第五話 あの頃
前回との矛盾が発生しているかもしれません。(毎回これ言ってますね)
まだ、矛盾が発生する段階ではないと思うのですが、念のためです。
「起きてくださーい。博真中尉?」
うん?なんか暗いぞ?あ、目をつぶってるからか。
うーん、眠い
「ちょっと?なにしてんすか?博真中尉?さっき起きましたよね?目を開けて起き上がって回りキョロキョロしてましたよね?ちょっと?」
うるさいな、なんで武はこんな元気なんだよ。
確か昨日、あの後二人でノンアルビール飲んで、なんか、意気投合して下の名前で呼び合うほどになかよくなって、たしか、12時くらいまで喋ってた気がする。
で、たしか、あいつは、歩いて行けるからと、都内にある都営警察官寮に帰っていったはず。僕はそのまま寝た気がするけどね。あ、でも布団かけられてるのなんでやろ。まあいいや。
にしてもあいつ元気やな。
「ちょっと、マジで寝ないでくださいよ。寝坊しちゃいますよ?」
いかんいかん、昨日のこと思い出しながら寝そうになってたようだ。
にしても、寝坊しちゃいますよ、なんて、集合は11時だから余裕だってに。今何時なんやろ、
「ちょっと、起きて下さい?もう十時五十分ですよ?森山警視総監に怒られますよ」
う~ん。ん!?
えー!?
やばいよ、え!?
もう11時ちくやん!
マジで森山警視総監におこられる。
なんでいるんだよー、警視総監どのー。
そう、今日は森山警視総監も一緒に習志野まで行くのだ。
てか、こんなことしてる場合やないわ!
「あ、やっと起きましたね」
”ピュー”
やばいよ、やばいよ
武が何か言ってたけど、無視して走った。
まだ間に合うそう信じて。
よし、じゃ、今日は森山警視総監にもらった、スーツを着よう。
まずは、白い柄なしのカッターシャツを着て緑色のネクタイをつけて、外は寒いので、グレーのベストを着て、最後に黒いジャケットをきれば、完璧。
よし、走って行けばまだどうにかなるはず。
走って行こうとしたのだが、口を開いて呆れたようにこちらを見る人一名。
いそいでんのになしてんだあいつは。
「なにしてるの?はやくいく、、、」
「ズボン」
早く行くよと言おうとしたのだがそれにかぶせるように武が言った一言に、僕も唖然としてしまった。
あ、ズボンはいてない
ご、ゴホン。決して慌てすぎて忘れてたわけじゃないよ??ホントだよ??
そんな、自分を無理に納得させようなんて無駄なことしてるばあいやない。
いそがな、
そうやってズボンをはき終えたときふと思った、あ、もう無理じゃね?タイムアウトじゃね?オワタ。
そして、絶望していたが、一人平然としてるやつがいた。
そして、そいつと目が合ってしまった。
そいつとは、もちろん武である。他に人居ないしね。
「博真中尉今こう思いましたね?あーもうダメだ、オワタ、てかなんでこいつ平然としてるんだ?って!」
エスパーかよ!
なんでわかるんや?怖いな
マジでなんで心読まれたんかな
「中尉顔に出てますから、バレバレですよ」
あ、そゆことね。
気をつけておかなければ。
うっかり油断していた。
僕も落ちたものよな。
てか、時間大丈夫なんか?
「あ、僕が平然としてる理由はこれですね。」
そう言って僕に時計を見せてきた。
時間は十時五分!?
あ、なるほど
じゃねーわ!だまされたわ!
えー、くやし、またもや油断していた。。。
てかなんでこんなことを?まあいいや、おかげでおきれたんやし。
そんなことを思っていると武が近づいてきた。
え?どーしたのかな?
