第十章:限界への足音
かなさの限界
「……っ!」
かなさは髪を振り乱しながら、放出されるフェロモンが周囲に与える支配力を感じていた。しかし、同時に自分の髪が徐々に力を失っていく感覚もあった。
「どうして……こんなはずじゃないのに!」
髪を触ると、その滑らかさは明らかに衰えており、束になった一部が絡まり始めていた。彼女のプライドを支えてきた「完璧な髪」が、もはやその名に値しなくなってきている。
「これ以上は……ダメだ……」
かなさは思わず後退りし、手に掴んだ髪を見つめる。
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装置の狙いと計画
涼子は、毛根引き抜き装置を慎重に操作していた。その装置は、大型の吸引ノズルを備えた特殊な設計で、かなさの髪を物理的に触れることなく引き寄せ、毛根ごと引き抜く仕組みだった。
「これを使えば、あなたの髪を一本も残さず奪えるわ」
涼子は余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりとかなさに近づいた。
かなさは息を荒げ、髪を必死に守るように背後に隠した。「あなたに渡すくらいなら、この髪を燃やしてしまう方がマシよ!」
「燃やす?そんなこと、あなたにできるはずがないわ」
涼子は冷たく言い放ち、さらに一歩近づく。「だって、あなたのアイデンティティそのものを自分の手で壊すなんて、プライドが許さないでしょう?」
かなさは涼子の言葉に一瞬動きを止めた。
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触れる危険を回避する方法
涼子は、ゴム製の防護スーツに身を包み、かなさの髪の魅了効果を完全に無効化していた。さらに、装置の吸引力を最大限に高め、髪を直接触れることなく装置の内部に引き込む準備を整えた。
「あなたの髪に触れる必要なんてないのよ」
涼子は操作パネルに手をかけ、装置を作動させた。吸引ノズルが唸りを上げながら動き出し、かなさの髪の先端を徐々に引き寄せる。
「やめなさい!」
かなさは髪を掴んで抵抗するが、装置の吸引力に引き寄せられ、髪の先端がノズルの中に吸い込まれそうになった。
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立場逆転と挑発
「どうしたの、かなさ?」
涼子は余裕たっぷりの笑みを浮かべ、かなさを挑発する。「あれだけ偉そうにしていたのに、今は髪を守るのが精一杯ね?」
「黙りなさい!」
かなさは震える声で叫ぶが、その言葉には以前のような威厳はなかった。
「本当に素晴らしい髪だわ。これを私のものにしたら、どれだけの人を虜にできるかしら?」
涼子はさらに言葉を重ねた。「でも、それだけじゃつまらない。あなたがどれだけ無様に命乞いをするか、見せてくれない?」
かなさは涼子を睨みつけながら、歯を食いしばった。「私が……あなたなんかに命乞いをすると思う?」
「思うわよ」涼子は涼やかな声で返した。「だって、髪を失ったら、あなたには何も残らないんだから」
かなさはその言葉に反応するように唇を噛み、声を震わせた。「……お願い……やめて……」
その瞬間、涼子の笑みはさらに深まった。「あら、もう少し聞かせてくれる?私を楽しませるような言葉を」
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かなさの逆襲の兆し
しかし――その時、かなさの目にわずかな光が宿った。
「……そうよね……私には髪しかない」
かなさはゆっくりと立ち上がり、フェロモンを全力で放出し始めた。
涼子の部下たちは、その場で膝をつき始める。防護スーツを着ていない者たちは完全に魅了され、かなさの方へ歩み寄った。
「なに……?」
涼子は戸惑いながら周囲を見渡した。「防護スーツを着ているはずなのに……!」
かなさは冷たく笑い、「髪を奪うのもいいけど、あなたの手下たち、もう私のものみたいね」と言い放った。