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私たちの暮らし

 私は小6の女の子。12歳。

 6つ下の弟が一人。弟は小1の洟垂れ小僧。

 

 高度経済成長期の都市開発で作られた、今は古き集合団地に暮らしている。

 両親は共働きで、学校のある日は児童会館で放課後の時間を潰し、帰りがけにコンビニに寄っては、お小遣いでおにぎりや総菜パン、時々大きな弁当を買ったりする。

 目に見える不自由は特にない。

 お金持ちのクラスメートがハワイ旅行に行った話を聞くともどかしい気持ちになるけど、他の多くの子もハワイなんて行ける家庭じゃないから、そこまでの贅沢は気にならない。

 だから、私としては満ち足りた生活を送っていた。

 もしかしたら、私の知らないところで父母が苦労しているのかもしれないけど。


 学校は夏休みに入り、昼が近づくと外から子供たちの楽し気な声が聞こえてくる。

 でも私はちっとも楽しそうとも思わないし、外に行きたいとすら思わない。

 一台しかない扇風機を独り占めして、朝から晩までゲームにのめり込む。そして、甘党のお母さんが買ってくれるコンビニスイーツを時々ほおばりながら。

 これが私なりの、最高の夏休みの過ごし方。

 もちろん、夏休みの宿題をこなしながらだけど。


 対して弟は見てて呆れるくらいの無限の元気を持て余してるやんちゃなクソガキ。

 晴れた日は絶対外遊び。

 雨の日も雨合羽を被って外を走る。

 夜はさすがに家の中だけど、日暮れでもなお有り余る元気のため、全く落ち着きがない。

 じっと座ったまま夕飯を完食したことは一度もない。


 動の弟と、静の私。


 こうも正反対だから、大小問わず争いごとは日常茶飯事。


「姉ちゃん、外で遊ぼうよ」


弟は外出する前、絶対私を誘ってくる。


「嫌だ。体動かすとか馬鹿がやることだし。くだらない。絶対に行かない」


 私は何度も辛口で断っているのに、弟は懲りずに毎度同じ誘い文句をかけてくる。

 一種の決まり事みたくなってるから、面倒だけど逐一切れることもない。

 だけど、私がゲームで上手くいかないとか、初めから険悪なムードでいつもの誘いがかかると、

「だから行かないって言ってんじゃんっ!! この馬鹿っ!! 何度も言わせるなよっ!!」


 と、私は狂ったように激昂して、テレビのリモコンとかお父さんが使ってる孫の手で、弟の体をぶったたく。


「痛いっ!! 姉ちゃん最悪っ!! 姉ちゃんなんて嫌いっ!!」


 3回くらい叩いたら、弟は特に反抗もせず、あどけない悪口を叩いて、半泣きで外に飛び出していく。

 暴力ふるった後に決まって訪れる私一人の静寂は、私に深い罪悪感を抱かせるのだが、それよりも弟を支配的に扱えた優越感の方が大きくて、結果的に喜びを感じるのだった。

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