「中尉失礼しますね」
そういって、武は、僕の首に手を伸ばしてきた。
そして、歪んでいたのかネクタイを直してくれた。
昔もと言っても最近だが、よくネクタイを直してもらってたな、はや姉や楓に。
白いような、黄色いようなフワフワした淡いひかりに包まれている部屋。
ソファーには、あいまが座りキッチンでは楓が皿洗いをしていた。ソファーの後ろらへんのところで、はっ君は、はや姉にネクタイを直してもらっていた。
「ありがと!はや姉!」
「頑張ってきなさいな。あの頃のようなことを絶対起こさないようにね。」
はっ君とはや姉は、話していた。
「がんばってこいよー。はっ君」
楓もはっ君に声援を送っていた。
「ありがとう~楓。いってきま~す。」
「博真中尉、しっかりしてくださいね」
武の一言で現実に戻された。
そうだ、あの頃のような平和は今はない。死んでもあいつらを、あいつらの愛したこの世を守ってやる。
僕は再び心にそう誓った。
「き・い・て・ま・す?博・真・中・尉?軍隊は服装も大事なんですよ!しっかりしてください。」
現実に戻されてそう怒られてしまった。
「は、はい、スミマセン。」
別に気圧された訳じゃないよ?
ちょっと怖かった。
まあ、次から気をつけるとして、今は朝起きたすぐ、さあ、めしだ!!
「なんか作るか?何食いたい?」
ということで、朝食を作ろうと思う。
「え?博真中尉料理できるんすか?」
かなりの愚問である。こう見えて一応家事はできるのである。いくら髪がボサボサでニートみたいな服装してるからって、失礼なやつ。
あと、ちゃんと働いてるし、在宅勤務してるし。
「できるよ。何でも作れる中華、イタリアン、フランス、和食。」
この時の武はかなり驚いた表情をしていた。
ホント失礼やな。
まあ、なんだかんだあり結局、ホテルの個室にあるキッチンを借りて、はっ君特性『目玉焼きケチャップトースト』を振る舞ってやった。
どんなやつかというと、半熟とろとろの目玉焼きをトーストにのせてケチャップをかけたやつである。
シンプルが一番美味しい。食べていると半熟の黄身がトロトロ出てきて、ケチャップと混ざり、そのできたソースがさらに美味しい。
まさに天国である。
まあ、ということは置いといて武に気になったことを聞いてみた。
「ねね、ひとついいか?」
「はい、なんでしょう?」
僕が質問したのに驚いたのか、武はキョトンとした感じで、手を止めてこちらを見ている。
「なぜ、隊服を着てるんだ?」
そう、武は自衛隊の隊服を着ていた。
僕はスーツなのに。。。
それの質問に対して、武は少し驚いた表情をしていた。
「え?聞いていないんですか?今日から僕ら習志野駐屯地で訓練ですよ?」
うん。え?初耳である。
てか、習志野駐屯地にわざわざ行く理由ってそれだったのか。てっきり色々な手続きをするのかと思っていた。いや、手続きはもう終わってるのかな?まあいいか。
いや、よくねーよ!なんで、訓練すんだよ。どうせ、ここ数年戦ってないから慣れてもらおう!的な感じだろ!?えーめんどくさい。
「知っての上でのスーツだと思ってましたよ?」
え、あ、それは、森山警視総監にこれで来いと言われたからでして。
う~ん、よくわからん。たしか、軍服の用意がまだとか言ってたような。まあいいか。
ちなみに、ついでにどうして朝そんなことしたのか聞いてみた。
「ちなみに、どうして朝時間を偽って早めに僕を起こしたの?」
さすがに、こんなことじゃ怒らないけど、気になったのである。
すると驚きの答えが返ってきた。
「え?博真中尉が昨日そうしろと言ってましたよ?あー、てか昨日帰ろうとしたときに中尉手を振りながら急に倒れたので、心配しましたよ!?大丈夫でした?」
えっと、話を聞いてみれば。色々やらかしているらしかった。
まず、朝そのようなことをしたのは、僕が明日の予定を聞いた後こういう風にしないと起きないからやれと命令したそうであった。まあ、それはまあいいとして、問題はそのあとであった。
