。小学生の頃からの幼馴染で、かれこれ十年の仲になる。一番仲がいい友達だ。そしてクラスで人気者だ。
「寧、おはよ。」
少し小柄で周りからよく可愛いと言われている。本人はその事を気にしているみたいだが。
「夏休みの宿題終わった?俺まだ少し残ってるんだよねぇ。」
寧は少し勉強があまり得意ではないが努力家でそういう所がみんなから好かれている。
「僕は終わったよ。」
「いいなぁ。頑張って今日で終わらせないと…。」
寧は少し嫌そうな顔をしながら言った。
「というか、瑠衣なにかあった?なんか落ち込んでない?」
寧は人の感情に敏感なところがある。なんでもないと装っていても見透かされる。
「あー、分かった?夏休みに揉め事起こしちゃってさ。」
「え、大丈夫なの?」
心配するように僕を覗き込んでくる。
「まぁ詳しくは言いたくないんだけど、一目惚れした人に彼氏がいたんだよな。」
寧は一瞬曇った顔をした。だがその表情を取り消すように頭を振った。
「それは残念だったね…でもなんで揉め事?」
僕は所々省きながらも雪さんに彼氏がDVしてたこと、でも雪さんはそれを受け入れていることを話した。
寧は暫く黙っていたが
「そっか…でも彼氏いたなら仕方ないし、女性もその人のことを受け入れてるなら瑠衣は引いてもいいんじゃない?」
と答えた。
「まぁそれはそうなんだけど…普通に心配なんだよな。それにちょっと酷い質問しちゃってギスギスしてる。」
寧はちょっと嬉しそうな表情を浮かべたのを僕は見逃さなかった。
「なんか嬉しそうだな?彼女できなかったから?」
少し笑いながらそう言うと寧は慌てて手を横に振った。
「ち、違うよ!でも…なんでもないよ。」
そして少し上機嫌な寧と一緒に電車に乗って学校へ向かった。