第九章:毛根を狙う者たち
涼子の計画が明らかに
「私の髪を毛根ごと引き抜くですって……?」
かなさは、煙の立ち込める工場の中央で涼子の言葉を聞き、思わず息を飲んだ。
涼子は冷たい笑みを浮かべ、装置を掲げた。「そうよ、かなさ。この装置で、あなたの髪を一本残らず毛根から奪う。それが私の目的」
かなさの瞳が怒りと恐怖に揺れる。「そんなことをすれば……私の髪はもう二度と……!」
「その通り」涼子は冷徹に言い放つ。「あなたの髪は生えなくなる。そして、私がその力を引き継ぐのよ」
かなさは震える手で髪を握りしめた。「……許さない……絶対に許さない!」
魔法の髪の限界を超えた力
「あなたたち全員、この髪に跪きなさい!」
かなさは声を張り上げ、髪を両手で大きく広げた。その瞬間、髪の中からまるで目に見えない波動のような何かが溢れ出した。それは、甘く濃密な香り――フェロモンとも呼べるものだった。
「これは……何だ……?」
蓮は目を見開き、鼻をつく甘い香りに一瞬意識が揺らぐのを感じた。
床に倒れていたバーサーカーや涼子の部下たちは、フェロモンが届いたと同時に目を見開き、一斉に立ち上がった。その瞳には理性が失われ、完全にかなさの存在に引き寄せられているかのようだった。
「これが私の髪の本当の力よ!」
かなさは冷笑を浮かべ、フェロモンが充満する空間の中で自分の髪を誇らしげに撫でた。「私の髪に抗える者など、この世にいないのよ!」
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暴走の代償
しかし、フェロモンが広がるにつれて、かなさの体に異変が現れ始めた。
「……どうして?」
彼女は髪を指で梳こうとしたが、手に絡みついた髪の一部が切れてしまった。さらに、髪に触れる感触がいつもと異なり、少しだけザラつきを感じた。
「まさか……薬剤のせい?」
かなさの顔に一瞬焦りの色が浮かんだ。しかし、彼女はその感情をすぐに振り払った。
「そんなものが、私の髪に勝てるわけがない!」
彼女はさらに髪を振り乱し、フェロモンを強く放つ。「この力を前にして、誰が私に逆らえるの?」
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涼子の反応
一方、涼子は立ち込めるフェロモンの中でも冷静さを保っていた。
「……確かに強いわね、かなさ。でも、力の使い過ぎは自分を滅ぼすわよ」
彼女は装置を構えながら、淡々とかなさを観察していた。「髪の力が強まるほど、ダメージも深まる……そういうことよね」
涼子は防護スーツ越しに小さく息を吐いた。「さあ、かなさ。これであなたの髪を終わらせるわ」
彼女は毛根引き抜き装置を作動させ、かなさの方へ一歩ずつ迫る。
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蓮の危機感
蓮はフェロモンの影響を最小限に抑えながら、二人の対決を見つめていた。
「涼子がかなさの髪を奪えば、それこそ最悪だ……」
蓮は爆薬を手に取り、心の中で決意した。「この工場ごと吹き飛ばすしかないのか……でも、それをやればレジスタンスの仲間も巻き込んでしまう……!」
彼は迷いながらも、フェロモンに侵される仲間たちを見て拳を握りしめた。「かなさも涼子も、どちらも止めなければならないんだ……!」