第十五章:張り巡らされた罠
かなさの復活――奇跡の髪、再び
数日後、都心の高級ホテルの大ホール。そこには報道陣や選ばれた上流階級の名士たちが集まり、辻谷かなさの姿を待っていた。
「かなさ様、本日は何の発表を?」
「噂されている"髪のダメージ"について、何かお話しされるのでしょうか?」
ざわつく会場の中、突如、天井からスポットライトが当たり、かなさがゆっくりと姿を現した。
彼女の髪は――以前にも増して、驚くほど滑らかで美しく、光を受けてまるで絹のカーテンのように輝いていた。
「皆様、お待たせいたしました」
かなさはゆっくりと微笑み、髪を優雅に指でかき上げる。その一挙手一投足に会場は息を呑んだ。
「"奇跡の髪"に傷など存在しません」
かなさの言葉に拍手と歓声が沸き起こり、報道陣のカメラが一斉に彼女の髪を映し出す。
「――これが私の力です。そして、今後も私の髪は誰よりも美しく、誰よりも完璧であり続けるでしょう」
かなさはその言葉と共に、涼子への冷たい視線をカメラ越しに送り続けた。
涼子の決意――毛根ごと奪う計画の始動
その夜、涼子は再び自分の髪を鏡で見つめていた。どれほど手入れしても、あの女の髪には追いつけない――それが彼女を狂わせていた。
「……まるで、あの髪が私を笑っているようね」
涼子は鏡に映る自分に向かって呟くと、机に置かれた"新たな装置"に目をやった。
それは改良型の毛根引き抜き装置だった。かなさの髪を触れずに、そして一瞬で「美しい状態のまま毛根ごと奪う」ために開発されたものだ。
「次は完璧にやるわ。かなさの髪は、私のものになる――その時、かなさは完全に終わるのよ」
涼子は部下に向かって冷たく命じた。「準備を進めなさい。そして、かなさが油断する瞬間を待つのよ」
レジスタンス――最後の一手の完成
一方、レジスタンスのアジトでは、蓮としずえが科学者たちと共に「髪の魔力を無効化する薬剤」を完成させつつあった。
「……これが完成すれば、かなさの髪はただの髪になる」
科学者が自信に満ちた声で言い、試験用の小瓶を蓮に差し出した。
「これをどうやって使うかが問題だな」
蓮は腕を組みながら、しずえに目を向けた。「かなさに直接、薬剤を触れさせなければならない。だが、彼女の護衛や髪の力を考えれば――簡単じゃない」
しずえは地図を広げ、かなさの今後の動向を示しながら言った。「次の彼女の公の場がチャンスよ。髪を披露し、力を誇示する――その瞬間に仕掛けるの」
蓮は力強く頷いた。「わかった。レジスタンスのすべてをかけて、かなさの髪の支配を終わらせる」
罠と反撃の前兆
それから数日後――かなさの髪を再び世間に見せつける大規模なショーが予定されていた。
涼子は会場への潜入計画を練り、改良型の装置を持って決行を決意する。
「かなさの髪が最高に美しい瞬間――その髪を奪う」
一方、レジスタンスの蓮としずえは、そのショー会場に潜入するための準備を整えていた。
「この薬剤を使って、かなさの力を無力化する――絶対に成功させる」
そして、当のかなさは――。
彼女はショーの控え室で、鏡に映る自分の髪を撫でながら、冷たく微笑んだ。
「次に私に逆らう者は、容赦しないわ」