敷たりーしきたりー
「照!お前ってやつはどうしてそう女なんだ!ひどすぎて話にならん!」
正座した湯飲みの茶碗をひっくり返して、大黒柱の爺さんは立ち上がった。正面に正座した男の子の照は、三つ指をついて腰を崩しながらなよりとし、大きな声で言った。
「金玉は取りましたが、私は女になり花魁になりたいと考えまして!」
「だからと言って形成手術する馬鹿がどこにいるか!誰が払うかそんな金!借金は自分で払うんだな!破門だ!」
爺さんは襖をぴしりと音を立てて占め、電話をしだした。取り残された照は涙を拭いながらその場で正座している。しばらくしてから、叔母さんが入って来た。汚れた畳を拭き、風呂敷を取り出し、書類と荷物をまとめる。
「叔母さん自分で・・・」
「黙らっしゃい!地図を渡します、これ着替え、これ区役所へ出すこと、この手紙は地図の家の主に渡しなさい、解ったね、今すぐ出るからお手洗いだけ済ませなさい。ささ」
照は、顔を真っ赤にさせながら便所に向かう、くそ絶対復讐してやる。そう心に決めて手を洗って、序でに顔を洗った。
私の結婚の顔合わせが18時になった。許嫁はくるだろうか。そこに・・・・
「待たせた!これが親、よろしく」
「今日はよろしくお願いします」
「いや、そのー、まあ上がって下さい」
玄関で靴を脱ぎ、ひとことその男が言った。
「ざまあねーな、なあ」
私は母さんを呼びに行った、爺さんは座敷に行くと上座に座る。長テーブルにはおもてなしの料理があった。私は母さんに行くと、母さんから手渡された指輪を貰った。これをつけるんだよ、と、耳元で囁いて母さんは座敷に向かう。指輪を見ると名前が彫られ、数字が入っていた。許嫁の名前だった。隠すように左手の薬指に嵌め座敷のテーブルの爺さんの正面の座布団に座る。さすがに故郷を離れ、遠い都会で嫁になるのはさすがに心許ない。空気がぴしりとして一言も話さない時間が過ぎた。
「何故、結婚するんだ?」
爺さんは全員の顔を見渡してから、真っ直ぐ私を見て言った。私は、一言小声で「お嫁に行きます」と言った。すると母が、名前教えてと小声で男を見る男は言った。
「400万だせ!俺の名前は胡桃だ」
「いやー、ちょっと」
あたしは居てもいられなくて煙草を吸いに行ってきますと言って、座敷を後にする。なんか普通男が払うもんじゃないのかな?とか思いながら煙草を吸っていると「なら嫁修行で」とか「だからな」とか「いや今でなくても」とか言っいるのが聞こえる、さすがに震える手で煙草に火を着けると、指輪から声が聞こえた。
『待ってて』
私は、心の中で修行しないとって想うと、少し照れくさそうな感じでフフフと聞こえた。繋がってるただ、まだ会えないんだ。
座敷の中で、離婚した場合は金は返すと男が言ったのを尻目に座敷に戻り、料理に手を付けた。母さんの作った料理の味、これだけは覚えとかないと。舌に覚えさせて、場が静まり返る。
「腹減った」
「食べなさい、よし話はここまでだ」
爺さんが言うと、男と親は立ち上がってぴしゃりと座敷を閉めて出て行った。