第十六章:華麗なるショー、暗躍する影
かなさのショー――その真の目的
都内随一の高級ホテルの巨大ホール。まばゆいシャンデリアの光が降り注ぐ中、壁一面には「奇跡の髪――辻谷かなさ 美の再臨」と大きく掲げられていた。会場には報道陣や著名人、政財界のエリートたちが招かれ、期待と興奮に満ちていた。
「今日はついに、辻谷かなさ様の『髪』の真価が再び示されるのですね」
「噂なんて、結局はデマだったんだろう」
華やかな装飾に包まれた空間の中心には、巨大なステージが設けられていた。これはかなさ自身が仕組んだ「宣言の場」――。
「このショーの目的は、私の髪が今も"完全"であり、"奇跡"であることを証明し、すべての者に知らしめることよ」
彼女は鏡の前で髪を整えながら、冷たい微笑みを浮かべた。
「そして――涼子やレジスタンスの連中に"絶望"を見せるわ。私の髪は、誰にも傷つけられない」
高嶺亮が静かに控えめに声をかけた。「準備は整っております、かなさ様」
「いいわ。完璧な私を見せてあげる」
かなさは堂々と立ち上がり、ステージに向かって歩き始めた。
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涼子――美しさを奪うための罠
一方、ホールの隅では涼子が黒いドレスに身を包み、部下たちと静かに準備を進めていた。彼女の手には、改良型の「毛根引き抜き装置」が隠されている。
「かなさは今日、自分の髪を誇示するためにここにいる――なら、その美しい瞬間に奪い取る。最高の屈辱だわ」
涼子は鏡に映る自分を見つめ、冷ややかに呟いた。
「そして、あの髪を私のものにする。それが、私の"完璧"への最後のピースよ」
部下の一人が緊張した面持ちで尋ねる。「……しかし、本当にこの場でやるのですか?リスクが高すぎます」
「問題ないわ」
涼子は断言し、唇に笑みを浮かべた。「あの女の髪が奪われる瞬間――それこそが私の勝利。そして、今日という日を世界は忘れない」
彼女はステージの袖に目をやり、かなさが登場する瞬間を静かに待ち続けた。
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レジスタンス――最後のチャンス
同じホールのさらに遠く、蓮としずえは群衆に紛れ込み、目立たぬようにステージを見つめていた。
「このショーの間にかなさの髪に薬剤をかけ、魅了の力を無効化する――それが俺たちの仕事だ」
蓮は小瓶に入った薬剤を握りしめ、決意を込めて言った。
しずえが小声で続ける。「でも、どうやってかなさに近づくの?この人数じゃ警備も厳しいわ」
「そのタイミングを作るのは――俺たちの"仲間"だ」
蓮はホールの奥に控えているレジスタンスメンバーたちを見やった。「ショーが佳境に入るその瞬間、隙を作る。それしかない」
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ショーの開幕――奇跡の髪、再臨
会場が静まり返り、ライトが一斉にステージを照らす。ゆっくりと幕が上がると、そこには――辻谷かなさが立っていた。
彼女の髪は、会場の光を受けてまばゆく輝き、まるで絹の滝のように流れ落ちていた。
「これが……辻谷かなさの髪……!」
「なんて美しさだ……本当に奇跡だ……!」
観客たちは息を呑み、フラッシュが絶え間なく瞬く。かなさは満足げに微笑み、髪をゆっくりと手で梳いた。
「――皆様、ご覧いただけましたか?」
彼女の声は自信に満ち溢れていた。「私の髪は今も"奇跡"であり、"完璧"です。そして、この美しさは――誰にも奪えません」
その言葉を聞き、涼子の目が細められた。「いいわ、その美しい髪――今、奪ってあげる」