表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/85

13 クラリッサ・ローズベリー伯爵夫人

エマがサロンに足を踏み入れると、すでにそこには母・クラリッサ夫人が優雅に紅茶を飲みながら待っていた。


「おかえりなさい、エマ。まぁ、少し遅かったのね?」


「た、大変申し訳ありません、お母様。少し、寄り道を……」


「寄り道?」


クラリッサ夫人の微笑みは完璧に優雅。でも、目が笑っていない。

その横では、オードリー夫人の霊が扇子で顔をパタパタしながら浮かれていた。


『“少し”ですって! “寄り道”ですって! 馬車の中でうたた寝しながら寄りかかってたのに!? それで“少し”? ねぇ、クラリッサ?』


(ちょっとほんとにやめてお願い)


「それで……その“寄り道”の詳細を、私に教えてくださる?」


紅茶を一口すする母。

扇子で顔を隠しつつ、身を乗り出す霊。

逃げ場なし。


「えっと……その……修道院に、少しだけ、立ち寄って……」


「修道院?」


「はい……えっと、以前、支援を検討していたところで……」


『あぁ、エマったら苦しい言い訳~! あんな素敵な男性と一緒にってところが抜けてるわよ!』


「誰と行ったのかしら?」


――核心に迫るクラリッサ夫人。


「えっ……い、いや、その……サラと、それから、えーと……」


「“それから”? 」


『はい言って~! その素敵な黒髪の子よね!? レオンって言ったかしら、あの目つきがまた良いのよね~!』


「お母様。別に、そういうのでは……」


「“そういうのでは”?」


『ふふふ、クラリッサ、あなた気づいてるのね。この子、顔に出るタイプよ?』


(もう無理、逃げたい)


「エマ、女の子がよく知らない男の人と“修道院で二人きり”なんて、どれだけ危険な事か分かっていて?」

クラリッサ夫人は厳しい口調で詰め寄る。


「ち、ちがうのよ! 一緒にいたのは、ほんの少しだけで……2人きりじゃなくてサラもいたし! それにレオンは、その……案内人みたいな感じで……」


『恋の旅への案内人ってことね!』

オードリー夫人の霊が、軽やかに笑いながら言った。


クラリッサ夫人はため息をついた。


「まったく……こういう話、もっとちゃんとしてくれないと。どこの誰かも分からない男と、うちの娘がふたりで……」


「母上、レオンは危険から私を守ってくれただけで……本当に、そういう関係では……!」


『そうそうそう! 今は“まだ”そういう関係じゃないのよね? ふふふふふ!』


クラリッサ夫人はしばらく何かを考えるような素振りを見せたが、やがて、少しだけ笑った。


「……ふふ。まぁ、エマにしては珍しく、何かを隠している顔をしているのは見逃せないけれど……」


「えっ……!」


「次にその“レオン”という方に会う機会があれば、是非ご挨拶したいわね。母として当然の権利でしょう?」


クラリッサはやはり優雅に微笑んで言った。


『始まったのよ、エマ。恋と、社交と、母のチェックという名の地獄が!』


「それでは、エマ。夕食はまだよね?軽食を持って来させるわ。話はまだまだ尽きなさそうだものね」


母の完璧な笑顔と、非常に上機嫌なオードリー夫人の騒がしい霊圧に囲まれながら、エマはそっと目を閉じた。


(……あぁ、どうしてこうなったのかしら……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