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#1

僕は平凡な日常が好きだ。というより刺激を求める人達の理解ができない。何事も平和が一番だと分かっているから。だから彼女に対して異常だと言ってしまった。思えば彼女と出会ってから僕の平凡な日常は消えてしまった。

彼女と初めて出会ったのは高校生になった年の夏だった。丁度夏休みで、毎日平凡に過ごしているから故の退屈さに嫌気が差していた。何事も平和が一番だと思っていてもこればかりは何年かに一度は訪れる。しかしそれによって自分が普通の人間であると思える。そんな中で出会った彼女に対して僕は恐怖を抱いてしまった。

用があった訳ではなく、たまたま近くの河川敷をぶらぶらと歩いていた時に彼女を見つけた。そして一瞬で恋に落ちた。彼女の肌は白く、顔も整っている。誰が見ても美人だと言い切れるほどだ。どうにかして彼女とお近付きになりたいと思った僕は彼女がいる所に走ってしまった。

「あ、あの!」

声を掛けられて振り返った彼女に次の言葉を言おうとしたがその前に声が出なくなった。彼女の綺麗な顔は唇が切れていて、目尻の近くには青紫色の痣があり、首には誰かに絞められたような手の形をした痣があった。

「あ、えっと…大丈夫…ですか…?」

僕はやっとの思いでそう聞くと彼女は少し微笑んだ。

「…大丈夫ですよ。その…私は何とも思ってないので。」

多分僕の顔の表情を汲み取って答えたのだろう。僕が何か言う前に言われてしまった。

「いや…でも、それ…」

「それより、なんか用がありましたか?」

僕が言い終わる前に彼女は遮るように聞いてきた。

「いや…大したことでは…実を言うとあなたに一目惚れしてしまいまして…もしよかったらお友達になっていただけないかと思いまして…。」

僕はおずおずとそう言うと彼女は困ったような顔をした。

「えっと…」

彼女は考え込むように少し俯く。

「あ、いや!嫌なら全然大丈夫なんですけど…。」

自分の図々しさに気付いてそう言ったが彼女は首を振った。

「あの…そうですね。友達になるのならいいですよ。」

ニコッと微笑む彼女を見て、嬉しさと悲しさが同時に溢れてきた。それが故に涙が溢れてきた。涙を流す僕を見て彼女は慌てた様子で、鞄からハンカチを出して差し出してくれた。

「ご、ごめんなさい!なんでもないんです…。」

そうは言ったものの差し出してくれたハンカチは使わせてもらった。

「洗って返した方がいいですかね…?」

「そのままでいいですよ。」

彼女はそう言ってハンカチを受け取り、スマホを取り出す。僕も慌てて取り出して何とか連絡先を交換した。

「じゃあ、今日はこれで。」

そう彼女は言って、駅の方へ歩き出した。僕も自宅へ帰るべく彼女とは反対の方へ歩いた。

とその時、彼女の方から

「ごめんなさい!」

という声が聞こえた。驚いて振り返ると、彼女の隣に若い男性が立っていた。金髪でピアスを開けていてまさに不良だと言えるような姿をしている。

「何謝ってんだよ。俺はなんでこんなところにいたのかって聞いてんだよ。」

男は少々荒い声を出しながら女性の肩に手を置いている。彼女はビクッと肩を震わせると俯いた。

僕はその姿を見て走り出さずにはいられなかった。そして彼女と男の間に入った。

「あ?なんだお前。」

「彼女怖がってるじゃないですか!」

男は僕をキッと睨みつけてきた。そして今度は僕の腕に手を置いた。

「お前部外者だろ?なんか文句あんのかよ。」

手に力を込めたのか腕が重くなり少し痛い。

「か、彼女とは知り合いです!」

とさっき知り合ったばっかだがそう言って彼女の方に顔を向ける。しかし彼女は困った顔というよりは怯えた顔をしている。

「は?お前知り合いなの?」

男は彼女の方を向いた。

「……はい。」

彼女は俯きながら答える。その直後何が起こったのか分からないが僕は地面に体があった。生ぬるい何かが僕の顔を伝っているのに気づいて、ようやく僕は男に殴られたことに気づいた。

「どうせお前、こいつが優しいから知り合いになれたんだろ?気持ち悪ぃんだよ。」

呼吸すらするのが辛いほどの痛みを抱えながら僕は立ち上がろうとしたが、立てない。

「二度と関わんな。」

男はそう言うと彼女の手を引いた。彼女は僕の方に申し訳なさそうな顔をしながら男に引っ張られて行ってしまった。

次回の更新日は5月25日です。

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― 新着の感想 ―
平凡を理想とする主人公が,彼女との恋をきっかけに成長していく物語でしょうか.今後の展開が楽しみです.ただ,一目惚れをしたときの主人公の行動が積極的すぎて少し違和感がありました.
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