武が帰ろうとしたときに、手を振りながら僕が急に倒れて、何事かと思い近寄れば寝ていたのだと、で、そのまま布団をかけてから帰っていったそうだ。
朝布団を着ていたのはそのお陰か。ほんと申し訳ないしありがたいのである。多分あのままでは風邪ひくと思われたのであろう。確かに、この真冬の今あんな格好で布団の外で寝てたら風邪をひいてしまう。頼れる部下という認識をほんとに頼れるはや姉に準ずる存在と新たにしておこう。
でも、なんかはや姉に似てるんだよな。気が利いてるところとかなんとなく。
まあいいか。
そうこうして、今は二人で1階のエントランスにいる。時間は、十時四十五分。
「何とか間に合ったな。」
思わず僕はそう呟いていた。
はぁ、ホントにもう。僕がちゃんと起きれたのに、あいつ、『ちょっとトイレ!』て言って、どっか行くんだもん。しかも、十分程度どこかへ行ってるんだもん。それでこんなぎりぎりに、はぁ。
でも、ホント間に合ってよかった。
少し駆け足で来たせいで体が温まったので、僕は愛刀榛名を刀袋に入れたまま一旦黒っぽい灰色のベルトにさしてから首に巻いていた緑色のマフラーをとった。
はぁ、熱い。何で真冬なのに、こんなあつくなってんだ。
ちなみに、もう、ホテルには泊まらないらしく、チェックアウトしていた。
そうこうして、武と少し喋りながら、森山警視総監を待っていた。
時刻は十時五十分である。
エントランス前のところに、黒塗りの高級車、クラウン210系が四台入って来た。
「「いらっしゃいませ」」
外にいるホテルマン数名が一斉に車に向かって挨拶していた。
その間に僕たちも外へと出ていた。ホテルにいても迷惑なだけだしね。
そして、ホテルマンが真ん中にある車の扉を開けた。
ほんと、テレビではこういうシーンよく見るけど、現実で見るのは久しぶりだな~。
あ、もちろん出てきたのは、森山警視総監でザ・警察という感じの服装で制服を着用していた。
「おはようございます。警視総監殿。」
真っ先に森山警視総監に近づいて行ってあいさつしたのは、武であった。
あいつも真面目だなーと僕は眺めていた。
そんな感じで、森山警視総監は武をちらりと見てから、こちらにまっすぐ歩いてきた。
そして僕に近づいてきて、僕の耳元で小さく。
「私と同じ車両に乗れ」
そう言ってから、各自に指示を出していた。
「おい、野中、お前は一台目の車に乗れ。」
「はい!」
おお、びしっとしていてきれがあるな。さすがの一言だ。
森山警視総監はしっかりとキリっと指示出して、武はビシッと起立しなおして敬礼してから返事している。練度高いな、こりゃ。
「では出発しろ。」
武が車に乗ったのを確認してから、命令していた。前の二台が出発してから、僕たちも車に乗って出発した。
あれこれ、5分程度の出来事である。
いや、早いな。
まあ、挨拶して、三人が車に乗っただけだもんな
ちなみに、僕の隣には森山警視総監が座っている。
車の中にはあと一人、運転手さんがいる。見るからに昨日の人と同じ格好をしているので、公安の人間で間違えないと思う。
あ、あと荷物は刀と写真以外後ろの車に乗せてある。
てか、先に行った二台が見えないと思っていたら、森山警視総監が念のため違うルートで行くことになっているということを教えてくれた。
そんなことを考えてると森山警視総監が僕の大事そうに持っている榛名をみて、こういった。
「まだ、持ってなのか。それ。」
言ったというか、つぶやいたというかそんな感じで言っていた。バカにするとかではなく、ボソっと。
なんとも失礼な!大切にしてるものに、『まだ』だとか、『それ』だとかほんと失礼である。
しかし、上官だし恩人、こんなことで怒るのは僕も失礼だし、あと、そんな器小さくないし。
「なんかダメですか?持ってたら。僕の大切な物なんです。」
落ち着いて、そう言ってやった。
すると、森山警視総監は少し驚いた表情をして、すぐ微笑んでいた。
「そうか。そうだったな。失礼した。しかし、懐かしいな。」
