健康は好き嫌いに勝る。
関西人は納豆が嫌い。
筆者もご多分に洩れず、そうであった。ネバネバとした発酵食品。豆を透明の鼻水か何かで和えたゲテモノ(暴言)のようにも思え、子供の頃から大嫌いだった。
ところが、である。
今年から納豆を食べ始めるようになり、一日も欠かさず、食べている自分がいる。朝晩だけでなく、何なら小腹が空いた時のおやつ替わりにまで……。
なぜ、あれほど毛嫌いしていた納豆を急に食べ始めたのか?
それはもちろん「健康」のためである。
健康のためなら、グルテンフリーや16時間ダイエット等にも、とりあえずはチャレンジする筆者。そんな筆者がいよいよ辿り着いたのが「納豆」であった。
納豆には「ナットウキナーゼ」というネーミングセンスを疑う名称の成分が含まれており、これとビタミンK2が合わさることにより、血液をサラサラにしてくれるのだとか。何なら血管内の血栓までもを溶かしてくれ、血管内のリスクヘッジとしてはもってこいの食品。効果も即時性があり、効果が出てくるまでの試用期間も不要。なら試しに食ってみるか、と買い物かごに入れたのが「納豆狂い」の始まりとなった。
筆者がいつも買っているのは、豆紀の「北の鈴」という名の納豆パック。国産大豆100%でタレとカラシ付き(カラシはいらないのでいつもポイ)。
これがとにかく美味い。
ひたすら練り練りになるまで箸でこねくり回し、食す。ただし、ごはんには直接掛けない。ごはんは後でお口をさっぱりとさせる用に、ある程度残して挑む。
それにしても、あれほど大嫌いだった納豆が、こんなにも美味く感じるようになったのは、いったいなぜか?
「食わず嫌い」の側面もあるにはあるが、やはり「味覚の変化」によるところが大きい。
「お前には大人の味が分からない」
その昔、マウントとして使われてきたこの言葉。
筆者も年を取り、実際に味覚が変わってきた。
しかし「なぜ味覚が変わるのか」についてを調べてみたら、そこには非常に馬鹿らしくも、驚くべき答えがあった。
舌には味蕾と呼ばれる「味を感知するセンサー」があり、この味蕾が30~40代になる頃には「こどもの頃の約3分の1」にまで減少するという。そう、つまり味覚が変わるのではなく「劣化して鈍感になった」というのが正解というガクブルな事実が……。
子供の頃には感じ取れた納豆特有の微細な生臭さなどが、じじいになって「感じ取れなくなった」というのが正解か。むしろ、めっちゃ美味しい!じじいになったから(苦笑)。
いや、豆紀の「北の鈴」が国産大豆で変な添加物が一切入っていないのも理由なのだろう(他社は成分見ただけで買う気も失せたので試食すらしていない)が、うーん、これは……。
まあ、安価で美味しい食品がひとつ増えたのだから、結果オーライとしておこう。
そういえば、こどもの頃に食べていたお菓子が、今食べると全然美味しくなくて「メーカーめ、味を変えやがったな」などと怒ったことがあったが、これも完全にお門違い。筆者の舌がバグってしまっただけやないかーい、と反省。
関西人の納豆嫌いは、薄味文化。
「出汁こそが至高」によって育てられた舌であることにも関係があるのかもしれない。
そのへんの分析はここでは省くが、うどんの汁の色合いの分布図と納豆の消費率のデータなんかが出せれば、きっとそのへんの相関関係が見えてきそうな気がしそうな、しなさそうな。