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お嬢さまの工房

 僕は一人工房でメイドロボの調整結果を報告書にまとめていた。報告書の書き方も教えてくださったのはお嬢様だ。年下にもかかわらず、お嬢様には教わることが多い。


「おーいポール入るぞ」


 言いながら入ってきたのは、お嬢様の専属護衛のナタリーだ。


「入る前にノックしなよ」

「なんだ、恥ずかしいことしようとしてたのか?」


 ニヤニヤする彼女だけどまぁ悪気はないのだよね。


「ほら、何も食べてないんだろ、軽食持ってきたぞ。あーんってするか?」

「してくれるの?」

 

 そう言うとちょっとふくれる。でも耳元が赤い。照れてるんだ。

 

「そこは恥ずかしがるところだろ。スレちゃったなぁもう、お姉ちゃん悲しい」

「誰かさんの教育のたまものです」


 そう言いながらも彼女が口元に持ってくるスプーンをパクリと口に入れる。美味しい。

 

「三割増し美味しい気がする」

「ななな、何いいやがる」


 赤い顔を見てニヤニヤするぼく。さっきのお返しだ。


「さすがマーサさんの料理……」

「……」

「ナタリーだよね、腕上げたよね」


 ふくれっ面してたナタリーだけどちょっと顔が緩む。やっぱりかわいいな。彼女が僕の恋人っていうのが信じられない。


「あれで完成なのか?」

「メイドロボ? いや、まだ改良の余地があるよ。ただ、しばらくはお嬢様の葉屋専用かな?」


 お屋敷には掃除をさせるために雇っている人も少なくない。そのひとっちの仕事を奪うのは反発が多い。だから当分はお嬢様専用。計画的に導入しないとね。これはほかの魔道具もそうだ。お嬢様曰く、新しいものは受け入れてもらうには時間がかかる。それに無理に導入するとラッダイト運動が起きるのだそうだ。


 さてさて、食べ終わったらさっきの続きだ。マーサさんがなんて言ってたっけ?


「ここ、マーサ様がこう言ってた。あとシンシアがこう動いたのに追従してなかった」

「ああそうか、助かるよ」


 口ではからかう彼女だけどちゃんと手伝ってくれる。その思惑は分かるけど。彼女のお陰で思ったより早くまとまった。明日お嬢様に確認していただこう。

 

「そろそろいいんじゃないか?」


 後で衣擦れの音がしたかと思うと頭の後に柔らかいものが押し付けられた。

 

「そうだね。そろそろ……かな」


 振り返ると目の前にたわわな白い果実が。もう、我慢できなかったらしい。ナタリーだけじゃない。ぼくもメイドロボの解発にかかりきりで一月以上ナタリーといちゃいちゃできなかったからね。僕は彼女をベッドにいざなう。


「今日もこれを試すからね」


 僕が手にしたのは魔導バイブレーター。


「そっ、それ使うの?」


 彼女は拒否するが僕は気にせず彼女の上にのしかかった。


◆◆◆


 朝か、いや、もう昼か? 外はすっかり明るくなっている。


ノックの音がしたので慌てて服を着て答える。


「どうぞ」


 驚いた。家令のトムソン様だった。


「あぁ、いいですよ、そのままで。こちらにこれをおいておきますね。あなた方に朗報です。あとこれは旦那様からです。今回はお疲れ様でした。お嬢様もまだお休みですので今日はゆっくりしてください。ナタリーにも伝えてくださいね」


 いうだけ言うとトムソン様は工房を出て行った。

置いてあったのは書類挟みと皮の袋。書類挟みには結婚を許すという書類が、川の袋には少なくない金貨が入っていた。


「やったぁぁ」


「ぬ~~~、ポール、どうしたの、誰か来たの?」

「ナタリー、結婚できるよ、旦那様のお許しが出た」


 いろいろ配慮していただいているけど、ぼくは平民で使用人の一人。男爵令嬢のナタリーと結婚できなくはないけれどいろいろ不自由がある。とりあえず、旦那様のお許しが出たということは、この後の働き次第で騎士爵くらいはなれるだろうか。


 ぼくは平民の魔道具職人の息子だった。かあさんは、ぼくを産んですぐにさらわれ今は生きているかどうかもわからない。とうさんは僕がさらわれそうになったところを助けようとしてならず者に殴り殺された。そこを助けてくれたのがお嬢様とナタリーの父上のアルバート男爵閣下だ。


 ぼくはかあさんに似ているらしくて、女の子に見えたのだろう。ならず者たちはかあさんをさらったやつらと同じ組織だったらしい。かあさんの行方は分からないままだけど、これはぼくに伝えたくないのだろうな。


 幼かったぼくの面倒をみてくれたのは魔道具師のディック爺さんとナタリーだ。ナタリーは姉のようにぼくの世話をしてくれた。ぼくは助けてくれたお嬢様の恩に報いるため早く一人前になるため無理をすることが多かった。そんなぼくをたしなめ休むことを教えてくれたのはナタリーだ。


 こういう関係になったのは、まだぼくが一人前になる前。すでにおっぱいが大きくて美人のナタリーだったけど稽古や仕事以外の空き時間は工房に入り浸っていた。疲れてうたたねをしていたナタリーのおっぱいを僕はさわってしまった。もちろんすぐに目を覚ましたナタリーに怒られ裸にむかれたぼくは彼女に食べられてしまった。


 今、考えるとナタリーの罠だったかも。


「なに、にやにやしてるんだ? あぁ? まだ足りなかったか?」


 ナタリーも浮かれているようだ。でも、ナタリーもぼくも仕事がある。お嬢様が起きたらナタリーは護衛の仕事が、ぼくは昨日の報告が。


「あら、ナタリーここにいたのね」


 扉があいてマーサ様が立っていた。


「マーサ様、なにかありましたか?」

「お嬢様達が目を覚まされたわ。ナタリーもポールも準備をしなさい。あと、おめでとう、よかったわね」

「「ありがとうございます。すぐに支度します」」


 さぁ、日常が戻ってくる。結婚が許されたと言ってもすぐには結婚できるわけではない。仕事の都合に合わせて準備をしないと。


「すまんが先に行く」


 ナタリーがそう言い頬にキスをして出ていく。もう、女騎士モードになっている。

ぼくも昨夜まとめた報告書をもう一度確認して遅れて工房を出る。お嬢さまに報告書を届けに向かう。


 既にぼくらのことはみんなに伝わっているようでお屋敷に入ると使用人たちがぼくに小声でおめでとうと言ってくれた。さぁ、もう、一人前になれた。次は何を作るか。お嬢様は「せんたくき」か「れいぞうこ」を作りたいと言っていたな。どういう仕組みかお嬢様から聞きださないと。お嬢様のことだから思いもよらない仕組みを考えているんだろう。それを思うとワクワクする。


 お嬢様の部屋の前に立つ護衛に報告書を持ってきたことを伝えると中からアンナさんの返事がある。さぁぼくとナタリーの仕事だ。


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