ちゃんと謝ってくれた。そうだ、こういう人だった。他人にやさしく、自分に厳しく、誰よりも礼儀に厳しい、理想の上司みたいな感じで、いつでも頼りになって、あの時も。。。
僕は森山警視総監と戦争や自衛官に関する講演に行っていた。そして、その帰り道。その時はちょうど夕方で、街中は賑やかであった。
多分、車を使わなかったのは、森山警視総監の心遣いだったのだと思う。あの時の僕は、少し狂っていた。
楓やあいまの支えのおかげで今はまともだが、あの頃の僕は狂っていた。
表では、平静を装っていたが、内面は少し、ぐちゃぐちゃであった。
そんな僕の内面まで見越してか、落ち着かせたりするためだったのだと思う。うまく言葉には表せキレないが、そんな気がする。
しかしそんなとき事件が起きた。僕と森山警視総監がわかれたときに、僕は酔っ払いに絡まれてしまったのだ。
「おい、兄ちゃん。何してくれてんだよ~、いてーじゃねーかよ。おい」
その酔っぱらいは僕を‘おい` ‘おい‘という感じで僕をおしていた。
かなり怒っているらしい。
森山警視総監にお辞儀をしてから後ろを向いて歩こうとしたときに、酔っ払いにぶつかってしまった。
その酔っぱらいは、ネクタイを頭に巻いていて、ザ・酔っ払いという感じであった。
そして、そのお仲間さんか知らないが、三名ほど、周りの人たちが、騒ぎだして、喧嘩が起きそうだ、と野次馬が少し集まって来た。
その時、とあることを思い出してしまい、動けづに固まっていると、スーツの髪が短く、かっこいい中年ぐらいの男の人が僕と酔っ払いの間に、割って入ってくれた。
男の人は僕をかばうように立っている。
まさに、20代の僕から見てもヒーローのように見えていた。
そして、どんな人物かと思いみてみると、なんと、森山警視総監であった。
そんな中
「おい、誰だよおめー関係ねーだろ、痛い目見たくなけりゃどっか行ってろ。」
酔っ払いが、警視総監に喧嘩口調でそう言った。
すると警視総監は落ち着いて
「いえいえ、そういうわけにはいきませんよ。こいつが何かしましたか?私はこいつの上司です。こいつがしでかした失態の責任を一緒に背負う義務がある。」
こういう発言をした。今はもう上司ではないのに、そういうことをサラッと言えるすごい人なのである。
これは、僕じゃなくてもキュンとするであろう。
そして、酔っ払いは、そんな警視総監に気圧されたのか、何も言えない様子であった。少しビビっている。顔はぐちゃぐちゃである。
「うるせーよ」
小さく酔っ払いがつぶやいた。
そして、次の瞬間。
「つべこべうるせー!今俺はな!家族も何もかも失ってよ!ちょうむしゃくしゃしてんだよ!妻とは離婚、息子は妻と出て行ってよ!唯一残った娘も、出ていっちまってよ!さらには、会社をリストラ!マジでなんなんだよ!おめーらの事情なんか知ったっちゃねーんだよ!」
なにかが爆発したように、怒り狂ってそう酔っ払いは叫んだ。
そして、
「う、う、うあぁぁぁぁああ」
酔っ払いはそう叫んでから、警視総監に殴りかかった。
しかし、元自衛官の警視総監は軽々とその拳を華麗によけ、腕をつかんで関節技をきめていた。
「あなたが私たちの事情が関係ないように、私たちもあなたの事情は関係ない。ただのやつあたりで、人を襲うのはやめていただきたい。では」
そう、警視総監は酔っ払いに、言い放ち、僕に「行くぞ」と声をかけてからその場を後にした。
その時酔っ払いは地面に座り込んでいた。
そんなことを思い出していて、ふと警視総監のほうを見ていると、車が止まった。
「よし、ついた。降りるぞ。」
そう警視総監に言われ、車を降りた。
しかし、そこは習志野ではなかった。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇえぇぇぇ」
ー続くー
楽しんでいただけましたか?楽しんでいただけたのなら幸いです。
では、次回もお楽しみに~
byらどいど長